全国過労死を考える家族の会ニュース 第86号
「過労死等防止について考える議員連盟」へ要請しました
今回、議員連盟の役員退任にともない、新会長は、田村憲久(衆)議員(前厚生労働大臣)、事務局長は、谷合正明(参)議員、事務局次長は、田畑裕明(衆)議員(総務副大臣)が就任されました。前日、新役員へ、玉木弁護士、平本弁護士、協議会当事者委員4名(渡邉、工藤、高橋、寺西)が挨拶に伺い意見交換しました。翌日2月16日、参議員会館会議室にて、議員連盟総会が開催されました。
参加者は、議連の超党派議員・代理秘書、厚生労働省労働基準局長以下各課長8名、内閣官房参事官2名、文部科学省、総務省室長および各省関係者、報道記者。私たち側は、過労死弁護団代表幹事・川人弁護士と平本弁護士、過労死防止学会代表幹事・黒田先生、協議会当事者委員4名でほぼ席は埋まりました。
総会議題は、①令和3年版白書について取り組み状況など。②家族会・過労死弁護団より意見聴取です。谷合事務局長の進行で田村会長の挨拶に始まり、厚労省労働基準局長の挨拶と白書について説明がありました。
次に団体の意見聴取がおこなわれ、川人弁護士から下記4項目について発言されました。
(概要)
1.脳・心臓疾患の認定基準が改正され5か月経過し自庁取り消しされているが動きが鈍い、明白な事案は速やかに自庁取り消しを求める。
2.精神障害・自殺の新認定基準策定の見通しについて、提出した意見書を参考にすること、今後も要請する。
3.基補発0330第1号「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の活用について」発出され、労基署・労働局で認定基準以上に重要な役割を担っており被災者側に不利益となっている。労働時間が過少申告され使用者責任が免責されるリスクが高い。今後、国会で議論し行政内、協議会等で審議し撤回・見直しを要請する。
4.2011年国連での決議以降「ビジネスと人権」をめぐる国際的な取り組みが進められ「人権デューデリジェンス」が世界各国の企業で進められている。強制労働、児童労働、過重労働、ハラスメントは労働者の人権侵害。過労死は重大な人権侵害である。厚労省だけでなく政府各省で取り組み強化することを要請する。
続いて、寺西が意見を述べた。大綱の見直しについて基本的な枠組みである、調査研究、啓発、相談体制、民間団体の活動支援についての意見はほぼ盛り込まれたが、過労死に歯止めがかからず若年層のハラスメントによる過労自死の相談者は後を絶たない。過労死ゼロにほど遠い現状のため実効性ある施策の転換が必要。それには36協定は当面45時間を上限に特別条項は廃止。勤務間インターバル規制は当面11時間以上義務化する。使用者のハラスメント防止義務・規制を法制化する。公立学校教員における給特法について法規の改変をする。公務員においても労基法33条の改正が必要。なぜなら過労死を発生させる職場は前提であるはずの法令遵守していない、法律に問題があり改正を求める。2年後の2024年6月は過労死等防止法が成立して10年目を迎え3回目の大綱見直しも迎えることで、過労死等防止の観点で実効性ある法改正を要請しました。
(全国家族の会代表世話人 寺西笑子)
全国過労死を考える家族の会世話人会 報告
日 時 : 2022年1月22日(土)13:00~15:30 WEB会議(zoom)
出席者 : 玉木一成弁護士 、事務局、各地世話人(欠席 ・宮城) 計 18名参加
進 行 : 寺西代表
① 主な活動報告 : 昨年9月27日以降の活動および全国家族の会総会報告など。
② 情勢について 玉木弁護士ご講演概要
昨年9月、20年ぶりに脳・心臓疾患労災認定基準が改定された。過労死弁護団と家族の会は、過労死ラインを65時間にすることを強く要請してきたが採用されず残念だ。労働時間は80~100時間としているが,これに近い時間外労働の場合の参考例として65時間超を例に一定の負荷要因をあげて総合判断すべきとしている。負荷要因の評価で救済の幅を広げて勝ち取っていきたい。
労働時間以外の負荷要因は具体的に書かれている。夜勤交代制、不規則勤務、連続勤務、勤務間インターバルが短い、シフト勤務も過重性があると明記された。事業外の移動勤務、心理的負荷を伴う勤務も精神の認定基準で評価される、作業環境も考慮すると明記した。
このように認定基準が変わっているのに、改定された基準で、審査会・裁判で認定されたのは少ない。1月19日東京新聞の2つの記事を参考にして、脳・心臓の支給決定数が25%(約100件)減った。原因は労働時間の認定が厳しくなった。
