全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第77号

【発 行】 全国過労死を考える家族の会  (2019.4.2発行)
【事務局】 東京駿河台法律事務所内  ℡ 03-3234-9143
東京都千代田区神田神保町2-3-1 岩波書店アネックス7階


働き方改革関連法施行の前に、労災認定基準の改定を!

1. 働き方改革関連法の大きな矛盾
政府が一億総活躍社会の実現に向けて位置付けた働き方改革関連法は一部を除いて4月1日より順次施行されます。法律の中心になる労働時間法制の見直し部分についての問題点は、残業時間の過労死ラインの合法化、労働時間管理の適正把握は長時間労働改善の焦点になるため厳守する。仕事量は適正に管理されているか、持ち帰り仕事をしていないか実態把握すること。また、高度プロフェッショナル制度は、対象者が同意すれば、労働時間ではなく成果に対して給料が発生する残業代ゼロ制度。仕事量の裁量がないことで、成果を出すために長時間過重労働に陥る懸念があり、労基法は適用されないことや本人同意が条件のため、過労死すると自己責任になりかねません。他にも、過労死が多発している業種の自動車運転業務、建設事業、医師は、適用が猶予・除外に。新技術・新商品等の研究開発業務は、医師の面接指導を設けた上で適用除外されます。さらに、厚生労働省は、医師の働き方改革に関する検討会にて、時間外労働規制のあり方について、一般労働者の上限960時間の約2倍「年1,860時間(案)」を取りまとめる方針を打ち出しました。とても常識ではあり得ない水準で過労死を促進するものと言わざるを得ません。働き方改革関連法は、過労死防止法に逆行する大きな矛盾があることを指摘します。

2. 被災者の早期救済・労災認定基準の改定を!
昨年5月、過労死弁護団は厚生労働省へ「脳・心臓疾患、精神障害・自殺の労災認定基準の改定を求める意見書」を提出しました。2014年に過労死防止法が成立して5年経過し、過労死をめぐる社会的世論が高まるなか、脳・心蔵疾患の認定基準に関しては、2001年以来17年改定されず、精神障害・自殺の認定基準についても、2011年以来7年改定されていないことで、この間、過労死弁護団は集団的に討議され専門検討会意見や判例などをもとに、約120頁の意見書を作成され、厚生労働省へ要請しました。今年3月、「過労死等防止について考える議員連盟」と弁護団の合同勉強会がおこなわれました。弁護団から意見書の根拠となる具体的事例や遺族発言を紹介され、労働時間を正しく評価しないこと、過労死なのに認定されない労働行政の問題点を指摘され、議員(代理秘書)へ、過労死問題で最も遅れているのは救済であることの認識を深めていただきました。今後は、国会においても認定基準の改定に向けて議論していただくよう要請されました。
政府は、働き方改革関連法施行の前に、労災認定基準の改定をするべきです。(寺西 笑子)

全国過労死を考える家族の会世話人会 報告

日 時:2019年1月19日 10:30~12:30
場 所:(東京)中央大学駿河台記念館620号室
出席者:玉木一成弁護士、事務局3名(重複者は省く)、各地世話人14名、オブザーバー4名計22名参加。
進 行:寺西代表
寺西代表の開催挨拶:①世話人会の書記の輪番制について各地域家族会へ協力依頼
(結成間もない家族の会へは、書記担当順番を考慮する。)
②家族の会ニュース第76号には、初めて全地域の家族会より原稿提出があった。
(次回も協力して下さい。)
【議題1.主な活動報告】:2018年9月~2019年1月15日までの報告あり。
【議題2.主な活動予定】:2019年1月19日「家族の会世話人会」~2月23日「森岡先生追悼するつどい」までの予定について報告あり。
【議題3.情勢】
1) 玉木先生より:•毎月勤労統計不適切調査問題と「働き方改革」が4月から施行されることについて説明と家族の会員が声を上げる必要性のお話があった。
2)家族の会より:厚労省「毎勤統計労災遺族年金」問合せ先:0120-952-824
「過労死防止全国センター第7号発行」「過労死落語を知っていますか」過労死落語本→過労死防止全国センター幹事会で販売中
「森岡先生追悼するつどい」:1月25日申し込み締め切り
【議題4・協議1】
1)国会行動費について:会員の活動費援助細則(案)について
2) カンパ(案)について:各地会員等のカンパ一部を全国家族の会へカンパ協力。
3)連合:「36(サブロク)の日」の賛同に要請について、賛同しないと決定。
4)POSSE(岩橋氏)からアンケート要請について:再度内容要検討で岩橋氏へ返した。
5) 全国家族の会法人化:各家族の会にて検討し、次回世話人会で協議
【その他】:次回世話人会9月7日13時~東京駿河台法律事務所(玉木先生事務所)
(書記 村山 百合子)

