全国過労死を考える家族の会ニュース 第84号
労災被災者救済の拡大と
リスクのない働き方・命を守る新たな規制を求めます!
1、9月15日、厚生労働省は20年ぶりに「脳・心臓疾患労災認定基準」を改定し施行しました。業務による長期間にわたる疲労の蓄積と発症に影響を及ぼす現行基準の考え方は妥当と評価され、私たちが求めた過労死ライン「月65時間」への引き下げにならず「月80時間」を維持したことで不満が残る結果になりましたが、この間の働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることを踏まえて、過労死ラインに至らなくても総合判断するとの方向を示しました。労働時間以外の負荷要因として、勤務間インターバルが短い勤務、身体的負荷を伴う業務、身体的負荷を伴う業務、海外出張などで4時間以上の時差を要因に盛り込むなど評価対象が追加されました。
なお、国家公務員・地方公務員の災害補償も同指針を改正して各府省等に通知しました。しかし、昨年度の(脳心臓死者)認定数216件のうち残業が80時間未満で認定されたのは23件、約1割でした。さらに、脳心臓疾患の労災認定率は、29.2%という厳しい状況です。今後は数字に表れない負荷要因をどういう形で適正に評価し認定していくのか運用の可視化が問われます。私たちは、今回の改定を契機にこれまで認定されなかった人が認定されるように救済の拡大につながることを心から願っています。
2、5月17日、WHO(世界保健機関)ILO(国際労働機関)は、はじめて長時間労働による健康リスク・死亡の研究発表をしました。研究論文によれば、週労働時間が55時間を超えると、週35~40時間の場合と比べて、虚血性心疾患と脳卒中のリスクがどちらも高まることを示しました。2016年に脳卒中と心疾患などの死亡者は世界全体で74万5000人に上ったとみられます。これは特に労働に関連した障害や早すぎる死亡のリスクを抱える人々が増えていることを意味します。また、テレワークの普及やフリーランスの仕事の急増は、長時間労働の傾向だけでなく、労働時間と休息時間の境界を曖昧にすることにもなっているなど指摘し労働者の健康を守るための規制を求めています。
WHOのテドロス事務局長は、「脳卒中や心臓病のリスクを負う価値のある仕事など、どこにもない」と訴え、法律による強制残業の禁止や労働時間の制限、労働者が労働時間を報告して週55時間労働を超えないようにするなど、加盟国の日本を含む各国の政府や企業に長時間労働を避ける対策を求めました。
上記の発表を受け、5月19日に過労死弁護団と全国家族の会は緊急会見を開き、「週55時間」労働は日本の「月65時間」残業になることで、厚生労働省へ権威ある国際機関からの指摘を真摯に受け止め、「過労死ライン65時間」への認定基準改定と過労死防止の健康被害に関する法改正を求めました。私たちは、テドロス事務局長と同じ認識を持ち「命より大切な仕事はない」「過労死ライン65時間」を訴え、今回の発表が反映されるよう、リスクのない働き方と命を守る新たな規制を求め、「過労死ゼロ」につなげていくことを呼びかけます。
(全国過労死を考える家族の会代表 寺西 笑子)
全国過労死を考える家族の会世話人会 報告
●日時:2021年4月17日(土)13:00~15:00 WEB会議(zoom)
出席:玉木一成弁護士、事務局(重複者は省く):寺西、各地の世話人16名が参加
1、昨年の要請行動
公務災害の要請者がいつものように少ない。大綱で公務災害は記述なく、おざなりにされている。今後の方針について公務関係の会議を夏に持ちたい。
2、 啓発シンポジウム会場の相談会(3会場)
好評であったが対面式のため、東京・名古屋・大阪ともに人員集めが大変だった。今後の課題として相談会の周知の方法、時間調整、経済的(遠距離の交通費)の問題があり、オンラインの希望があった。
3、 30周年記念行事について
各地の報告では、世話人会、例会などの開催は難しく少人数で行なわれているところが多く見られた。東京や各地の世話人の負担を考えると、集会やシンポジウム開催などは難しい結論になった。記念誌を作成することで合意し、編集委員を選んだ。内容は、30年の活動の歴史、資料を残したい、闘いの事例を掲載したいという意見があった。記念誌の内容は「記念誌準備委員会」で決める。