厚労省は、基補発 0330 第1号 令和3年3月30日「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」を通達した。これによって厳格にする例をあげている。
一つ目は、持ち帰り残業のすべての時間を認めない。成果物の部分だけポイントを絞っている。二つ目は、休日出勤について、事業主が認めたものか、認めてなければ労働時間を縮小することになっている。こういう側面で認定が減っている。また企業は、上限規制の罰則規定を受けないために、これまでは労働時間の隠ぺいだったが、これからはパソコン記録は隠せないから、事業主の指示があったかどうかで判断する流れになっている。やらざるを得ない残業は認めない方向になっていることに危機感をもっている。三つ目は、昨年12月から精神障害の労災認定基準に関する専門検討会がはじまった。1年余りかけて全体に関して議論されることになった。今後、弁護団、家族の会と協働した運動が必要、労災補償が広がるように共に頑張りたい。
③ 協議事項
・30周年記念誌の進捗状況:今年5月発刊を目指して資料等の編集中。
・過労死防止啓発シンポジウムの遺族発言について:積極的に協力する。
・大綱の新たな取り組みについて:過労死等で親を亡くした遺児・家族へオンライン相談体制。
(書記:山陰家族会 三浦一雄 + 事務局)
【 玉木弁護士 講演参考資料 】
■「過労死の見かけ上の減少を優先」労働時間の過小認定が続出
厚労省の基準厳格化で弁護団が指摘
※ 2022年1月19日東京新聞WEB記事:https://www.tokyo-np.co.jp/article/154971
■ 仮眠や持ち帰り残業が「労働時間」に加算されない?
厚労省が基準厳格化、労災認定後退の恐れ
※ 2022年1月19日東京新聞WEB記事:https://www.tokyo-np.co.jp/article/154967
【 脳・心臓疾患の労働認定基準改正に関する4つのポイント 】
■ 長時間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
■ 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し
■ 短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
■ 対象疾病に「重篤な心不全」を追加
※詳細は、厚生労働省HP参照:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21017.html
【 基補発 0330 第1号 令和3年3月30日 】通達
■ 「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」(※抜粋)
- 問1 労働時間の調査・認定に当たっての留意点はあるか
- 問2 所定始業時刻より前の時刻にタイムカードを打刻しているが、タイムカードを打刻した時刻から労働時間に該当するか。
- 問3 自己申告をした終業時刻からかい離した時刻に事業場を退社した記録があるが、どちらの時間を終業時刻と評価すればよいか。
- 問4 所定労働時間外に行われる研修や教育訓練は労働時間に該当するか。
- 問5 いわゆる手待時間は労働時間に該当するか。
- 問6 請求人が、休憩中も電話が鳴れば対応しなければならなかったと主張しているが、このような休憩の場合、労働時間に該当するか。
- 問7 警備員等の仮眠時間は労働時間に該当するか。
- 問8 裁量労働制や事業場外労働に関するみなし労働時間制を採用している場合、労災認定実務において
① 労働時間はどのように評価するのか。
② 給付基礎日額はどのように算定するのか。 - 問9 移動時間は労働時間に該当するか。
- 問10 出張先の宿泊施設で行った作業は労働時間に該当するか。
- 問11 いわゆる持ち帰り残業は労働時間に該当するか。
- 問12 自宅で行うテレワークは労働時間に該当するか。
- 問13 労働時間外に緊急事態が起きた時のために携帯電話を持ち、緊急時には対応を行う電話当番が決められているが、当該電話当番中の時間は労働時間に該当するか。
- 問14 所定の勤務が終了した後に行う宿直勤務はどのように評価するのか。
※詳細は、厚生労働省HP参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000900450.pdf
