全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第76号

【発 行】 全国過労死を考える家族の会  (2019.1.15発行)
【事務局】 東京駿河台法律事務所内  ℡ 03-3234-9143
東京都千代田区神田神保町2-3-1 岩波書店アネックス7階


新しい元号を迎え、過労死防止活動を前進させ、真の働き方改革を

本年は、平成という時代に終止符が打たれ新しい元号へ改元されます。平成を振り返ると①過労死遺族の救済に始まり、遺族、過労死弁護団、医師、支援者が諦めない粘り強い闘いを積み重ね、認定基準を作ってきたことにより、労災認定への道を切り拓いてきました。しかし年月が経ち実態にそぐわない不十分さがあり過労死なのに正しく評価されず、過労死弁護団は認定基準の改定に取り組まれ、昨年、厚生労働省へ労災認定基準の改定意見書の申し入れを行いました。国は過労死防止の観点で実態を適正に認め早期救済の道を拓くことを求めます。②責任追及の闘いは、企業と個人の責任を問い、再発防止策と職場改善を約束させ謝罪を求める闘いが多くなりました。中には労災認定されても企業と個人は反省しないばかりか責任を認めないことがあり違法労働を自己責任にすり替える悪質な企業が多いことや、暴力、暴言などの酷い実態もあり刑事告訴へ展開します。近年は企業がネット上やメディア報道など公開の場で謝罪するまでに至っています。また2017年から厚生労働省が悪質な法令違反のブラック企業をネット上で公表することを始めました。企業名公表は国民が監視でき社会的信用を失うことで猛省を促し抑止力に繋がります③過労死防止法は3年後の見直しを迎え、大綱の柱に「対策」が項立てされ全体の取り組みの幅と深みが増しました。数値目標について重要な位置になるインターバル制度を導入している企業は1.4%しかなく制度を知らない企業は37.3%と芳しくないことで、国は周知に努め制度の普及・促進に取り組むとしました。調査研究は進み、啓発シンポジウムは全県48ヵ所で成功裏に開催され、ワークルール講義についても目標に達しており、私たちの役割を果たしているところです。

このように過労死防止法の取り組みが進む一方で、今年4月に働き方改革関連法が施行されます。この「働き方改革」は長時間労働をなくすためのものと言いながら、過労死ラインの月80時間を超える100時間未満を合法化し、要件をつけ、労働時間規制を外す制度も導入しました。誰が見ても、長時間労働を助長するもので、安全に働ける保障はどこにも見当たりません。

昨年、国へ労災認定をもとめ全国家族の会が要請した被災者は、10代の後半から40代の若年層が大半を占めました。我が子の命を奪われた親は身が引き裂かれる思いで訴えました。育ち盛りの幼子を遺し大黒柱を奪われた妻は生きる術をなくし路頭に迷います。いまも過労死・過労自死は増え続け悲劇は繰り返されているのです。この問題解決こそが真の働き方改革に他なりません。

(全国家族会 寺西 笑子)

全国過労死を考える家族の会総会 報告

2018年度の家族の会総会が2018年11月7日(水)午前9時~12時まで、東京セントラルユースホステルの会議室において行われ、全国各地から35名が出席しました。
2017年度活動報告、2017年度決算報告及び会計監査報告、2018年度活動計画案、2018年度予算案について提案があり、議案はすべて承認されました。
2018年度の世話人及び事務局が決まりました。
皆さんには1年間大変お世話様になりますがよろしくお願い致します。
その後、厚生労働省要請の結果報告が山中さんから、地方公務員災害補償基金本部の結果報告は工藤さんからありました。(報告の詳細については次頁をご覧ください)
その他、会計の扱いと遺児交流会についての意見がありました。
・会計の扱い方については様々な意見が出されましが、早急な結論を出さずに、時間をかけて
検討をしたほうが良いということになり、次回の世話人会で議論することになりました。
・遺児交流会は、国の委託事業として行うようになった。今年は20家族、56人の参加があった。本当に小さい子供を残して亡くなる家族が増えている。死別後の子供に対するケアについての講話もあり、すごくよかった。遺児の会に参加されるのは、ほんのわずかなので、参加できない人たちにも広く呼び掛けてほしい。