4、 その他、シンポジウム、遺児交流会、11月の統一行動などの報告があった。
(書記 京都 中嶌)
●日時:2021年7月24日(土)13:00~15:00 WEB会議(zoom)
出席:玉木一成弁護士、事務局(重複者は省く):寺西、各地の世話人14名が参加
1、 寺西代表の進行で、出席確認と4月以降の活動報告および各議題が進められました。
・11月10日の統一行動及び11月11日の全国家族会総会についての議題及び協議事項
・コロナ禍のため、対策をとりつつ規模を縮小して参加制限を設ける。
・厚労省、基金本部要請行動について、昨年のようにコロナ対策をとれる会場をお願いする。宿泊は、各自で用意する。総会会場は、全労連会館3階の会議室の予定。
・中央シンポ遺族発言の候補者を山陰・長野・北海道・大阪の会員候補者に打診する。
2、 オンライン心理相談会開催について
11/5、11/24、11/30の10時から17時の間で3名ずつ行う。各地域で相談者を募る。
3、 遺児交流会
8月8日開催予定が12月26日に延期。行先は、琵琶湖でスキーを予定。
4、 その他
・全国家族の会30周年記念誌発行について:来年5月予定
・関連団体(過労死防止全国センター、過労死防止学会ML)へのML投稿について、今後、個人の支援要請、報告等は、「過労死家族の会ML」及び「いの健センター」へ投稿する。
・全国家族の会会員向けのアンケートは今後受けないことにする。
(書記 大阪 西岡)
●日時:2021年9月4日(土)13:00~15:00 WEB会議(Zoom)
出席者:玉木一成弁護士、事務局(重複者は省く):寺西、各地の世話人15名が参加
進行:寺西代表
1、 過労死問題の情勢(玉木弁護士)
脳・心臓疾患の労災認定基準の改定に動きがあった。9月中に新しい労災認定基準が通達される。今後、救済枠を広げることが大切である。「時間外労働が直前1ヶ月あたり100時間以上または2~6ヶ月の平均で80時間以上」の基準に変更はない。主張してきた月65時間にならず、残念な結果となった。現行基準に近い労働時間が負荷要因として追加されたが、具体的な数字はなく抽象的に65時間前後を示している。労働時間以外の負荷要因として、勤務間インターバルが短い勤務、休日のない連続勤務などが規定された。
2、 遺族発言のビデオ撮影について
・啓発シンポジウムの遺族発言で活用するビデオ撮影案の相談があった。賛成意見が多かったが、慎重な取り扱いが必要であるため、次年度に検討することになった。
・過労死遺族の心理的なサポートを目的としたオンラインで相談会を開催する。
11/5と11/30は、定員に達し、受付終了。11/24は募集中。
3、 事務局から
・会計:年会費は全17家族会から納入された。
・遺児交流会:8月から12月に変更。17家族が参加予定。
・編集:全国ニュース原稿は期日厳守し早めにお願いしたい。
4、 統一行動について
・2021年度の事務局・世話人(案)を決定した。
・要請行動について
厚生労働省の団体要請書の作成:玉木弁護士にお願いする。
地方公務員災害補償基金本部の要請書の作成:松丸弁護士にお願いする。
個人の要請書の作成:押印、不要。
厚生労働省への要請文は大臣名ではなく厚生労働大臣殿にする。
個人要請は1人3分以内を厳守。要請文の送付は郵送にて10月13日必着。
要請行動、中央シンポジウム、全国家族の会総会への参加者:世話人MLへ連絡する。
5、 その他
・次回の世話人会:2022年1月15日(土)予定
・第84号全国家族の会ニュース
原稿締め切り:9月18日
発行日:9月27日
(書記 兵庫 福永)
各地の報告
北海道過労死を考える家族の会 報告
北海道家族の会では、現在のところ新規会員の入会はありません。
過労死等啓発授業への関りとしては、過労死防止北海道センター内に啓発授業班が出来ました。
家族会より村山が参加させていただき、防止センター幹事の皆様、プロセスユニークのご協力により授業を受け入れて下さる学校探しに力を入れております。ただ、コロナ禍の現状では2校しか決まっておらず、そのうちの1校は7月29日に終わり、残り1校は11月の予定です。
北海道シンポジウムもシンポジウム班が出来、家族会の奈良さんがチーフとして防止センター幹事の皆さんとより充実した内容作成にむけて活動をしています。
