全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第92号

施行10年、過労死等の教訓を防止策に生かすことが遺族の願い

11月恒例 全国過労死を考える家族の会第37回統一行動をおこないました。

1日目、午前は、厚生労働省および地方公務員災害基金本部へ要請をおこないました。厚生労働省要請は、玉木弁護士、梶山弁護士、岡村弁護士に参加いただき、地方公務員災害補償基金要請は、松丸弁護士、青柳弁護士、大辻弁護士に参加いただきました。いずれも過労死弁護団全国連絡会議と全国過労死を考える家族の会の団体要請書と個別事案を渡し、早期の認定と過労死防止策を求めて約1時間要請しました。(詳細は3頁に掲載)

終了後、厚生労働省前にて宣伝行動をおこない、玉木弁護士から過労死問題をめぐる情勢と要請行動についてご報告いただきました。続いて個別要請者3名から各事案を訴え、最後に寺西から過労死の現状と防止を訴えで終了しました。

午後から、過労死等防止対策推進シンポジウム・東京中央会場(イイノホール)に参加しました。今回、過労死防止法の施行10年を記念して、いつも開会前、CDで聴いているマー君の歌「ぼくの夢」を今回、ダ・カーポさんの賛助出演により爽やかなハーモニーの生演奏でオープニングを飾っていただきました。

続いて、主催者と議員から挨拶があり白書の報告に続いて、協力団体の過労死防止全国センター共同代表の川人弁護士から過労死事件の現状と対策など学びました。(詳細は4・5頁に掲載)

前半プログラムの最後は、過労死遺族4名から体験談が語られました。転勤後の仕事量など変化により教員だった夫を亡くされた妻。海外赴任先で専門外の配置転換のアクシデントによる過重労働でご子息を亡くされた母親。職場いじめパワハラを受けた奥さまを亡くされた夫。転勤後、仕事内容と仕事量の変化によりご子息を亡くされた父親でした。ご遺族から被災されたご本人の無念と大切な家族を亡くした苦しみを切々と語られ、劣悪な労働環境の実態と今後につなぐ教訓を語られました。
貴重な意見を報告します。

「慢性的な多忙で過重労働の改善を抜本的に見直し、健康で安心して働くことができる社会を」「労働時間管理、渡航先の生活習慣の違いなど、社員のメンタル管理の取組を」「過労死を出した原因・問題点を考え改善案を作成し、二度と犠牲者を出さない決意と再発防止策を社会へ発信することが企業の社会的責任」「時間外労働が100時間超だった。時間外労働をしないと仕事が回らないことが問題だ」「時間外労働の自己申告制で歯止めがかからない」「過労死の悲劇が二度と起こさないよう会社の再発防止策を厳しい目で見据えていく」

亡くなられた命を無駄にしないために、過労死等の教訓を防止策に生かすことが遺族の願いです。

(代表世話人 寺西笑子)

2024年度 全国過労死を考える家族の会総会報告

日時:2024年11月7日(木)午前9時30分~午後12時(総会・交流会)
場所:KKRホテル東京 会議室
参加者:31名(代議員21名、オブザーバー参加8名、顧問弁護士2名)

寺西代表世話人の挨拶で始まり、全国家族の会30周年記念誌が11/1発行され、過労死等防止対策推進法が施行10年になる報告された。その後、議長(小池)、書記(工藤)選出。活動報告、決算報告、会計監査報告、予算案、2024年代表世話人、事務局選出など、すべての議案は挙手をもって採択承認された。

2024年度代表世話人 寺西【京都】
各地家族の会
【北海道】村山【宮城】大泉【山梨】深澤【長野】吉田【東京】渡辺【神奈川】工藤
【静岡】尾崎【名古屋】伊佐間【京都】 【大阪】小池【兵庫】福永【岡山】中上
【山陰】高木【四国】久保【東四国】 【福岡】安徳【東九州】桐木
  
事務局:
寺西(活動全般・資料作成全般)
桐木(会計)
福永(会計監査)
伊佐間(会計監査・編集)
小池(厚生労働省要請担当)
工藤(地方公務員災害補償基金本部要請担当)
中上(全国ニュース編集・総会資料作成)
渡辺(遺児交流会) 
              
その他 :次回総会において規約改正をおこなう。

(事務局)

要請行動報告

厚生労働省への要請報告

厚生労働省要請は、玉木弁護士と寺西代表はじめ、18名の参加でした。
厚生労働省からは、労働基準局総務課課長、補償課、監督課、認定対策室など。計14名の出席でした。

最初に、寺西代表から第37回目要請のお礼を述べ団体要請書と個別要請を渡しました。今回の要請者は、家族の会から5名、過労死弁護団から2名の計7名でした。例年より少ないことで落ち着いて話すことができ、玉木弁護士からも丁寧な内容説明をしていただくことができました。要請者は、過労自死事案が3件、パワハラによる精神疾患が1件、脳・心臓疾患死亡事案が2件、精神疾患労災認定後の行政対応への要請が1件でした。