トピックス

「学校における教職員の働き方改革」について

1月11日、約1年半21回の議論された「学校における働き方改革特別部会」が終わり、25日答申が出され、29日大臣会見が行われました
被災して11年、これだけ長期間話し合われ、多くの方々に注目された部会はないと思います。
「教師の働き方がおかしい」と現場や関係者が声をあげられるようになったことがこの部会に与えた影響は非常に大きく、メディアでも先生の働き方が連日伝えられるようになり、世論もよくも悪くも「先生の働き方って・・」という理解が広まりました。
私の被災時からは考えらない事で、今回の答申の良し悪しは別としてもこの改革の流れを絶対に止めてはいけないと心から思います。
今回、私たちに関わるところで大変な進歩だったのが、「学校における働き方改革」をする目的の中に、「志ある教師が適切な時間管理がなされていない中で・・過労死等に至ってしまう事態は、本人はもとより、その遺族または家族にとって計り知れない苦痛であるとともに、児童生徒や学校にとっても大きな損失である。・・」「勤務実態が把握されていなかったことをもって公務災害の認定に非常に多くの時間がかかり、遺族または家族を一層苦しませてしまうような事案も報告されている・・」「・・こうした志ある教師の過労死等の事態は決してあってはならないものであり・・根絶を目指して・・」学校の働き方改革を進めるとの記載がなされました。
今まで文科省が過労死等や公務災害に触れた記憶はなく、どんなに素晴らしい施策も働くものの健康が無くては成り立たないとの訴えが目的になり、何度も基本に立ち返ろうと委員の方々から意見が出たことも、大きな成果でした。
それを受け今回、文科省作成の「学校における働き方改革」の動画に参加させて頂きました。
一方で、教師の働き方を高プロの様にしている「給特法」の改正はなく、1年間の変形労働制の導入も盛り込まれるなど、納得いかない事も多々あります、
また勤務時間の上限が決められるなど、少しは前進したようには見えるが実際はどうなるのか、更にほとんどの教師が望む正規教員の増員、1クラスあたりの子どもの数を減らす等は盛り込まれず、課題が多く残っています。
これらの改善無くしては過労死等も減らないと危惧もしております。2020年よりまた教師の負担が増えます。
教師の為だけでなく子供たちの為に働き方改善に向けて更に声をあげ続けなければと思います。
(工藤 祥子)

各地の報告

第7回北海道過労死を考える会総会

2月10日(日)(14:30~17:00)札幌エルプラザで「第7回総会」が行われ、40年ぶりの厳しい寒さの中、室蘭、旭川、千歳、小樽、札幌市内から20名が参加されました。
総会前に、安彦裕介弁護士による「過労死と労災補償制度」をテーマにした学習講演の中で「脳、心臓疾患の労災認定基準」と「精神障害の労災認定基準」の違いや、代理人として労災認定された事例、再審査請求で労災認定された事例を認定基準に照らし合わせたお話をしていただきました。
現在、北海道家族の会は行政裁判係争中2件、民事裁判係争中1件の他、労災申請準備から損害賠償請求準備まで7件の事案があり、参加されたご家族からは裁判内容や労災申請までの経過、公務災害申請の事などが報告されました。
過労死防止北海道センターが昨年7月に設立され、副代表幹事に選出された村山百合子さんが「啓発授業」で経験した感想も話されました。
終了後、昨年9月に予定していた懇親会が地震の影響で中止になり、1年ぶりの懇親会には15名が参加し情報交換をしながら交流することができました。(菊地悦子)