労災、地公災基金の解決者は労災1名、基金2名と3名の認定がありました。これは、全国の会員の皆様のご支援によるものと大変感謝しております。
釧路市で基金が認定されたご遺族の民事裁判が開始されたので、裁判傍聴などの支援活動も新しく始まりました。
世話人会は現在まで対面実施ができており、世話人間で情報共有をしながらご遺族に寄り添えるようにと活動をしております。
(村山 百合子)
宮城過労死を考える家族会 報告
宮城過労死等を考える家族の会の会員は、宮城県を中心に近隣の福島県、岩手県、山形県の会員も加入しています。今年度も、新に、福島県と宮城県で会員が増えました。現在、労災認定申請の準備中の方です。被災された方は、どちらの方も首都圏で働いていた20代の若者です。どちらの親御さんも医療従事者のため、外出が職場から制限されていて申請に踏み出せず悩んでいた方です。オンラインでの相談で、仙台の若い弁護士さんも交えて、オンラインを活用しての首都圏の弁護士さんとの相談を重ねて、労災申請を決断されました。これまでのやり方とは違っているので、証拠の収集など手間取っていますが、少しずつ進んでいます。
家族の会の集まりは、昨年の9月の総会から集まれていません。過労死110番への参加、過労死等防止対策推進シンポジウム(宮城、福島会場)への企画協力については、参加のできる会員数名で、細々と進めています。家族同士の交流会などは、昨年から、コロナ禍の影響で集まる取り組みが止まったままです。
(芳賀 直)
東京過労死を考える家族会 報告
東京家族会では、裁判を行う会員が増えています。就職してまだ数年の若い方や、システムエンジニア、海外赴任中など、最近問題となっている働き方の中で被災し、労基署段階では認定されにくい事案ばかりです。特に働き方改革関連法案で長時間労働に罰則規定がついてから労働時間の証明が厳しくなっており、実労働時間が否認されるケースもあります。引き続き皆様のご支援をお願い致します。
11月のシンポジウムでは、会員が経験談を発言されますので、ご無理のない範囲でお近くの会場に足をお運びください。東京家族会の皆さんがお住いの地域の会場は以下の通りです。(他地域と重複で入会されている方・お住まいの地域に家族会のある方はそちらの地域の記事をご覧ください)
11/5 千葉「千葉市生涯学習センター」 11/9 東京立川「ホテルエミシア東京立川」
11/11 群馬「ビエント高崎」 11/15 宮城「エル・パーク仙台」 11/15 栃木「栃木県教育会館」
11/18 茨城「つくば国際会議場」 11/19 埼玉「ソニックシティ」
11/22 岩手「岩手教育会館」 11/26 福島「キョウワグループ・テルサホール」
11/29 秋田「にぎわい交流館AU」 12/2 新潟「朱鷺メッセ」 12/3 山形「山形ビックウイング」
(渡辺 しのぶ)
神奈川過労死を考える家族の会 報告
神奈川過労死等を考える家族の会は6月4日に無事に5回目の総会を迎えました。
大雨の中、zoomと対面のハイブリット方式で行い、会員のほか弁護士の先生方、労働団体の皆さまにもお越し頂き、連帯メッセージも頂くなど、神奈川の会が多くの方々に支えられている事を再確認して、新年度をスタート致しました。
神奈川では、2017年、啓発授業をより教育効果の高いものにするため、家族会、弁護団、労働団体、大学の講師の先生と検討会を立ち上げ、啓発授業のパンフレットを約4年掛けて作成致しました。
パンフレットは以下のように構成しました。
「ステップ1 知る」…過労死って本当にあるの?日本社会における過労死・過労疾患/過労死の現状
「ステップ2 聴く」…過労死で突然大切な人を失ったら…遺された家族はどう動いたか/経験談
「ステップ3 動く」…働く人やまわりの人にできること/職場企業にできること/社会全体にできること
過労死の基礎知識だけでなく、神奈川の遺族等の経験談を「体験」して過労死の重みを感じ、そのうえで強調したのは当事者がただ悲しむだけでなく、家族会を作り、過労死防止対策推進法の制定の道をひらき、現在も協議会に関わるなど、「行動」をしてきた歴史を伝えることです。そして読まれる方にも、自分で何ができるかを考えてもらう材料も提供し(動く)、最後はワークルールを作る・変える行動の重要性もメッセージとしました。パンフレットは、神奈川過労死対策弁護団HPで公開しています。(https://kanagawa-karoshi.net/)。