要請後課長から、労災認定についていまだ改善とは言えない状況であり、今後も過労死防止に取り組んでいく必要性がある。各労働局へ伝えていくとお約束いただきました。さらに、過労死遺族・当事者の沈痛な思いにも言及されたことに、あたたかい配慮を感じました。

玉木弁護士からは、「精神疾患の労災申請者数が毎年増加していることに対し、精神疾患への周知が進んだためとの理由だけとは考えられない。脳・心臓疾患の申請者の増加は、そのような年齢の労働者が増えているとの説もあるが、増加人数はその考えには合致しない。過労死防止を取り組むためには、昨今の申請者数増加を問題と考える必要がある。」と問題提起されました。

最後に寺西代表から、「本日、申請者の企業名には、かつて過労死事件を起こした名だたる大企業が含まれている。法令遵守の意識不足の表れではないか。引き続き職場改善の指導強化し、過労死防止対策と被災者救済をお願い致します。」と要望されました。

(大阪家族の会 小池江利) 

地方公務員災害補償基金本部要請行動

11月6日今年で第37回目となる地方公務員災害補償基金要請を行いました。家族の会から要請者3名含め参加者11名で要請しました。

基金側からは、総務課次長、補償課(調査役困難事案担当)、企画課の3名の方が対応くださいました。

先ず要請者それぞれから過労死に至った経緯やその要因が話されました。市役所職員であった男性は公益通報したが、その後職場の配慮がなく死に追いやられた。若い消防隊員は長期間の超過酷な訓練の末致死性不整脈により突然死。認定はされた事案ではあるが中学校教員であった男性教諭の遺族からは、職場の配慮がなく生徒指導他全てを任され慢性的な多忙からの極度の疲労とストレスからの自死。どなたもまじめに仕事をされていたが職場の安全配慮がなされなかった。要請遺族は皆、適正な判断による早期救済をと求めました。

松丸弁護士より全体に関わる要請でも重ねて、各支部段階でストップしないように申請が上がった段階で速やかに調査するよう本部からも指導するようにと要請していただきました。

認定された遺族からは公務災害の発生を未然に防止するための防止対策事業も基金の重要な業務の一つとして制度化されている。是非とも実行していただきたいと要請されました。

また、基金側からは、過労死ライン80時間にならなくても、その他負荷要因を考慮して判断していることの説明がありました。 

最後に、基金本部へ基金のホームページに過労死等の防止のためには勤務時間の適正把握の重要性を啓発する記事を発信するとともに、過労死等の被災者・遺族の訴えを過労死白書同様に掲載するよう家族の会から今年も強く要請しました。

(福岡家族の会 安德晴美)

過労死等防止対策推進シンポジウム報告

東京中央会場報告
【A会場報告】

11月6日13時45分~17時、厚生労働省主催、イイノホールに於いて開催されました。(216名参加)
本年11月は過労死等防止対策推進法が施行されて10年を迎えたことで、開会前の15分間はダ・カーポさんに賛助出演をいただき、過労死遺児マー君の詩を歌にした「ぼくの夢」と「野に咲く花のように」を生演奏で歌われ記憶に残るオープニングになりました。

シンポジウムは、福岡資麿厚生労働大臣の挨拶で始まり「過労死等防止について考える議員連盟」の田村憲久会長から過労死をなくしていく力強い挨拶をいただきました。次に厚生労働省より過労死等防止対策白書の報告があり、続いて過労死等防止対策推進全国センター代表幹事・川人博弁護士から民間労働、公務職場、教員、芸能分野などの事例報告があり、パワハラと労働時間の過少申告が根強いことで実態に即した労働時間を認定することを指摘されました。前半の最後、4名の過労死遺族から大切な家族を亡くした辛い体験が語られました。生きているときに救えなかった自責の念や過労死の悲劇を繰り返してはならない願いを込められた訴えが心に響きました。

A会場の後半は、須田洋一弁護士から「ビジネスと人権」を通じた労働環境の改善と題して講演いただきました。ビジネスによる人権侵害を止めるため、2011年にビジネスと人権に関する指導原則が策定された。指導原則とは国家と企業と双方に定められ企業を監督する責務を負っていることや救済原則も定めている。日本の労働環境の問題として、長時間労働、サービス残業による未払い賃金やパワハラ、セクハラなど過労死問題につながることが指摘され、ビジネスと人権の見地から労働環境を改善することで企業にとってプラスに影響することもあると話されました。

最後に、寺西より「しごとよりいのち」をアピールし働く意識を変えることを訴え、閉会しました。

(代表世話人 寺西笑子)

【B会場報告】

B会場は津野香奈美氏が『パワハラの発生は予防できるのか?過労死のない社会を目指して』という演題でお話されました。パワハラを受けると身体面にも、精神面にも影響があり、ハラスメントがある職場では組織全体も不調になるそうです。