(事務局)
トピックス
遺児交流会ご報告
今回の遺児交流会は12月26日に滋賀県高島市で開催されました。当初は8月に行う予定で計画を立て参加者も募集しましたが、コロナ感染拡大のため冬に延期となりました。12月開催に向けて今度は冬向きのスキーの計画をたてなおして準備しました。スキーなどの野外活動は、母親が一人で子どもを連れて行くことがかなり困難です。このような交流会だからこそできる取り組みです。
参加者の中にはスキーに行ったことがないご家族もおり、初スキーに期待がふくらんでいました。幸いコロナ感染者が全国的に減少している時期でしたので、ようやく開催の運びとなりました。
全国から集まったご家族は14家族でした。このような時期での開催なので、職場から県をまたいでの移動自粛を求められている方や高齢者とのご同居などのご事情があり、参加したいお気持ちはあっても、今回はあきらめざるを得なかったご家族もあり、コロナは遺児交流会にも大きな影響を与えました。参加者は全国各地から集まるので、十分な感染対策を取ったうえでの開催となりました。
参加した方々は、集合したホテルで、「久しぶり、元気だった?大きくなったねえ」と声を掛け合って2年ぶりの再会を喜び合いました。会えなかった2年間の子どもの成長に驚く声がたくさんあがっていました。皆さん、頑張って子育てをしてきた年月をお互いに認め合うご褒美のような時間でした。
昨年度は参加申し込みをして、しおりまで手元に届いていたのに、延期となり、ぎりぎりで中止となってしまいました。今年度は皆で顔を合わせることが出来て、喜びもひとしおでした。
夕食後にオープニングセレモニーが行われ、各家族が自己紹介した後に、大人と子どもにわかれての活動になりました。
大人は近況報告や子どもが学校で苦労している話、裁判等で悩んでいる話など、過労死遺族特有の話題があり、ここでしか理解してもらえない話に、皆でうなずいたり、共感したりしました。
厚労省からご参加の角南さんも同席されており、過労死遺族が被災後も長期間にわたって苦しんでいる実態をお分かりになって頂けたと思います。労災補償されたから過労死の問題は終わり、ではありません。子ども達が成長する過程で何度も父親が生きていたら、という思いを持つような出来事があります。過労死は当事者だけの問題ではなく、家族も巻き込んで苦しみが続きます。遺児が健全に成長するために心理的なケアは不可欠です。
今回、年上の子ども達は、成長した遺児から、被災後の苦しみや親との葛藤などの話を聞きました。その後、自分の抱えているストレスについて話をした子もいます。ある時、遺児から「大人は自分の体験や悩みについて話す場があるけど、子どもは話をする場所がない」という声がでました。この会も十数年続く中で、小さかった子どもが思春期になり、自分の体験や友達の家族との違いについて悩んだり、社会に出ることに不安をもったりするようになってきました。そのような気持ちを言葉にすること、そしてそれを受け止める場所が必要なのでは、と考えて今回の試みになりました。これからは、子どもが気持ちや体験を安心して表現できる安全な場所となるような取り組みも必要になると思います。
その間小学生低学年以下の子ども達は大騒ぎをしながら走り回っており、年齢別でのストレス対処や発散方法に取り組む必要性も感じました。子ども達が遊んでいる間に雪が降りだし、あたりが真っ白になってきました。それに気づいた子ども達はさらにテンションが上がり明日のスキーに期待が高まりました。
一晩中降り続いた雪は翌朝になるとさらに積もっており、子ども達は大はしゃぎしながらスキー場に向かいました。また、クラフトといちご狩りにでかけた子ども達もいました。その間に大人は、分かち合いを行いました。同じ体験をした人同士でしかわからない感情を共有し合い、涙を流したり、笑ったり、子どもがいる前ではおさえている感情を吐き出す時間でした。
午後は過労死を体験した親が陥りやすい思考や子どもとの関係について、体験談をもとに心理の専門家が対処方法のアドバイスをしてくれるパネルディスカッションがありました。また、年金や家族の会についての講座もあり大変充実した時間を過ごすことが出来ました。