(工藤 祥子)
長野過労死を考える家族の会 報告
長野家族の会では、毎年10~11月に、いの健長野センターの方々と「長野労働基準局への要請活動」を行っております。
長野家族の会で現在係争中の会員が4人おりますので、その方たちが今まで労災申請や裁判を行ってきた中で、かかわってきた労働基準監督署に対しての想いや意見を出し合いましたところ、次のような意見が出されました。
・過労自死した遺族が、労災申請をするには自死した原因を何も知らない遺族が究明しなければならず、そこには会社の抵抗もあり労災申請することはかなり困難であり、また申請しても認定率は1/3と依然として低い状況にある。だから労災と分かっていても申請をあきらめなければならない人も多い。
・労災申請をしに労基署に行ったとき、「労災申請すると、子供がいじめに会ったりするから申請を考えた方がよい。」とか「労災申請したことを口外するな。」と言われ労災申請をさせない雰囲気が感じられた。労基署も人手不足で労災のように手間がかかる事案は大変なんだと感じた。→職員増希望する。
・現在パワハラの事例が多くなっている中で、今後より積極的に調査をして労災に反映してもらえるよう検討してほしい。等々
遺族からすれば労基署の敷居は高く労基署に行く事すら大変ですが、基準局への要請は、申請者個人ではなかなか労基署に言えないことでも遺族の率直な想いを伝える事ができる唯一の場です。
この要請が、年中行事で終わらないよう少しでも改善されますよう今後の労基署の対応を注視していくことが大切と思っております。
11月17日に長野労働基準局へ要請に行く予定です。
(小池 宣子)
山梨過労死を考える家族の会 報告
山梨家族会は、昨年から対面での会は開かれておりません。通信を毎月発行し、通常会員・通信会員・サポーター121名に郵送しています。
現在、労災申請や裁判等の方はいません。ただ、2件の自治体職員自死事件について、公務災害申請の協力を市会議員と行っています。4月には、弁護士の松丸正先生に来県していだきました。元教員F氏の裁判「小学校長のパワハラ事件」の続きがありました。現役時に勝訴しているものですが、F氏は教員を退職した昨年から「損害賠償金は、税金だ。不法行為をした元校長に責任がある。自治体は元校長に『求償』すべきだ。」という運動を広げました。
家族会はこの運動を支援し、顧問の遠藤敏実さんを中心に、要請署名活動、住民監査請求、そして住民訴訟を起こしました。元校長は「訴訟告知」受けると、求償に応じました。事実上の勝訴です。山梨では、近県の家族会の方に来ていただき、交流会を計画しています。この9月には静岡家族会の尾崎さんにお願いする予定でした。しかし「蔓延防止」となってしまい、延期しています。今後、ZOOMや対面で、交流を進めていきたいと思います。
(深澤 佳人)
静岡過労死を考える家族の会 報告
静岡から、過労死等防止対策推進シンポジウムについて報告いたします。静岡では11月4日木曜日、午後1時よりシンポジウムを行います。会場は静岡の駿府城公園内の静岡市民文化会館 大会議室 ステージのある会議室で行われます。基調講演は天笠 崇氏に基調講演をお願いしました。「ハラスメントから来る労働関係疾患をなくすために」です。
打ち合わせの中で、過労死等関係の精神疾患や自殺、脳心臓疾患を「労働関係疾患」と英訳等から定義されましたので今回「労働関係疾患」という言葉を使いました。遺族の報告は 尾崎が行います。事前配布資料は、今年も厚生労働省の資料、法令の一部、及び家族の報告などを添付いたします。労働局の許可や、労働局の配布用のかがみ文章と厚生労働省のシンポジウムの封筒等を用意していただき、企業、大学、一部高校、図書館等に発送を予定しております。
(尾崎 正典)
名古屋過労死を考える家族の会 報告
名古屋の私立同朋高校放送部の生徒さん達が今から5年前「過労自殺」に興味を持ち、過労自死事件の遺族とその担当弁護士や大学教授の話を聞き、当時の放送部員が取材したものを後輩部員が受け継ぎ2018年に15分程のラジオ番組を作りました。そしてその翌年、取材をもとにした映像ドキュメンタリーが完成。そして今年の7月にそれらの活動をまとめた本を放送部顧問の先生が出版されました。子供から大人になる前の難しい時期に「過労死・過労自死」を生徒さん達なりに考え、1つの作品を作り上げられた事はとても意義ある事だと思います。