宮城過労死を考える家族の会結成総会ご案内

このたび、3月末をもって諸事情により、「東北希望の会」に代わり、4月1日から「宮城過労死を考える家族の会」が、全国家族の会へ結集されることになりました。

日時:2019年 4月20日(土)
結成総会13:00~13:30 記念講演14:00~16:30
会場:エルパーク仙台 5階セミナーホール(資料代300円)
https://www.sendai-l.jp/center/lp/

講演1. 寺西 笑子さん 全国過労死を考える家族代表
「過労死のない社会をめざして」~家族の会の役割と意義~
講演2 .広瀬 俊雄 医師 産業医学センター長
「過労死の現状とこれからの課題」

協力:全国過労死を考える家族の会 NPO法人POSSE 働くもののいのちと健康を守る宮城センター
後援:宮城県  仙台市  宮城労働局

東京家族会 報告

東京家族会では、今年度は大人と子供の心のケアに取り組んでいます。3月10日には大人向けにアートセラピーを実施しました。当日はクエスト総合研究所から講師をお招きし、参加した会員さんでコラージュアートに取り組みました。コラージュアートとは、写真の切り抜きやリボン・ビーズなどを自分のイメージで画用紙に貼り、作品を作ります。その過程では、いつも心を占領している悲しみや辛さをひと時忘れて、自分と向き合うことが出来ます。そして出来上がった作品を見て、自分でも気づかなかった感情を発見することもあり、死別悲嘆や喪失体験を抱えている私たちにとっては、癒しの効果が期待できます。参加者からは「楽しかった」や「自分がこれからやりたい事に気づくことが出来た」といった感想が聞かれました。
また、昨年秋には子供向けのアートセラピーも行いました。この時は子供対象のセラピーをおこなっている先生にお願いしました。まず大きな紙にお絵かしきしたり、ビニール袋を使って風船遊びをしました。その後に大きなタネにしておいたお花紙で遊び、感情を全身で表現しました。また、作品を見て、母親から一言もらうことで、子供たちは承認されるという喜びも体験もしました。参加者の感想は、皆さん「楽しかった!」でした。大きな動きをすることは、死別体験をして日ごろストレスをためやすい子供たちの気持ちの発散の場になりました。お母さまからの一言で「いつも、お兄ちゃんになっていたけど、今日は久しぶりに無邪気な面がでてくれて嬉しかった」との言葉が印象的でした。子供を見守るお母さまの背中をみていて、皆さん必死に子供を守り、耐えて来たんだな、耐えているんだなと、改めて、夫、父を亡くした影響を考えさせられました。そして定期的に実施し、ケアしていくことの大切さを改めて実感いたしました。(J.S.、渡辺しのぶ)

神奈川家族会 報告

神奈川の交流会は、会員に限定したクローズの集まりでピアサポートの機能を持っています。参加者は専門家ではないですが、労働問題の当事者としてお互いの話に共感をもって耳を傾けます。ですので、自然とほっとできる空間となります。2か月に1回くらいのペースで実施しています。場所や食事などの費用は各自負担ですが、みんなに会えるのを楽しみにこの日を待ちます。
1月20日は今年初めての会で、「ゆっくり落ち着いた場所で、周囲に気兼ねなく話がしたいね。」という予てからの希望もあり、この日はいつもと違う会場を担当の方にみんなでお願いしていました。今回の会場は、レンタルルームで、部屋の中に入ってみたら、心ときめくhappyなデコレーションが私たちを歓迎してくれました(写真)。「こういう場所を使うのもいいね。」などと話しました。夢見心地なデコレーションがされた素敵なお部屋は、思いかけずいただいたプレゼントのようでした。泣いたり笑ったりたくさん語り合い、少ししゃべり足りない気持ちと一抹の寂しさを抱えながら、帰路につき、またしばらくそれぞれの時間を過ごします。また新しい一年が始まります。
神奈川の会は少人数ながら、この道(?)30年の方や小さいお子さんを連れた方もいて、少人数ながら多世代共生でアットホーム、包容力のある会となっています。(小林 康子)