第二部の交流会は、総会に引き続いて行われました。
初めて参加された方の自己紹介、2017年度解決された方々の報告、参加された方から、それぞれ抱えている問題についての発言がありました。今年も若くて亡くなられた方が多く、遺された遺族は大変な思いで生きている声が多く聞かれました。また、当然労災認定されるはずの人が認定されずに棄却された残念な事例もありました。交流会を通して遺族として気持ちの共有ができたと思いました。
(長野家族会 小池 宣子)

要請行動報告

地方公務員災害補償基金への要請行動

11月6日、基金本部へ要請者6名(うちご本人3人)、弁護士3名、家族の会支援者6名で要請を行い、基金側総務課次長、補償課次長にご対応頂いた。要請者、代読者の訴えはとても心を打つものがあった。松丸弁護士より、基金への要請をお話しいただいたが、基金に対する主な訴えは、まず基金の認定基準が非常に曖昧であり、厚労省の基準と考えてよいものか、認定基準がダブルスタンダードになっているという点である、基金側は整合性を持って判断するなど厚労省と同じ基準と考えてよいかという問いについてかなり口を濁したが、このことにより基準があいまいで人によって違う、ハードルが高くなりあきらめる人が多いなどの問題点が出てくるので、是非基準を明らかにして頂きたい旨を要請した。
また申請しても今どのような段階にいるかなど全く知らされず、被災者側の調査も行われることなく突然「認定外」の通知が来るなど、遺族側の負担への改善を強く要請した。また過労死等の防止として、基金側が公務災害のすべてのデータを持っているので、是非積極的に防止に役立ててほしいと過労死等の防止対策をお願いし、約1時間半の要請を終えた。(神奈川家族会 工藤)

厚生労働省への要請行動

11月6日、厚生労働省にて、労災保険等給付請求中の家族会会員24名の要請を行った。過労死弁護団の玉木一成弁護士が進行を務め、厚労省からは労働基準局富田総務課長以下担当者6名が対応し、国民民主党の山井和則衆議院議員が臨席した。要請者のプロファイルは下記のとおり。
・被災者23名が「精神疾患」、1名が「心疾患」。
・18名が「自死遺族」、6名が「療養中の被災者本人」。
・請求段階は、「労基」2名、「労働局」6名、「審査会」3名、「地裁」10名、「高裁」3名。
・被災者は「女性」2名、「男性」22名。
・被災時の年齢は、「10代」2名、「20代」5名、「30代」5名、「40代」5名、「50代」6名、「60代」1名。
・被災者から見た要請者の続柄は、「本人」6名、「父」3名、「母」5名、「妻」10名。
要請者のうち、当日出席した18名が要請文を読み上げ、事案の早期解決及び再発防止などを訴えた。富田課長は「気持ちを受け止めさせて頂いた。(過労死問題を)労働行政の最重要課題として取り組む。」と回答し、全国家族会の寺西代表は、「遺族や被災者本人にすべての立証責任がある現状は改善されなければならない。」と述べ、山井議員は、「(要請者)全員を認定してほしい。みな苦しんでいる。五千万人の労働者を守るために、高度プロフェッショナルを認めさせてはいけない。」と涙を流して語った。(東京家族会 山中 隆)