名古屋での係争中の事件は、「パワハラ」により精神的に追い込まれ自死に至った事件ばかりです。それを踏まえ今年もシンポジウムでは「パワハラ」に焦点を充てる事にしました。「パワハラ防止法」が施行されてから1年。大企業に防止措置を義務化して何等かの成果があったかを労働局の方にお話をして頂きます。基調講演は川人博弁護士。遺族発言は電通事件の高橋幸美さんにお願いをしました。
コロナがおさまり沢山の方が感染を気にせず参加して下さることを、願うばかりです。
(伊佐間 佳子)
京都労災被災者家族の会 報告
京都の家族の会では、コロナの影響で通常の活動ができていません。Aさんの息子さんの闘いが続いています。息子さんは過労自死です。Aさんは苦労して、労災申請がようやくできて、遠からず結果が出そうということを聞いてから1年が経ちました。ようやく昨年末に労基署から業務上という決裁が出ましたが、遅すぎました。Aさんの気持ちを考えるとよかっただけでは済みません。上司や会社に対するAさんの怒りは強く、春には損害賠償を求めて提訴しました。裁判が始まっていますが進展はまだありません。会社は、遺族の求める謝罪や職場改善に早急に行なってほしいと思います。
第7回過労死防止京都連絡会の総会が5月に開催されました。寺西代表が過労死防止大綱や20年ぶりの過労死の認定基準の改訂などについて講演されました。過労死ゼロを目指し、力強い闘いが行なわれていることが理解できました。7月の「京都働き方集会」でも、寺西代表の講演がありました。
困難な時代にあっても、助け合いながら、一つひとつの闘いを支える、過労死ゼロを社会に訴えること、家族の会の原点を見失わず、進んでいきたいと思います。
(中嶌 清美)
大阪過労死を考える家族の会 報告
8月21日にZoomによる「2021年度定期総会」を開催いたしました、議事終了後の基調報告において、松丸正弁護士より『脳・心臓疾患認定基準の改正について』・岩城穣弁護士より『過労死防止対策新大綱の改定について』、ご解説頂きました。特別報告においては、全国過労死を考える家族の会代表寺西笑子氏より『WHO・ILOによる長時間労働における研究発表について』お話を伺いました。
第二部の参加者交流会では、始めに認定と民事解決された5名の会員の報告を行い、そのうち参加されていた1名の認定者から「2度目の労災不支給決定を受けましたが、再審査請求の結果、4年目でやっと認定が認められ、諦めなくて良かったです」とご報告をいただきました。講演、会員交流ともに、とても有意義な時間となりました。
これまでの被災当事者及び遺族の苦悩の闘いが、認定を広げたことや今回の脳・心臓疾患労災認定基準改正の必要性を学びました。近い将来、過労死等防止対策推進法の新たな大綱の下、企業が過労死に至らない職場環境を整え、健康に働き続けることが出来る労働者に配慮された社会の実現を願います。
(西岡 佳恵)
兵庫過労死を考える家族の会 報告
2016年6月24日、私の息子、前田颯人は若干20歳にして自死をしてしまいました。高校を卒業し、入社した神戸を代表する老舗製菓会社での上司からの執拗なパワハラと超過勤務による投身自殺でした。
入社2ヶ月目、挨拶無視から始まったパワハラは日を追うごとに酷くなり、鬱を発症した頃は時間外労働が89時間から109時間。まともな昼食さえ取れませんでした。その後パワハラの供述してくれた同僚達に加え、たくさんの方々の署名などの支援もいただき労災と認定されました。
労災認定された後も会社側は長時間労働やパワハラなどなかった、と言い続けてきましたが、調査が進むうち会社側の認識の甘さ、嘘などが明るみになり5年もの歳月を要しましたがやっと全ての非を認めるに至りました。
やっと息子の尊厳を守ることができ、示談という形で解決ができた事はきっと幸いなのでしょう。けれどやはり喜ぶ事はできません。笑顔で語れる息子はもうどこにもいないから。
ただ、ここまで辿り着くことができたのはたくさんの方々が心に寄り添ってくださり、労災申請時の署名や、その後の会社との交渉など、数々の場面でご協力、ご支援のおかげです。本当にありがとうございました。