長野過労死を考える家族の会報告

長野からは、現在係争中の「小池雄志損害賠償請求裁判」について報告致します。息子雄志は建設会社に勤めておりましたが、平成27年3月21日に過重労働と上司のパワハラにより31歳で自死しました。平成29年1月に労災認定され、同年6月に勤務していた建設会社に対して損害賠償請求裁判を長野地裁伊那支部に起こしました。
今年1月24日で裁判も10回を終えました。裁判を重ねる中で、準備書面を通じて、労基署から提出された資料や会社にあったメールの開示などにより新たな過重労働の実態がわかってきました。ところが、今まで長野地裁伊那支部で担当していた裁判官が異動になり、次回からは松本支部で行われることになりました。そこで、今までの経過や今後の取り組みについて3月29日に中間報告会を開く予定です。裁判所や裁判官が変わることになり不安はありますが、息子の無念を晴らすために今後も今まで以上に努めていかなければと思います。今後もご支援よろしくお願い致します。
長野県内でも、「過労死の会」に加入されていない過労死の家族はおられると思いますので、その方々に連絡取れればと思っているところです。(小池 宣子)

山梨過労死を考える家族の会報告

山梨・過労死と労災問題を考える会では、芦澤明さん、ひとみさんご夫妻の次男、たくま君のモラハラ控訴審が続いています。二つ同時に進行しています。労災認定に向けてのものと、東京電力に対しての損害賠償請求です。東京高裁で両方とも4回目の弁論を迎えます。全国からの署名のご協力、励まし誠にありがとうございます。
Nさんのご主人が、会社(NTT東日本)同僚の脱輪事故を助けるための出動した際、突然死してしまった被災について、労災だと主張し、国に控訴しています。これは、4月24日、13時50分に東京高裁にて判決言い渡しです。この判決は、2度も延期されています。
小学校教諭の深澤佳人さんの「犬咬み行政」「パワハラ損害」はいずれも勝訴が確定しています。
そして、この事案は、公務災害だと訴えた裁判です。1月15日、甲府地裁は「公務災害」だと認める判決を出しました。ところが、地方公務員災害補償基金は、控訴して来ました。東京高裁において、即刻の結審、棄却になるよう皆様からの要請署名をお願いしています。
山梨家族会、闘いの舞台は、すべて東京高裁です。日程など、お知らせいたしますので、ご支援ご協力をお願いいたします。(深澤 佳人)

静岡過労死家族の会報告

過労死防止シンポジウムの為の静岡支部の活動が始まっています。過労死防止対策静岡センターの設立も具体的になってきております。
係争中の事案は東京高裁でMさん裁判、Sさん事案が労災審査中、他,係争等の事案が3件行われています。 しかし昨年静岡の啓発授業はわずかに2件のみで2名の弁護士が行ってくれました。一般の高校や大学での啓発授業の浸透は静岡家族の会の大きな課題です。被災を抱え裁判闘争を続け、結果が出る中で、それぞれ10年を超す裁判で当事者の年齢も押しなべて高齢化をしてきております。静岡でもシンポジウムや啓発授業、係争等の支援活動にも労働団体や支援団体の若い力の参加が不可欠になりつつあると考えます。(尾崎正典)

名古屋家族の会報告

2月10日(日)午後1時30分より名古屋家族の会総会が開かれ、会員、賛助会員、合わせて20名の方が参加されました。愛知健康センター鈴木明男氏から安倍内閣の「働かせ改革」を家族の会が国会前や街頭で反対運動を展開したことは大変意義ある事だと開会の挨拶の中でお話をされ、次に長年家族の会を支えてくださっている水野幹男弁護士は、国が行っている「パワハラ」法整備の問題点や岐阜県や愛知県小牧市で行われるようになってきた「第三者委員会」の調査について、お話しをしてくださいました。
1時間程の総会の後、懇親会の中では係争中の方に経過報告をして頂きました。現在愛知では行政5名・民事1名の方が闘っています。その内の3名の方と欠席された1名の代理の方からお話しを伺いました。そのお話しの中で、労基署の担当官の人数が減らされているために、まともな調査もせず遺族が悲しみの中、いろいろな事を調べていかなければならない現状を訴えられた方がいました。お話を伺いながら、この厳しい現状をどのようにしていけば変えていけるのか、改めて考えていかなればと思いました。(伊佐間佳子)