シンポジウム報告

過労死等防止対策推進シンポジウム東京中央会場報告

11月6日にイイノホールで中央シンポジウムが開催されました。参加者は約350名でした。
初めに根本厚生労働大臣からご挨拶があり、次に厚労省から30年度版「過労死等防止対策白書」について説明がありました。今年度は過労死等防止大綱の見直しがあり、7月24日に閣議決定された内容についての解説がありました。それによると、勤務間インターバルなどに数値目標が設けられ、調査研究の重点業種に建設業とメディア業界が加わりました。数値目標としては、勤務間インターバル制度を導入している企業割合を10%以上とすること、取り組んでいる事業場の割合を80%以上とすること、有給休暇の取得率を70%以上とすることなどが大綱に盛り込まれたそうです。その次は過労死等防止対策推進全国センターからの報告で、川人先生は「管理職」「裁量労働制適用労働者」「看護師」「海外出張・海外赴任労働者」「高齢労働者」「障害を持つ労働者」の過労死についてそれぞれ問題点を指摘されました。また、過労運転による事故死と使用者の責任にふれ、今後の取り組みとして「勤務間インターバル規制」の導入が過労死防止の鍵になると締めくくりました。講演は早稲田大学の黒田祥子教授による「働き方と健康、生産性との関係」でした。日本の長時間労働の原因として、多くの仕事に過度なサービスを要求する非効率性が常態しており、職場に長時間労働の人がいると周りも長時間労働になってしまう傾向があるので、働き方を変えたくても一人の力では難しいと指摘されました。そして過度な長時間労働は心身の健康を毀損させるとし、たとえ本人が仕事にのめりこんで満足していても、メンタルヘルスは悪くなっていることをデータで示されました。結局過度な長時間労働は生産性を低下させるため、「健康資本投資」が重要性であると述べられました。そして働き方改革の法改正では、行き過ぎた過当競争に歯止めをかけ、市場の失敗を修正することが期待されているとし、継続的な働きかけ・見直し・改良が重要になるとまとめられました。事例発表では、株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインの企業取り組みと、産業医科大学教授の宮本先生より産業医の取り組み事例が報告されました。家族会の体験談として、神奈川家族会のご遺族、兵庫家族会の前田和美さん、東京家族会の渡辺多恵子さん、神奈川・東京家族会の渡辺淳子さんが、お話ししてくださいました。この体験談を聞くだけでもシンポジウムに参加した意義があると思える内容のお話でした。どの方も言葉を絞り出すように、被災するまでの状況と、いつまでたっても癒えない過労死特有の苦しみを語ってくださり、参加者の心に訴えるものがあったと思います。この会場で得たものを自分の職場、地域でぜひ伝えていただき、過労死をなくす取り組みをしてほしいと思います。(東京家族会 渡辺しのぶ)

北海道過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月22日(金)13:30~16:00にホテルポールスター札幌に於いて約150名の参加者で行われました。今回は、過労死防止対策北海道センターが設立されての記念すべき年です。基調講演を川人博先生にお願いしました。大変お忙しい中、そして遠く北海道にお越しいただき「過労死ゼロの社会を」と過労死の歴史等、1時間の講演を大変興味深く拝聴しました。北海道労働局戸高氏より「最近の労働基準行政の動き」について施策説明があり、取り組み事例報告として、北海道大学生活協同組合岸本氏より時間外削減などについて報告がありました。過労死遺族体験報告は、自庁取り消しにより労災認定された、KKR札幌医療センター新卒看護師過労自死事件のSさんのお母様から報告と釧路赤十字病院新卒看護師パワハラ自死事件の村山が報告しました。参加人数からも昨年よりは、過労死問題に興味を持って頂いていると感じました。(北海道家族会 村山)

宮城過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月13日エルパーク仙台にて開催、120名参加でした。会社関係の方、組合や一般、マスコミの取材も入り地元ニュースで放送され、一部は東京の方にも流れました。登壇者のグリーンディスプレイ事件の渡辺淳子さんのお話が本当に素晴らしかった。深い悲しみとともに語られる鋭い問題提起が胸に迫ります。POSSEや、ブラック企業弁護団の先生方が渡辺さんを支え、裁判所の人間味あふれる和解勧告に至った経緯に、会場中が涙しました。会場でも配られた和解勧告書は本当に素晴らしいものでした。後半の座談会で渡辺さんのインターバル規制の訴えも論理的で説得力があり、会社員の方から「インターバル規制の重要性がはじめて腹に落ちた」という声も聞かれました。希望の会社労士の冨樫先生の、高校生が団結して職場環境を改善した事例は感動的で明日につながる内容であり、ラストのWさんの歌も心に沁みるもので、被災地でもある宮城にとてもあっていました。(東北希望の会 前川珠子)