(前田 和美)
岡山過労死を考える家族の会 報告
岡山過労死を考える家族の会は、昨年からの新型コロナウィルスの流行によりこの2年間全く総会や懇親会などを行うことが出来ず、会としての機能がほとんど停止しています。それでもメールや電話などで連絡が取れる会員もおり、何とか岡山過労死を考える家族の会としての情報のやり取りが出来ております。
岡山でも新型コロナウィルスが猛威を振るい、緊急事態宣言が出され、今では蔓延防止等重点措置が取られ、新型コロナウィルスの終息が全く見通せない中、今年も岡山においても過労死等防止対策推進シンポジウムが行われます。日時は11月25日(木)14:00~、場所は岡山国際交流センター国際会議場です。講師は大阪の弁護士生越照幸先生に「職場のパワーハラスメントについて」講演して頂き、遺族の訴えとしては神奈川過労死を考える家族の会の渡辺淳子さんにお願いしています。お二人の講演は興味深いものがあり、今現在の過労死・過労自殺・ハラスメント・過重労働による事故などを包含していますので、11月25日(木)に岡山によられる方は是非来場して頂ければ幸いです(但し、ネット予約のみです)。
新型コロナウィルスの流行が無ければ、普段通りだと、シンポジウムが終わった後、講師の方を交えて夕食懇親会をして更に詳しい話をお聞きするのが慣例でしたが、それが実現できる日は先のようなので残念でなりません。
(中上 裕章)
山陰過労死を考える家族の会 報告
2021年5月31日松江地方裁判所で判決がありました。『主文 処分行政庁が、平成27年1月16日付けで原告らに対して労働者災害補償保険法に基づく遺族保険給付を支給しないとの処分を取り消す。』と裁判長から発せられたのです。この裁判は、「山陰過労死等を考える家族の会」代表の高木栄子様の長くて辛い裁判闘争の判決結果だったのです。判決を聞いて喜びも束の間、『控訴期間(2週間)があります』と言われ戸惑いましたが、全国過労死を考える家族の会の皆様からの最大とも云えるご指導とご協力によって行動全開、結果として国及び会社側が控訴断念して完全勝訴を勝ち取りました。全国の皆様、改めて感謝とお礼を申し上げます。ありがとうございました。
高木代表は、『18年間、本当に苦しかったですよ。私は一人で想い閉じこもっていた時、自死遺族の会を知り語り合いをする中で息子の死は労働災害と判断し、裁判闘争手続きを行いました。一方で自死への風評は、葬儀や法要時には自死結果を知っている地域の住民からは、耐えられない言葉をかけられました。今回の判決を報道で知ってどう思われているだろうか、理解してもらえただろうかと思う時もありますが誰も何も言いません。裁判で勝っても息子は生存していないのです。気が晴れることは全くありません。』とお話しされました。
私は証人尋問を傍聴しました。証言台に立った被告人(当時の社長)は被災者の残業認識を問われた時、『高木君は責任感が強いから、自分勝手にやっていたこと』と平然と嘘を述べていた時は唖然としました。これが経営者の逃げ道だと苛立ちを持ちました。
(三浦 一雄)
東四国過労死を考える家族の会 報告
「労災申請時効停止」
昨年、過労死防止学会会員の高橋昌尚さんが東四国過労死等を考える家族の会に入会されました。平成14年1月勤務中(過労とパワハラ)のため救急車で病院に運ばれました。「労災申請時効停止」までの内容が理解できたのはつい最近の事でした。第三者に理解を求めるのは非常に難しい事案だと思いました。名刺に自分の被災内容を添えて周りに配れば、たくさんの人に知ってもらえるかもしれないと提案しましたが、過去の苦しい時の自分と向き合わないといけないためか書けないようでした。
平成14年~平成18年の5年間、毎年香川県丸亀労働基準監督署に労災申請に行きましたが、「そんなん労災でない」「うちは関係ない」と申請すら受け付けていただけませんでした。平成19年「時効です。労災申請はできません。」と言われました。髙橋さんの被災による病名は「パニック障害」「うつ病」「社会不安障害」です。丸亀労働基準監督署にずっと訴えてきました。令和2年、丸亀労働基準監督官の後藤さんが「平成14年から全ては無理だが調査しましょう」と動いてくれて「労災申請時効停止」となり、被災から18年、時効から13年たってやっと労災申請できました。しかし、労基署は何をどう調査してくださったのか…令和3年8月、労災認定なりませんでした。