<京都>最近の活動

2月9日、第31回総会を開催しました。参加者はいつものメンバーでした。昨年度より活動を活発にすることについて議論しました。会員にアンケートを取り、活動にいかしていこうと考えています。
労災・裁判が終われば、他の会員への支援が求められます。自分の事を考えてみても、支援される方から支援する方に回るのは、そう簡単なことではなく、活動の参加は積極的にできませんでした。気持ちはあっても、なかなか参加する元気がなかったのです。会員一人ひとりの状況も異なるので、忘れないで戻ってきてくださいと、願っています。みんなが活動しやすい家族の会は何かを考えていきたいと思います。
総会には、息子さんを亡くされた相談者のAさんが参加してくださいました。家族の中で、労災活動への取り組みの姿勢が異なります。私たちは、Aさんのお話を身を乗り出すように聞き、自分の経験を語りました。話をしだすと、あっという間に時間が経ってしまいました。これが家族の会の良さであると思いました。
3月31日は、春の例会を予定しています。山科疎水・毘沙門堂散策と、交流をします。5月には、過労死防止京都連絡会総会、龍谷大学で開催される過労死防止学会があります。一つひとつの行事を大切に活動していきたいと思います。 <中嶌清美>

<大阪>「森岡先生追悼のつどい」への参加

2月23日、シティープラザ大阪で、昨年8月1日急逝された森岡孝二関西大学名誉教授の「追悼のつどい」が、『森岡孝二の描いた未来 私たちは何を引き継ぐか』というタイトルで行われました。第一部332名、第2部205名の多方面からの参加者がありました。
第一部追悼シンポジウムは、開会挨拶、黙祷の後、『映像で振り返る森岡孝二先生』と題し、その時々のご活躍のビデオや遺族との過労死防止法へのご奮闘、先生らしい茶目っ気たっぷりでお人柄あふれるお写真などを拝見しました。記念講演は、毎日新聞新潟支局長 東海林智さんから「人間らしく働くこと―働くものと遺族に寄り添い続けた先生を偲ぶ」と題しご講演いただきました。その後、先生の関係団体やご家族によるパネルディスカッションが行われ、改めて先生のご活躍をうかがうこともできました。
第2部のレセプションは、関係団体や個人のスピーチが行われ、森岡先生との思い出のお話をお聞きしました。その後、森岡先生の娘婿さんの桂福点さんの落語「孝二おじいちゃんの思い出」が演じられました。落語の中では、温かいご家族に囲まれた森岡先生のお姿を想像しました。
これまで先生は、お忙しい中、大阪家族の会の活動にご参加してくださり、私達遺族に心を寄せてくださってきました。今回のつどいで、先生の過労死はじめ様々な労働問題への取り組みを振り返り、私達遺族も先生のご遺志を心に刻み歩むべき未来を考える機会となりました。〈小池江利〉

<兵庫>啓発授業に参加して

私は、弁護士と、平成29年から今まで北条高校、西脇工業高校、姫路赤十字看護専門学校、大阪四条畷高校、高砂高校に行きました。生徒は最初あまり反応が無かったが、私の「夫が亡くなった時息子と娘は大学生でした。もし自分の両親が仕事で命を落としたら、どうしますか」との問いかけに皆真剣になり、若者の過労死が増えている事「決して人ごとでは無い」との言葉に多くの反応があり、感想文で、「過労死という言葉は聞いた事があるが、講演を聞いて身近にある事で、自分にも起こる可能性があると思った。両親が仕事で突然亡くなるとか、考えられない。仕事に就くときは、労働条件や法律で守られている事を知って学んだ事を活かし親に心配かけないよう仕事を選びたい」等が寄せられました。今後も、各学校に広める必要があると思います。また、2月1日には、サロンドあいりにて、兵庫家族会の新年会を行いました。 (金谷一美)

<東四国>一日も早い、不当な「労災不支給決定」の取消を!!