東京過労死等防止対策推進シンポジウム報告

東京家族会では、会員さんが関東地方のシンポジウムで体験談発表の協力しました。11月2日栃木の参加者は約100名でした。続いて11月14日東京町田・約90名、11月22日埼玉・約200名、11月25日茨城・約50名、11月27日福島・約90名、11月28日千葉・約150名、11月30日群馬・約60名、それぞれの会場で会員さん達がご自身の体験を語りました。その他にも要請のあった全国の会場に会員さんが出向いています。どの会場でも、体験談になると、会場全体が静まり返って参加者が真剣に聞いているのがわかりました。参加者が過労死を実際に体験した人の話を聞く機会はほとんどなかったと思います。遺族、当事者の話を聞くことで、過労死を他人ごとではなく、身近なものとして考えることができます。会場に足を運んでくださった人がこれを聞いて過労死の悲惨さに気づき、なくすためにはどうしたらよいかを考えるきっかけになることを期待しています。(東京家族会 渡辺しのぶ)

神奈川過労死等防止対策推進シンポジウム報告

今年度も神奈川は全国トップの11月1日、桜木町の日石横浜ホールにて開催しました。今年度のシンポジウムに向け神奈川では、とても早いうちから家族の会、弁護団、各団体さんと打ち合わせに入りました。神奈川県は県知事主導のもと、行政、使用者、労働者側8団体が「神奈川いきいき共同宣言」を出しており、是非この8団体の皆様に参加頂きたいと労働局と話し合いを重ねた結果、超党派の団体の皆々様にご協力頂きシンポジウムを開催することが出来ました。大変嬉しく有難いことでした。そして内容もパワハラ問題、睡眠の問題と今大変注目を浴びている2つのテーマでご講演頂きました。また遺族の発言はお嬢様を亡くされた佐戸さん、そして匿名ながら九州から駆けつけて下さったご主人を亡くされた方の、本当に胸に迫るお話で、過労死等の悲劇をご参加の皆様にお伝え出来ました。予想を超える多くの皆様にご参加いただき感謝申し上げます。(神奈川家族会 工藤)

長野過労死等防止対策推進シンポジウム報告

長野では、2018年度長野家族の会総会を10月14日に行い、9名の方が参加されました。当日は、27年前、会の結成に関わられた方々も参加され、当時の様子を熱く語ってくれました。また、松村弁護士は、過労自死の労災認定の取り組みから、条件に合わせた取り組みや新たな遺族への援助等が家族の会に期待される事と話されました。総会後お弁当をいただきながら交流を深めました。
長野のシンポジウムは、11月27日にJA長野ビルにて行われ85名の参加がありました。始めに佐々木司氏による講演「労働者の疲労、ストレス、睡眠」と今野晴貴氏による講演「過酷労働・違法労働の発生要因と対策の在り方」がありました。労働相談を行っている今野氏は、「今日過労死防止対策は進んできているが、過労死は無くならず低年齢化している。それは、過労死・自死・鬱を誘発する労務管理が広がっているからである。今後被害者の権利行使を労働組合や市民団体が支援し徹底していかなければならない。」と話され過労死は更に厳しい状況に向かっていることがわかりました。過労死遺族の佐戸恵美子氏は、放送記者の娘さんを過労死でなくされ、ご自身も心身ともに壊れてしまったが、労災は人災であり、過労死を世に訴えるために生き続けなければならないと涙ながらに訴えられました。また、当事者の声として東京家族の会のY氏とN氏は、長時間労働とパワハラにより心身が壊されて行った経過を話され、労働現場がいかに過酷なものであるかを再認識しました。遺族や当事者の声は、参加者の心に過労死根絶への想いを強くしました。(長野家族会 小池)