一日中、大雪の中でスキーをしたり、お腹いっぱいいちごを食べたりして、大満足の子ども達が帰ってきてから、クロージングセレモニーが行われ、子ども達が一日の感想をそれぞれ述べました。また、今回はお楽しみイベントとして、参加者のお母さんがピアノを弾き、息子さんがドラムをたたく演奏がありました。子ども達が知っている曲だったのでみんな楽しそうに聞いていました。最後には準備委員長の高橋先生もベースで加わりとても盛り上がりました。小さな子ども達にとって、少し先をいくお兄ちゃんのドラムをたたくかっこいい姿を見ることは、自分の将来の夢や希望につながっていくと思います。様々な年齢の子ども達が参加しているこの会だからこそ、同じ体験をした遺児が、小さい子達にモデルとなるような姿を見せてあげることが出来ました。
過労死遺児たちは、頑張って働いている父親・母親が突然亡くなるという経験をしています。このことで将来への希望がもてなくなることがあります。そんな時、今回のイベントのように、年上の子どもの活躍する姿に励まされることがあります。この会ならではの企画ですが、子ども達の健全な成長の助けになるような会にしていきたいと考えています。
【初参加したKさんの感想です。】
2021年12月に開催された滋賀県での交流会に4歳児の双子と初めて参加しました。
参加を決意するまでたくさん悩みました。まず、子供たちが生後11ヵ月の時に主人が被災し、それから私一人で子育てをしていたため、子供たちは電車にさえ乗ったことがありませんでした。交流会に参加したい気持ちがあっても、私一人で子供たちを電車に乗せ、いつもと違う部屋で子供たちが眠れるのか、不安がつきませんでした。子供たちに相談すると初めは行きたくないとのこと。交流会の参加を一度は断念したものの、周りのサポートに私も少し勇気が出て子供たちに楽しそうに話せた結果、行きたいと言ってもらえたので、参加することができました。
最初は緊張していた2人も初めての雪遊びや託児室での時間がとても思い出に残ってるようでそれ以来『なんでやねん!』とか『大阪には美味しいものがいっぱいあるんやで~』と家に帰ってからも2人で話しています。最近も交流会の時の写真や動画をみて、また行きたい、お姉さんに会いたいと話しています。私だけでは与えることができなかった刺激を感じることができたようです。参加を決めるまでは本当に悩みましたし、一度は参加を断念しました。しかし、子供たちがよい思い出が作れたこと、同じ境遇の方と直にあって気持ちを話すことができたことなど、少し勇気を出して参加して本当によかったです。遺児会を支援してくださってる方には心からお礼申し上げます。あと、この会につなげてくれた方々にも感謝しています。Twitterしていると自死遺族の方の多くが毎日後悔や希死念慮と戦っています。しかも一人で…私には交流会で知り合った皆さんがいてどれだけ救われているか、と感じています。ありがとうございます。
(全国遺児交流会世話人 渡辺しのぶ)
各地の報告
北海道過労死を考える家族の会報告
今年の北海道は、例年にない大雪に見舞われ日常生活にも影響がありましたが、やっと春の兆しが見られるようになりました。 荒天、コロナ禍も収束せず、まん延防止措置の延長もあり2月に予定していた北海道の総会は6月に延期になりました。
北海道家族会は今年で10年になる節目の年を迎えますが、北海道という広大な土地柄とコロナ禍で会員とのコミュニケーションが総会以外では図りづらいなどいろいろな問題があります。
その為、総会を中止にせず、交流の場として何とか開催できるように世話人で協力し6月開催に向けて準備をしているところです。 新会員の入会、係争中裁判の進捗などに大きな変化はありませんが、裁判傍聴支援などに、地元会員の皆さんの協力が大変大きく改めて「過労死家族は一人ではない」と実感しています。今年度もいの健北海道センター、過労死等防止対策推進北海道センターと協力しシンポジウム・啓発授業などに遺族、当時者として無理のない範囲で関り「過労死を0にする」ように働きかけていきたいと考えています。
(北海道家族会 村山百合子)
宮城過労死を考える家の族会 報告
2021年12月4日に、宮城県労連会館会議室で第3回総会を開催しました。新型コロナ感染が落ち着いてきた時期に、1年ぶりに対面で開催しました。参加者は、昨年の倍の8名でした。その内、3名は、この1年間の内に、子どもさんを過労自死で亡くした家族の方でした。宮城県から1名、山形県から1名、福島県から1名でした。すぐに快く会員になっていただきました。
福島の方は、どこに相談したらいいかわからないために労災申請の手続きが遅れて労災を扱ったことの無い知人の紹介の弁護士さんにお願いしましたが、時効が来たために申請しないで終わってしまったという方でした。家族の会が近くにあったらこんなことにはならなかったと悔しがっていました。