高橋さんの被災内容は、ひとまず、文章を書くのが苦手ではありますが、私が本人から聞き取ったものを代筆しましたが、関心を寄せてくださる方がいらっしゃれば、一度読んでいただき加筆修正をしていただきたく、ご協力をお願いいたします。
髙橋さんに救いの手が届くように願っています。
(大島 照代)
四国過労死を考える家族の会 報告
2021年もコロナの影響で、大学での啓発授業が出来ていない状況です。
今後の予定
9月高知大学・・・昨年の録画を利用しての授業開催予定
10月松山大学・・・現状、対面形式を予定(昨年はネット配信)
11月愛媛大学・・・過労死防止シンポ(啓発授業とのコラボ)
1月以降高知大学にて2回目の啓発授業予定
9月の過労死防止学会においても啓発授業についての分科会が初めて開催され必要性の再確認ができた事と思います。今後、家族の会においても発言を担う方をどのように探していくかが課題であり、個人間のつながりではなく組織としての体制つくりも重要ではないかと考えます。
その他として9月にネットでのわかちあいの会開催についてのセミナーを受講し、新たな道筋をと思っています。2年前より開催できていない状況です。開催場所も含めて、再度、来年度の再開のめどをたてられたらと思っています。
(久保 直純)
福岡過労死を考える家族の会 報告
7月29日に福岡遺族交流会(zinniaの会)を実施しました。感染症対策のためオンラインでの会になりましたが、遠方からの参加も含め、5名の方にご参加いただきました。参加者さまから寄せられた感想をご紹介します。
コロナ禍のなか、オンラインでの開催とても嬉しかったです。子育てと日常生活、日々過ぎていく中で自分の気持ちがいつもいいわけではありません。誰かに話したくても、同じ経験をしている人がいるわけもなく…昨年はすべての行事が中止。子どももとても残念がっていました。
オンラインで顔を見ながらいろんな気持ちを話すのは、とてもよかったです。
他の方のお話を聞いていても、「私だけじゃないんだ」と思うことがあり勇気をもらいました。ありがとうございました。(福岡家族会会員)交流会は今後も開いていく予定です。
同じような経験をした者同士が集うことで、想いを吐露でき、ほんの少しでも肩の荷を下ろして、ほっと一息つける場になれたらと思っています。 《福岡家族会今後の予定》2021年11月5日 過労死防止対策シンポジウム
(安德 晴美)
東九州過労死を考える家族の会 報告
コロナ禍で、会員同士の交流はできていませんが、過労死防止シンポジウムの話し合いや九州セミナーの打ち合わせは、3月から現在まで、5回の会議を行っています。ZOOMによる会議が主ですが、7月1日には、コロナ感染ゼロが続いていたこともあり、宮崎の関係者と対面して久しぶりに交流することができました。この交流会では、元ファミリーマート経営者の高橋さんの裁判の状況をお聞きすることができ、引き続き支援していくことを全員で確認することができました。
東九州家族会のご遺族で、現在闘っておられるのは、損害賠償請求裁判を闘っておられる長崎のご遺族だけなのですが、遠方のため、私が裁判傍聴支援をすることが難しく、申し訳なく思っています。
メールを通して近況をお聞きすることしかできませんが、遺族同士、気持ちの共有ができるようシンポジウムの機会を利用して、お会いできるよう計画しているところです。
(桐木 弘子)
2021年度全国過労死を考える家族の会の
統一行動タイムスケジュール
◆ 1日目日程:11月10日(水) 要請行動~啓発シンポジウム
9:50 集合、打ち合わせ会場:弁護士会館 5階
10:00~ 基金本部へ移動。
10:10~ 厚生労働省へ移動。
10:30~ 厚生労働省・地公災基金本部要請 開始
10:45~ 厚労省前へ移動
12:00~ ビラ撒き宣伝行動:厚生労働省前。
12:30~ 厚労省前~イイノホールへ徒歩移動→各自昼食
14:00~(13:30開場)啓発シンポジウム開会
17:00 ~ 終了
◆ 2日目日程:11月11日(木) 全国過労死を考える家族の会総会
時間 9:30~12:00
場所 平和と労働センター・全労連会館 3階(304+305)
全労連会館アクセス