山梨過労死等防止対策推進シンポジウム報告

山梨でのシンポジウムは、11月29日18時30分~20時45分までベルクラシック甲府で行われました。山梨労働局の挨拶に始まり、過労死弁護団の岩城譲先生のご講演、山梨家族会で係属中の遺族2組が訴えを行いました。平日夜間の開催にもかかわらず、企業の人事担当者など、一般の方を中心に58名に参加して頂き、盛会のうちに終わりました。
(山梨家族会 深澤 佳人)

静岡過労死等防止対策推進シンポジウム報告

今回のシンポジウムについて、家族の会としては今までポスターの配布とパンフの配布、前回実施した事案の報告を配布することについて議論になり結果として400部のポスターとパンフ、過労死関係の論文、厚労省の労働時間の適正な把握のガイドライン、を小冊子に作成して配布いたしました。もう一つは論者の決定に対して寺西氏と小笠原弁護士にお願いできました。安健センターの長谷川医師の講義もあり、飛び入り参加の高橋まつり様の母親の貴重なお話も大変感動的でした。山梨の取り組みの、参加者の発言や今後に対する提案などを聴くための参加型の部分も作ることが出来ました。大変熱のこもったシンポジウムになりました。(静岡家族会 尾崎 正典)

愛知過労死等防止対策推進シンポジウム報告

自分の働き方、会社の働かせ方は正しいのかを考えて頂きたいと思い、名古屋は諸外国の労働時間の規制について研究しておられる愛知健康センター理事長・猿田正機氏、過去に労基署からの勧告から色々な対策をされている大和ハウス工業(株)人事部長・能村盛隆氏に講演をして頂きました。両氏の話はとても聴きやすく、解りやすいものでした。その後、両氏にパネラーになって頂き、参加者からの質問に答えて頂く形を取りました。最後の遺族発言は中電事件のYさんが、ご子息が何故死を選ばなければならなかったのかを知りたいと、涙を堪えながら訴えられました。名古屋での開催の前に三重・岐阜でもシンポジウムが行われ、名古屋から数名参加をしました。両シンポジウムでの遺族発言でMさんがご主人を亡くした悲しみを話され、誰もが心身共に健康で働ける社会になって欲しいと訴えました。私はこのシンポジウムを聞いた方が「今の働き方では駄目なんだ」と思うきっかけになり、過労死・過労自死が無くなる事を願うばかりです。
(名古屋家族会 伊佐間 佳子)

「京都」最近の活動

京都のシンポジウムは、11月10日(土)昼間に開催しました。講演は、川人博弁護士、「健康な職場をつくるために」でした。過労死の歴史から、今日の過労死問題まで、わかりやすくお話してくださいました。多様な職種・幅広い年齢で、過労死が起こっています。過労死事例を聞くたびに、怒りと悲しみが沸き上がってきます。遺族発言は、電通の高橋まつりさんのお母さん、高橋幸美さんでした。まつりさんの働き方を静かにお話されましたが、最後は、企業の法律違反の働かせ方、政府の働き方改革について批判されました。会場は、ほぼ一杯で、去年より多い約130名でした。スーツ姿の参加者も目立ちました。企業の担当者だったのでしょうか。貴重な素晴らしいお話を、職場や家族・友人にも伝えてほしいと思いました。11月23日は、久しぶりに例会をし、Aさんの事例の学習会をしました。福井から、Aさんと支援する会4人での参加です。Aさんの息子さんは6年前の夏、「もうこれ以上こきつかわれるのに、つかれた」と遺書をのこし自死されました。早朝から、真夏の浜茶屋の責任者として働き、深夜まで不動産業の仕事もこなしました。現在は福井地裁で係争中です。来年は証人尋問があります。署名活動とともに、傍聴支援もしていきます。(京都家族会 中嶌 清美)