新会員の方のお子さんは、どの方も大学(院)新卒から5年以内の若者でした。若者の過労死(自死)が、近年目立って増えてきているので、対策の必要性を痛感しています。
(宮城家族会 芳賀直)
東京過労死を考える家の族会 報告
東京家族会は、会員さんの裁判についてご報告いたします。
11月の厚労省要請に参加した山口勝彦さんの治癒認定関係休業補償給付不支給処分取消請求事件について,2月18日に水戸地裁で口頭弁論が行われました。「症状は安定していたか」について,当時の主治医A医師は「急性症状,この時期特に悪化していた」との意見書を提出し,症状は改善しているかについて,転院した大学病院のB医師,C医師は「うつ病ではなく双極Ⅱ型障害,薬物療法とデイケア治療による相乗効果から症状は明らかに改善している」との医学的意見書を提出しています。一方,国側は医学的主張を一切行っていないことから,裁判長は国側に4月8日までに医学的主張を出すように要請しました。この訴訟は,地方労災医員専門部会の医学的意見をとった主張が全くないばかりか,その主張自体が医学的見解に欠けている極めて異例の裁判になっています。引き続きご支援よろしくお願いいたします。
また、新潟地裁ではパワハラ事件裁判の証人尋問が3日間にわたって行われました。特に当時の職場でパワハラを行っていたとされる上司に対しては、原告弁護士が当時の業務内容と分担、職場の雰囲気、部下からどう思われていたか、部下に対する指導のやり方、同じ部署の人の不自然な人事異動など、様々な視点から問題のある職場だった事実を突きつけていました。本人尋問では、ご主人の苦しかった思いを裁判官に伝えるために、家族に書き残した遺書を読んだり、家庭で悩み苦しんでいたことを述べました。2007年に被災してから、ご主人の苦しかった思いを会社に伝えるためにここまで頑張ってきました。引き続きご支援よろしくお願い致します。
(東京家族会 渡辺しのぶ)
神奈川過労死等を考える家族の会報告
神奈川ではコロナの蔓延が続いたため、1月と3月の交流会も対面では出来ませんでしたが、Zoomにて2時間ほど開催致しました。Zoomでは参加できない方、またzoomでしか参加できない方と両方いらっしゃるので、今後、コロナ終息後の交流会のあり方についても、併用かハイブリットで行うかなどの工夫が必要だと考えています。
神奈川ではここ数年で新たな入会者も増え、大切な方を亡くされて日の浅い方もいらっしゃるので、「なかなか整理できない気持ちやここでしか言えない感情を話すことが出来て本当によかった」と感想を頂きます。コロナや不安定な社会情勢の中、気持ちも塞ぎがちです。少しでも暗くなりがちな感情を皆さんで共有できたらと思います。また、今後は会員さん同士でMLでも色々と話が出来たり、交流会以外の交流も考えていければと思います。
神奈川過労死等を考える家族の会は5月25日で5周年を迎えます。大きな集会は持てませんが、対面で出来る様に準備を進めているところです。
(神奈川家族会 工藤祥子)
長野過労死を考える家族の会報告
先日全国家族の会のMLで「吉田午郎さんの労災認定」を求める署名をお願いしました所、全国より多くの方々がご協力くださりありがとうございました。現在(3/11)までに3千筆を超える署名が集まって来ておりますが、署名は労災認定されるまで続けていきますので、今後もご協力よろしくお願いいたします。
3月12日には「吉田午郎さんの労災認定を勝ち取るために、家族からの訴えを聞く会」を飯田下伊那地区労連、飯伊労災過労死をなくす会が中心となり開催され、20余名の方々(内長野家族の会から7名)の参加がありました。
午郎さんの母恵美子さんは、午郎さんの自殺は過重労働を強いられたことが原因であると訴えられました。午郎さんはリニア中央新幹線に使われる複数の装置の開発を1人で担当させられ、開発製品に事故や故障が繰り返し起きその処理も一人で担当、更に度重なる設計変更の対応にも追われる中で、書類や製品の納期が遅れ、最終的には間に合わなくなってしまったのに同僚からのサポートもなく上司からの直接的な指示や援助が全くないばかりか業務の遅れや進め方について追及され、「頑張ろうとしたけどだめだったよ」と書き残し自死されてしまったのです!集会では「吉田労災を支援する飯伊の会」を立ち上げ、今後も署名活動を行いながら、労災認定に向けて活動していくことが決まりました。
(長野家族会 小池宣子)
静岡過労死を考える家族の会報告