平成24年1月、介護老人保健施設を持つ医療法人の強い要請を受け、38年の看護師人生の集大成にと踏み切った転職が、私の人生を大きく狂わせました。待っていたのは、入社時の条件と全く異なる、長い看護師人生で経験をしたことがない過酷を極める日々でした。その上に、転職からわずか1年2ヶ月足らずの平成25年3月、突然に95名の入所者を確保するノルマの未達成が、看護師長であった私のみの責任であるという理由で、激しく罵倒された後、解雇通告を受け、精神疾患を発症するに至りました。8か月後、労災申請を行いましたが、高松労基署で担当調査官に「生きているのに労災申請をするのか、図々しい。」という言葉を投げかけられ、申請に於いても、殆どが「はい」か「いいえ」で答える申立書の提出のみでよいという説明を受けました。聴取が始まる直前に、それまでの精神疾患に加えて、突発性難聴を発症。左耳の高度難聴や耳鳴り・めまいの症状により、うつ病が悪化しているにも関わらず、一切の配慮のない厳しい聴取を受け、16か月後に不支給の決定が下されました。その後も、労働局監察官の厚労省への虚偽報告、審査官からのパワハラと、理不尽な状況に翻弄され続けました。「不支給ありき」で行われた調査では、過酷な労働実態は一切明らかにならず、当初から業務起因性を明言していた主治医の意見は無視をされ続け、厳しい箝口令を敷き、証拠・証言を隠蔽・改ざんした事業者側が全て正しいとする信じ難い結果を突き付けられました。当時は、行政の理不尽な対応に声を上げ訴えると、益々不利な状況に陥るという根拠がない恐怖感に怯え、身動きが取れない精神状態に追い込まれていました。今、私は自分が失った尊厳を取り戻すため、そして仕事によって命や健康が脅かされることがあってはならないとの強い想いを持ち、不当な「労災不支給決定」の取消を求めて声を上げ、訴え続けています。病を抱え6年という月日の中、精神的・体力的・経済的に追い詰められながら、何度も心が折れそうになりましたが、今年1月29日に「支援の会」を立ち上げていただき、一歩ずつ前に進めていることを実感しています。まだまだ長い闘いになりますが、みなさまのご支援、ご指導を賜りますよう、よろしくお願いいたします。(M.T)

四国家族の会報告

こんにちは、四国家族の会です。今回のニュースは、わかちあいの会の事です。
昨年4月より始めましたが、12月に初めてランチ会を行い、1月、2月もランチ会の開催となりました。当初は、たまには気分を変えてのランチ会という事でしたが参加者の意見もあり、場所を変え、時には、隠れ家的なランチ、時には、海を眺めながらのお喋りと食事を楽しんでいます。参加者同士が顔見知りとなり、同じ気持ちの者同士が気兼ねなく、ゆったりと同じ時間を過ごす事ができ、お互いに、ここまで、これたのかなとの思いを持ちました。大事な人を失い、この世に楽しい事は何一つ無いとの思いは変わりませんが、ちょっとだけ楽しむことができるということは、大きな変化だと思っています。一人ではないと思える時間が、一つの生きるエネルギーとなっているのでは。
4月より新年度となり、啓発授業、シンポジウムとエネルギーの充填を十分におこない、活動をしていきたいと思っております。