大阪での啓発シンポジウム

11月30日、JR大阪駅前のグランフロント大阪に於いて過労死等防止対策推進シンポジウムが開催され、参加者は352名でした。大阪労働局労働基準部長の挨拶から始まり、基調講演は『公共、民間、あらゆる職場から過労死をなくすために〜取材の現場から〜』と題し、毎日新聞新潟支局長 東海林智氏にご講演いただきました。遺族からは、佐戸恵美子氏がお嬢様の激務による過労死に対する無念さについて語られました。次に大阪労働局労働基準部監督課長より『大阪労働局の労働条件改善に向けた取組』、岩城弁護士より『過労死防止大綱の改正のポイントと活用方法』について報告がありました。続いて2名の遺族の方から自死で家族を亡くされた辛い想いをやり場のない気持ちでお話くださいました。過労死は決して他人事ではなく、このような悲劇が繰り返される社会であってはならないと改めて感じました。そして最後は、松丸弁護士の閉会挨拶で幕を閉じました。(大阪家族会 K・N)

「兵庫」命むしばむハラスメント医療現場からの叫び!

新任医師が兵庫の公立病院で、パワハラと長時間労働のために、34歳の命を散らした。代理人の林裕悟弁護士は、先輩医師の前近代的な誤った指導・行き過ぎた言動がうつ病による死に追い込んだ、ハラスメント等を生じさせた組織も社会的な責任が問われると。被災者の母親の「被災者だけでなく、加害者の人生にも大きな痛手を与える。私が加害者を許すことはないし、加害者も自分の記憶から消すことはできないだろう」との手紙に、ハラスメントを無くすことの大切さを学んだ。女性放送記者の31歳の娘を亡くした佐戸恵美子さんは、職場は働く人の労働時間を管理し過労死を防ぐべきだと訴えた。高速道路会社で息子を亡くした母親の訴えも織り込まれた。労働局・兵庫県・神戸市・労働3団体・過労死防止兵庫センターは、シンポを計画し、記者会見やゆるキャラとともに街頭宣伝を行い、280名余の参加があった。(兵庫家族会西垣迪世)

岡山での過労死等防止対策推進シンポジウム

11月9日に岡山国際交流センターにおいて過労死等防止対策推進シンポジウムが開催されました。参加者は90名でした。最初に慶応大学の山本勲教授による「メンタルヘルスと働き方改革」と題して「メンタルヘルスの悪化は企業利益の低下につながる」といった講演をされ,次に,寺西さんによる「遺族の思いと『過労死防止法』施行4年」と題した講演,最後に西垣さんによる「息子の過労死から過労死防止を願う」と題した講演をされました。山本教授による基調講演では,様々な質問があり,大学生の過労死をしない為にはどうすれば良いのかといった質問もありました。また,寺西さんや西垣さんの講演では,遺族でなければ語れない苦しみなどを話され,二人の過労死撲滅の熱い思いに胸を打たれました。今回のシンポジウムは,大学生にも興味を持ってもらえ,例年以上の成果を収めたと実感しております。(岡山家族会 中上裕章)

山陰過労死等を考える家族の会報告

【鳥取会場】
11月19日、鳥取市とりぎん文化会館において「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開催され、片道260キロを走行して兵庫県境(鳥取砂丘の近く)まで行ってきました。当日の参加者は93名でした。鳥取労働局長のあいさつに続き、岩橋誠(NPO法人POSSE[ポッセ]相談スタッフ)氏から、「過労死問題解決のための支援団体の取り組み」について基調講演がありました。私が印象に残ったのは、中原のり子さんの体験談発表でした。個人的には2回目の講演でしたが新鮮味があり、特に今回は過労死等防止対策に対する政府の傲慢な動きに的をおき、『私はこう思います。私だったら、こう対処します』と苛立ちを持ちながら、自分の考えを強くアピールされているのが、とても嬉しく印象的でした。