静岡家族の会では家族の会の裁判の状況や活動の打ち合わせのために4月2日に会合が始まります。昨年度はコロナの影響もあり啓発授業の実施や協力、伝達の関係でスムーズにできませんでした。
近年、災害が起きた職場は学校を始め市役所、公的機関や、一部上場企業にも発生していて、学校現場が啓発授業を招き、受け入れることが自らの職場や、教師の職場での災害の説明報告が、管理者にとりましては大変むつかしい面もあると考えます。県の教育委員会と真っ向から裁判で闘った上、災害と認められた事実を、それを受け入れる土壌はまだ育っていないと感じております。一般職での災害の事例も、企業のメンツで再発防止のための動きが足りないのではないかと思われます。
しかし災害から10年、20年と経過しても過労死防止に向けて動けないものでしょうか。若い学生や、生徒に話す場合は多くを少し不明確に話さなければ、受け入れられないでしょうか。年齢により話す内容を調整する必要はあると思いますが。しかしすぐに職場に入っていく学生には少し厳しい真実と過労死の起こりうる事実を話す必要もあるのではないでしょうか。今年も啓発授業の希望はないのでしょうか、残念でなりません。
(静岡家族会 尾崎正典)
名古屋過労死を考える家族の会報告
名古屋家族会は年に一度、2月に総会を開催する事になっているのですが、コロナの感染がおさまりを見せないため、昨年に引き続き延期になってしまっています。この事は裁判傍聴にも少なからず影響が出てしまっているので、早く感染がおさまってくれる事を願うばかりです。
そんな中、1月に昨年9月に労災認定された事件の損害賠償請求裁判が和解で終わる事が出来ました。会社の代表からの謝罪があったと聞いています。本当に良かったと思います。しかしその翌月、別の会員の方の労災認定裁判控訴審は棄却という結果になってしまっています。どちらの裁判も控訴審で「証人尋問」が開かれたのですが、真逆の結果を迎える事になってしまい、私自身とても困惑しています。
昨年20年ぶりに脳・心臓疾患の認定基準が改定されました。そして12月から精神障害の認定基準に関して検討会がもたれています。とても時間のかかる事だとは思いますが、精神障害が原因の労災はまだ減っていません。認定基準を1日も早く改訂し、ご本人やご遺族が、労災認定されず何重もの悲しみや苦しみを抱えないようにして欲しいと思います。
(名古屋家族会 伊佐間佳子)
京都労災被災者家族の会報告
京都家族の会では、今年になって、まだ例会・総会の開催はできていません。しかし、京都家族の会では、さまざまな活動を行なってきました。
一昨年、過労自殺の労災認定を受けたAさんの息子さんの事件で、会社への損害賠償請求の裁判が続いています。会社は遺族の思いを受け止めて早期の解決を求めます。
2月には、京都職対連が地公災京都府支部と京都市支部へ要請を行ないました。京都府支部には、昨年の地公災害本部に要請したBさんの件で、早期に決裁するよう要請されました。公災申請から2年が経過しても未だ決裁は出ておらず、地公災はその役割をはたせていないと強く思います。
同じ2月、京都職対連の総会で、zoom参加ではありましたが、情勢や闘いを学びました。また、昨年改定された過労死の認定基準の学習会もありました。詳細な説明があり、最後に、過労死の闘いの大切さを話されてとても腑に落ちました。
今後の活動では、5月に過労死防止京都連絡会の総会を開催予定です。総会での学習会のテーマは、昨年改定された過労死防止大綱と白書です。講師は京都労働局に依頼しました。苦しい時期にある私たちですが、真摯に学び、交流を深めて今年の運動を進めていきたいと思います。
(京都家族会 中嶌清美)
大阪過労死を考える家族の会報告
『延べ600人の生徒に啓発授業』
大阪過労死を考える家族の会で取り組んだ過労死防止基本法に基づく国の事業「労働問題・労働条件に関する啓発授業」について報告します。
2021年度に大阪では5件の啓発授業(高校4件、専門学校1件)が行われ、生徒数は延べ約600人でした。授業の時間は各校1時間ないし2時間で、弁護士からは労働者の権利を守る労働法制、家族からは過労死の実態や体験などを話しました。
いずれの学校でも、例外なく生徒全員が日頃の授業とは異なるリアルな話に眼を丸くして、熱心に耳を傾けて下さいました。専門学校では外国からの生徒が半数ぐらいで、言葉のハンディを乗り越えて聞いて下さり感激しました。生徒には、現在の時点では就職、会社についての実感がまだないけれども「過労死」の言葉や過労死のニュースは知っており、漠然とした大きな不安はあるように感じました。担当の先生も強い関心をお持ちで、進路指導の真っ最中、その上コロナ禍のため授業時間のやりくりが難しい中、貴重な時間を取って下さって感謝しています。