※コロナ感染防止のため制限があります。参加の申込みは、事前に各地の代表へご連絡ください。
全国過労死を考える家族の活動
【主な活動報告】
4月 1日 全国過労死を考える家族の会ニュース第83号発行:全国家族の会
4月 3日 過労死弁護団全国連絡会議拡大幹事会:東京丸の内+オンライン(参加・挨拶)
4月 17日 全国過労死を考える家族の会(臨時)世話人会:WED会議(zoom)
4月 20日 第1回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
4月 24日 第1回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
4月 27日 過労死等防止対策推進協議会委員準備会議:WED会議(zoom)
5月 1日 第1回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
5月 19日 WHO・ILOの長時間労働による死亡に関する発表についての記者会見:厚労省記者クラブ
5月 21日 第2回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
5月 24日 過労死等防止対策推進協議会委員準備会議:WED会議(zoom)
5月 25日 第20回過労死等防止対策推進協議会:TKP 新橋カンファレンスセンター + WED会議
5月 25日 第2回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
6月 1日 過労死等防止対策推進協議会委員準備会議:WED会議(zoom)
6月 9日 過労死防止を考える議員連盟総会:参議院会館
6月 22日 過労死等防止周知啓発事業準備会議:WED会議(zoom)
7月 2日 第3回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
7月 11日 第2回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
7月 17日 過労死防止全国センター総会:WEB会議(zoom)
7月 24日 全国過労死を考える家族の会世話人会:WEB会議(zoom)
8月 6日 第4回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
8月 26日 第3回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
9月 4日 全国過労死を考える家族の会世話人会:WED会議(zoom)
9月 11日・12日 過労死防止学会第7回大会:愛知労働会館&オンライン
9月 18日 第3回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
【主な活動予定】
9月 28日 第4回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
10月 1日 過労死弁護団全国連絡会議総会:石川県&オンライン
10月 11日 第5回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
11月 10日 午前、全国過労死を考える家族の会要請行動:厚生労働省、地公災基金本部
同日 午後、過労死等防止啓発シンポジウム中央会場:(霞が関)イイノホール
11月 12日 全国過労死を考える家族の会総会:全労連会館
毎年11月は、「過労死等防止啓発月間」 です!
過労死等防止対策推進シンポジウムは、47都道府県48会場(東京は2会場)で開催。
カンパのお願い
家族の会は皆様のカンパを主な活動原資として活動しています。
カンパのご協力をよろしくお願いします。
ゆうちょ銀行 店名 〇五八(ゼロゴハチ) 店番 058
預金種目 普通預金 口座番号 3713219
口座名義 全国家族の会(ゼンコク カゾクノカイ)
【発行】全国過労死を考える家族の会(2021.9.27発行)
【事務局】東京駿河台法律事務所内 TEL. 03-3234-9143
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町二丁目3番1号 岩波書店アネックス7F