【島根会場】
11月28日、益田市の島根県芸術文化センター「グラントワ」でシンポジウムを開催しました。4月段階から企画立案、5月中旬には鳥取県K市に行って基調講演・事例報告予定者と直接出会って、懇願(出演要請)して承諾を得たのです。さらに、今年は参加者目標200名としましたが、結果は146名+我々スタッフ+来賓で約160名位でした。
基調講演では、市職員(男性44歳)が上司のパワハラ等によって自死されたことによる裁判闘争を支援された立場で経過をお話しされ、『K市職員労働組合は何もしなかった』と言われた時は、私も過去にH市職労執行委員長経験者としてグサッとくるものがありました。
事例報告では奥様から、突然一家の大黒柱を亡くし『亡くなった当時、何も考えることができなかった』と涙ながらにお話しされました。さらに、故人の叔父の立場から『裁判闘争したが負ける気はしませんでした。市役所は嘘ばっかり言っていたのです』と力強く語られ、参加者から3名の方々に大きな拍手がおくられました。 (山陰家族会 三浦一雄)

東四国過労死等を考える家族の会報告

平成30年10月20日東四国過労死等を考える家族の会が発足しました。10月25日現在、徳島シンポジウム参加希望者10名と連絡があり、あまりにも参加者が少ないので広報のため、徳島労働局、県庁、市役所、香川県庁、市役所に挨拶に行きました。さらに前日の11月16日まで徳島大学学祭、同窓会、勉強会、裁判傍聴時等で、シンポジウムのチラシを手渡したり、ポスティングをしたりして750枚を配布しました。11月17日(土)「徳島シンポジウム」新聞報道約70名参加。講演「メンタルヘルスと働き方改革」山本勲教授、「過酷労働・違法労働の発生要因と対策の在り方」今野晴貴氏、「遺族発言」会場の様子から若いお嬢さん、息子さんを亡くされたお二人の苦しさ悲しみが伝わったと感じました。参加者は高齢の方が多く、若い人たちにも聞いていただきたい講演と遺族発言でした。11月20日(火)「香川シンポジウム」新聞報道約70名参加。講演「過労死と職場のハラスメント」大和田教授、「遺族発言」若い息子さんを亡くされたご遺族、「エンマの願い」落語家桂三風、香川は開催日が火曜日であったからか首から社員証ホルダーをかけた中堅層の会社員の参加者が多く、来場者層に徳島との違いが感じられました。来年のシンポジウムの曜日決定は慎重に検討し、参加者増と若い人たちの参加増に工夫、努力したいと思っています。
(東四国家族会 大島 照代)

2018過労死防止シンポジウム報告 「四国」

「愛媛」遺族発言2名 30分
平日夜の開催にも関わらず、予定の170名を超え、そのうち開催場所の愛媛大学の学生約80名は、「啓発授業」として参加。遺族発言を最初に行い、最初にインパクトを与え、「聴く」体制を作り講演というのが愛媛スタイルである。遺族発言として佐戸さんの命を振り絞る一言一言に、講演の先生はじめ涙ぐむ人々の群れであった。
「高知」遺族発言1名 20分
土曜の昼間開催で約50名が集まりました。労働局、組合の発表、講演、遺族発言と各方面からの多面的内容。今年、啓発授業を開催した高知大学の学部長も参加していただき、シンポ終了後、感想を伺うことが出来た。また、中国からの留学生も参加し、新聞の取材を受けていた。
*両開催共、労働局長参加、労働部長の挨拶にも熱を感じました。また、両講演の長井愛媛大名誉教授には、わかりやすく、現場目線での講演をして頂きました。
(四国家族会 久保 直純)

「福岡」初の3ケタ、200名を超える参加でした!