これからも過労死弁護団と協力して、もっと啓発授業を広めていきたいと思います。
(大阪家族会 田村和男)
兵庫過労死を考える家族の会報告
兵庫家族会の会員は、過労死等防止対策推進法に基づいて行われている啓発授業に、2021年度も参加しました。実施数は、公立高校4校、私立高校2校3コマ、大学2校3コマ、看護専門学校2校でした。毎年お申し込みくださる学校も何校かあります。今後も、過労死等防止対策推進兵庫センターの弁護士や社会保険労務士の先生方と協力し、これからの社会を担っていく若者に、過労死の実態や遺族・家族の気持ちを会員それぞれの方法で伝えていくことができればと考えています。
兵庫家族会では、偶数月の第3金曜日に定例会を開き、2月には定例会に続いて新年会も開き、会員同士や支援してくださる方々との交流の場を持ってきました。しかし、新型コロナウイルス禍において定例会を中止することも多く、新年会は2年連続の中止となりました。ご主人や息子さんを亡くされ労働災害、公務災害、民事訴訟で闘っている方々のお話を充分にお聞きすることができず、非常に残念でなりません。また、新しく入会を希望される方もいらっしゃいますが、2月定例会の中止によって電話でお話するにとどまっています。解決をしている会員にとっても他では話せないことを話せる場であり、普段通りに定例会を開けるようになる日が少しでも早く来ることを願っています。
(兵庫家族会 福永)
山陰過労死等を考える家族の会報告
昨年5月31日、松江地方裁判所で高木栄子(山陰過労死等を考える家族の会代表)裁判の行政訴訟・民事訴訟に対する判決があり、原告側の勝訴となりました。この判決に国及び会社側の控訴が予想されたため、高木ご両親様と私は二度にわたり島根労働局労災補償課長・松江法務局訟務部門上席官・出雲労働基準監督署労災課長に面談を求め、『控訴断念してください』と強く訴えたのです。
また、全国過労死を考える家族の会世話人会の皆様方に上告断念行動(ハガキ・FAX)をお願いして、約200通が厚生労働大臣および島根労働局長に集中、送付していただきました。その結果、6月16日までに国及び会社側が控訴断念し、原告側の完全勝利が確定となったのです。全国の皆様に改めてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。私の気持ちを整理するために、昨年の控訴断念行動先だった島根労働局・出雲労働基準監督署へ令和4年3月15日、お礼のあいさつに行ってきました。これでやっと落ち着きました。
現在、「高木教生過労自死裁判闘いの記録」を作成するために、山陰過労死等を考える家族の会員が一致団結して取り組み始めたところです。
(山陰家族会 三浦一雄)
東四国過労死等を考える家族の会報告
昨年12月8日に高松高裁で判決言い渡しがありましたが、判決文の内容は、8年余り前、十分な調査を行わず「労災認定」をしなかった高松労基署の調査復命書を踏襲した地裁判決と同内容の非常に不当なものでした。
高松高裁では、新たに被災当時の同僚が証人として採用され、(高裁での証人採用率は1.4%程度とされる)当時の長時間労働や連続勤務、苛烈なパワハラが赤裸々に語られ、国側および医療法人の証拠・証言等が虚偽であったことが明らかになりました。さらに、労基署が医療法人へ聴取に訪れた日、直前に事務長から「長時間労働もパワハラもなかったからね。」と聴取対象職員への圧力があったことや、聴取は複数人が同室で同時に行われ、互いにけん制し、自由な発言ができない状況であったことも判明しました。
しかし、裁判長は適切な論拠に基づかず、「信用できない」と全てを一蹴し「棄却判決」を下しました。信じ難く、許し難い、酷い不当判決でした。あまりの不条理な判決に、行政・司法の腐敗を許容できないと、12月21日に最高裁へ上告するに至りました。併せて、医療法人に対して社会的責任等を問う交渉も始めたいと考えています。
9年に及ぶ闘いの中、労基署(原処分庁)の誤った結論を頑なに守ろうとする国に、「被災者の救済」という姿勢の片鱗も見られないことを残念に思うばかりです。
(東四国家族会 寳田都子)
四国過労死等を考える家族の会報告