福岡過労死を考える家族の会 活動報告

2018年11月11日,福岡では「働くもののいのちと健康を守る九州セミナーinふくおか」が開催されました。パネルディスカッションでは過労死の問題を取り上げることができ,特別企画では労働災害として共通するじん肺,アスベスト公害の被災家族とともに,夫や子を亡くした家族の思い,救済に向けて必要な活動や連帯を確認することができました。セミナー終了後,東九州家族会の桐木さん,佐藤さんとともに,福岡家族会の総会を開催することができ,会の運営方針やホームページ作成について語り合うことができました。その後,福岡家族会は,東九州家族会の桐木さんや藤崎弁護士をスカイプや電話でつなぎ,二家族会合同のホームページ製作会議を2018年12月,2019年2月,3月と定期的に実施しています。このホームページを完成させ,長時間過重労働で悩む労働者本人や過労死でご家族を亡くされた方々の救済につながるような会の運営を行っていきたいと思います。(弁護士 八木大和)

東九州過労死を考える家族の会報告

東九州家族会には、現在、労災申請中、行政裁判、民事裁判を闘っているご遺族が、宮崎、大分、熊本、長崎にいらっしゃいます。
熊本のクロネコヤマトの過労死事件は、昨年証人尋問が行われ、桐木と大分のご遺族が裁判傍聴支援に行ってきました。長崎の事件も近く結審の予定です。
大分のご遺族は、労災申請をしてから実に1年9か月もの長い間、労基署から待たされ、まだ結果が出ていません。その心中を思うと、息の詰まるような日々を過ごされていることが察せられ、早くいい結果が出てほしいと願わずにはいられません。
このように東九州家族会は、広範囲に会員がいることから、福岡家族会とも交流を深めていますが、将来、九州が一つのホームページで繋がることを目指し、現在、スカイプや電話会議を通して福岡家族会とその準備を進めているところです。
11年前、何をどうしたらいいのか解らず、毎日PCでいろんなことを検索していた経験から、窓口はたくさんあったほうがいいと私は考えています。
まずは、「その場所を作ること」、を目標に、より良いホームページをみんなで作り上げていきたいと思います。  (桐木弘子)

【主な活動報告】

1月15日 全国過労死を考える家族の会ニュース第76号発行:全国家族の会事務局
1月19日 全国家族の会世話人会:東京 中央大学駿河台記念館会議室
同日   過労死防止全国センター幹事会:同会場
同日   過労死防止学会幹事会:同会場
2月 2日 いのちと健康を守る全国センター20周年記念集会:エディカス東京
2月23日 森岡先生を追悼するつどい:大阪市内 シティプラザ大阪
3月 4日「過労死等防止について考える議員連盟・勉強会」・過労死弁護団:衆・第1議員会館

【当面の活動予定】

4月 2日 全国過労死を考える家族の会ニュース第77号発行:全国家族の会事務局
4月20日 宮城過労死を考える家族の会結成総会:宮城県仙台市
5月25日(午後から)・26日 過労死防止学会第5回大会:(京都)龍谷大学深草キャンパス
7月20日(午後から)・21日(正午まで)夏の一泊学習交流会:(京都)聖護院・御殿莊
7月21日(午後から)過労死防止全国センター総会:(京都)京都駅前・メルパルク
9月 7日 全国家族の会世話人会:(東京)東京駿河台法律事務所

【編集後記】

数年ほど前、ザ・ブロードサイド・フォーの名曲「若者たち」が森山直太朗によりカバーされました。最近、同じ被災者である家族会の友人と、隠れ家でお酒を飲みながら、ふた晩、語り明かすということがありました。お互いに、家族会に入らなければよかったね、と、意見が一致しました。被災された方々のお話を聞くのは辛いものがあります。時として、亡くなられた方が、語られるご遺族に憑依したかのように、その苦しみを吐き出されます。しかし、そのような苦しみがあることを知ってしまったからには、生涯をかけて運動を続けていくつもりだ、という志も一致していました。彼はいま、過労死弁護団に入り、過労死をなくすために、司法試験の勉強をしています。果てしなく遠い道のりであり、もっと楽な生き方があるはずなのに、過労死をなくすために、彼は歯を食いしばって、その道を行こうとしています。いつか、僕たちが生きている間に、過労死が日本からなくなったと、彼は過労死弁護団で、僕は過労死家族会で、解散式ができればと思っています。(山中 隆)