福岡県における「過労死シンポ」は、参加者の低迷にあえいできた「商人の町・博多」での開催から、発想を転換して「労働者の街・北九州」での開催を試みました。結果は209名の参加を得て会場を満席にすることができました。基調講演は2本、天笠崇医師の「過労自殺、労働関連うつ病をいかに予防するか~ストレスチェック時代のメンタルヘルス対策~」という時勢にマッチした内容で始まり、 山本勲慶応大教授の「メンタルヘルスと働き方改革」という企業利益の観点からの話で終わりました。体験談は、東京家族会の中原のり子さんにお願いしました。終了後は会場を博多に移して、シンポに参加できなかった福岡家族の会メンバーとの交流会で盛り上がりました。ただ、シンポ参加者の9割が企業関係者であった点が宿題として残りました。(福岡家族会 江崎)

「東九州過労死を考える家族の会」ご報告

大分、宮崎合同の東九州家族会は、大分が11月2日、宮崎が11月20日にシンポジウムを開催しました。
大分シンポでは、大分県立看護科学大学・精神看護学教授、影山隆之氏が、「過重労働・睡眠負債と生きる習慣」と題して、宮崎シンポでは、慶応義塾大学・労働経済学教授、山本勲氏が、「メンタルヘルスと働き方改革」と題して、基調講演をしていただき、どちらも科学的な検証による論文で、説得力がありました。
宮崎シンポでは、「口蹄疫」発生時にいち早くメンタルヘルスに取り組んだ、宮崎県農業共済組合連合会の竹ノ内朋子課長の素晴らしい事例報告もありました。
体験談は、大分で発言されたNHK記者の遺族・佐戸恵美子さんの切実な訴えに触発されて、今まで実名を出されなかった宮崎の遺族が、この日の宮崎シンポから実名で顔も出して発言、取材されることを決心され、これからの過労死防止活動が期待されます。(東九州家族会 桐木弘子)

【主な活動報告】

9 月28日~29日 過労死弁護団全国連絡会総会:愛知県犬山市
10月 2日 全国過労死を考える家族の会ニュース第75号発行:全国家族の会事務局
10月20日 東四国家族の会 結成総会:徳島県徳島市
11月 6日  全国家族の会 統一行動:東京 霞が関周辺
同日   厚生労働省要請、地方公務員災害補償基金本部要請、宣伝行動、
同日   過労死防止東京中央シンポジウム:東京 イイノホール
11月 7日  全国家族の会総会:東京セントラルユースホステル会議室
11月19日 第13回過労死防止対策推進協議会:東京 厚生労働省会議室
12月 7日 いのちと健康を守る全国センター総会:東京 全労連会館

【当面の活動予定】

1月15日 全国過労死を考える家族の会ニュース第76号発行:全国家族の会事務局
1月19日 全国家族の会世話人会:東京 中央大学駿河台記念館会議室
同日   過労死防止全国センター幹事会:同会場
同日   過労死防止学会幹事会:同会場
2月 2日 いのちと健康を守る全国センター20周年記念集会:エデュカス東京
2月23日 森岡先生を追悼するつどい:大阪市内 シティプラザ大阪

【編集後記】

キェルケゴールの著書「死に至る病」に「死に至る病とは絶望である」という一節があります。家族会に入ってから、人はなぜ自ら死を選んでしまうのか、と考えることがあります。昭和の名経営者、本田宗一郎の逸話に、よく部下の頭を灰皿や工具で殴りつけた、というものがあります。「いま」ではパワハラとされる行為ですが、「むかし」はこのようなことがごく当たり前にあったといいます。しかし、「いま」は「むかし」よりこのような仕打ちによって、死を選んでしまう人が増えたのではないでしょうか。「昭和」の高度経済成長が終わり、「平成」の失われた30年が過ぎ、「いま」と「むかし」の違いを考えたときに、「みらい」に対する見通しの違いがあるのではないかと思います。現在が辛くても、耐え忍べば、将来に明るい見通しがあれば生きていけます。しかし、社会に出て間もない若年層であれば、早期離職してしまうことにより社会から脱落してしまう不安が、壮年期の男性であれば、家族を路頭に迷わすわけにもゆかず、退職することも出来ずに八方塞がりとなり、つらい日々が延々と終わることなく続くのではないかという不安が、絶望となり死を選ばせてしまうのではないかと思います。そう考えると、過労死とは単純に長時間労働やハラスメントの問題のみならず、社会全体の問題が影響しているのだろうと感じます。(全国家族会事務局 山中隆)