2022年もコロナでスタートしました。コロナ禍においては、啓発授業も今までとは違うスタイルが出てきました。対面授業が出来ずにネットによる授業。確かにネットであれば、授業をする側受ける側ともに時間を有効に利用することができます。しかし、対面だからこその臨場感は、伝わりません。
話す側としても相手の顔を見ながら、反応を見ながら話す事ができ、充実した時間を過ごす事ができるのではないかと思います。今年度も松山大・高知大・愛媛大での啓発授業が予定されています。できることなら対面での授業ができればと思っています。一人でも多くの社会に出る前の学生に「過労死」の実態を知ってもらい、人生における仕事の存在の意義と「過労死」のない社会になるために何をすべきかをしっかりと考えてもらえればと思います。コロナの様々な制約・定義がかわり、わかちあいの会等も再開できればと思います。
(四国家族会 久保直純)
福岡過労死を考える家族の会報告
2月28日に福岡遺族交流会(Zinniaの会)を開催しました。今回もコロナ禍と言うこともありオンラインでの開催でしたが、普段お会いすることが難しい遠方の方とも交流することができ互いの想いを共有することで改めて家族会の大切さを身に染みて感じる機会となりました。ご遺族としての普段吐き出せない想いを受け入れる場として。困ったことにお互い相談に乗れる場として。肩の力を少し抜ける場として。家族会でなくてはできないことを継続していきたいという想いを改めて持つことができました。
特に地方では地理的な制約やそれに伴う時間・費用的な制約がある中で、負担の少ない方法としての良さが光ります。ただし「オンライン開催だからこそ参加できる」だけではなく、オフラインだからこそできることもあり。その両方の良さを活かして会としてのご遺族を繋げる輪を拡げていければと思います。オンラインに抵抗がある方もいらっしゃるかも知れません。感染への不安が収まった際にはまたご遺族や当事者の方等々が集まれる機会をつくっていければと考えております。
(福岡家族会 串尾邦彦)
全国過労死を考える家族の活動
【主な活動報告】
1月 29日 過労死防止全国センター幹事会:WEB会議(zoom)
2月 2日 いのちと健康を守る全国センター第1回理事会:WEB会議(zoom)
2月 4日 第6回遺児交流会会議:WEB会議(zoom)
2月 15日 過労死等防止について考える議員連盟新役員面談:衆・参議員会館
2月 16日 過労死等防止について考える議員連盟総会:参議院会館B1
2月 20日 第9回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
3月 12日 過労死防止学会幹事会:WEB会議(zoom)
3月 17日 いのちと健康を守る全国センター第2回労働基準行政検討会:WED会議(zoom)
3月 19日 第10回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
【主な活動予定】
3月 30日 全国過労死を考える家族の会ニュース第86号発行:全国家族の会
4月 2日 過労死弁護団全国連絡会議拡大幹事会:東京丸の内+ WED会議(zoom)
4月 8日 第1回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
4月 23日 全国過労死を考える家族の会世話人会:WED会議(zoom)
【予告】
- 過労死防止全国センター総会
2022年7月16日(土)13:30~16:30(予定) WEB会議(zoom)開催 - 過労死防止学会第8回大会・総会 ハイブリッド開催
日程:9月10日(土)・11日(日)
会場:龍谷大学・響都ホール交友会館(JR京都駅八条口から徒歩1分 アバンティ9階)
キャンパスプラザ京都(JR京都駅 中央口から徒歩4分)
※詳細は、各事務局へお問い合わせください。
以上
カンパのお願い
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カンパのご協力をよろしくお願いします。
ゆうちょ銀行 店名 〇五八(ゼロゴハチ) 店番 058
預金種目 普通預金 口座番号 3713219
口座名義 全国家族の会(ゼンコク カゾクノカイ)
【発行】全国過労死を考える家族の会(2022.3.30発行)
【事務局】東京駿河台法律事務所内 TEL. 03-3234-9143
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町二丁目3番1号 岩波書店アネックス7F