また、パワハラ行為の原因となる「期待水準の高さ」「怒り」はその人の価値観から生成されており、相手に押し付けないことが大切であると述べられました。過剰なストレスはパワハラを誘発し人を疲弊させるそうで、過労死が発生する職場を連想しました。モチベーションが高く働ける職場環境を作ることがパワハラ防止と生産性向上を両立させるコツである、と締めくくられました。

(東京家族の会 渡辺 しのぶ) 

【C会場報告】

C会場では、「物流の2024年問題と物流改革」と題し、流通経済大学矢野裕児先生からご講演いただきました。2024年問題での長距離ドライバーの働き方の例を挙げていただき、今後もより一層の人手不足の中、地域によっては生鮮品の輸送日数が長くなることや、繁忙期に運べない地域が発生する可能性をご説明いただきました。これまで、過重労働により持ちこたえていた物流だが、今後は、ドライバー不足解消のためには、労働時間短縮・ドライバー年収確保・仕事内容の見直しなどの問題点を改善し、消費者は、過度な利便性、品ぞろえ、鮮度を求め、物流に負荷を掛けないよう考え直す必要があると学びました。         

(大阪家族の会 小池江利)

北海道過労死等防止対策推進シンポジウム報告

北海道は、2024年11月27日(水)午後JR札幌駅近くのアスティホールにて90名の参加で【カスタマーハラスメント】についてでした。奇しくもシンポ前日の11月26日(火)に北海道カスタマーハラスメント防止条例が制定されました。

基調講演は、関西大学社会部教授 池内 裕美先生から「カスタマーハラスメントの現状と課題:企業が取るべき対策とは」について、たくさんの資料と先生の軽快なテンポでの説明であっという間のⅠ時間でした。

池内先生の講演のあとに、東京家族会会員の山口 勝彦さんにご自身の体験をお話しいただきました。北海道の会員での体験発表を当初は予定していたのですが、体調不良で参加出来なくなり、山口さんも体調不良の中でしたが、お引き受け下さり無事に開催出来ました。地域家族会ネットワークの重要性を改めて感じています。山口さんの体験談は、弁護士も驚く凄まじい体験でした。その後、パネルディスカッション「現場に寄り添うカスタマーハラスメント対策を考える」で、池内先生、被災者、弁護士の立場から討論しました。大変内容の濃いシンポジウムでした。

(北海道家族の会 村山百合子)

宮城過労死等防止対策推進シンポジウム報告

宮城のシンポジウムは11月5日に開催され、80名程の参加がありました。
今年は、初の試みとして開催時刻を16時からに設定していただきました。

POSSE代表今野春貴さんによる「日本の職場における過重労働・ハラスメントの構造と課題」と題する基調講演が行われました。今野さんは、「過労死対策が企業・産業医・行政により急速に進んでいるが、それは被害者の訴えが「被害」そのものの存在を社会に問いかけた結果であり、自然に実現したものではない」と強調しました。「過労死白書」から見える過労死対策の実状については、90年代に過労死問題が取り沙汰されるようになって以来、正社員の労働時間はほとんど減っていないこと、週49時間以上の労働をしている労働者の割合は男女合わせて21.3%と先進国の中で最悪の数字であること。

過労死を起こさない社会に向けて市民ができることとして、被害にあっている労働者に気づくこと。労災申請や賠償請求を支援すること。過労死被災は「自己責任」ではないことを伝えるなどが必要だとして、市民の力で過労死のない社会を実現することの大切さを訴えかけました。

(宮城家族の会 大泉淳子)

東京過労死等防止対策推進シンポジウム報告

東京会場のシンポジウムは11月25日江東区で開催され約140名の参加者がありました。

基調講演は職場のハラスメント研究所の金子雅臣氏による「パワーハラスメントー職場内解決技法ー」でした。金子氏はハラスメントがおこった職場に関わった経験から、ハラスメントとわかっていても、避けたり、触れないようにしている職場もあり、本人も組織の和を乱したくないとか、問題を大げさにしたくない、解決への期待がないなどと思い、相談窓口に行かないこともあり、ハラスメントが表面化しない一因となっているそうです。ハラスメントは通知・調停・調整・調査が大切だが、指導や叱咤激励とハラスメントの境界があいまいなため、単純に白黒つけられない、という一面もあるということでした。

体験談ではお子さんを過労死で亡くされた3人のご遺族が過労死に至るまでのひどい労働実態と子どもを失った親の悲しさ・苦しさ・辛さを訴えました。また取組事例の紹介では全日本建設交運一般労働組合の石塚和氏が、今問題となっているトラック運輸産業の長時間労働の実態や物流業界の2024問題についてお話されました。                       

(東京家族の会 渡辺しのぶ)

神奈川過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月1日、横浜市技能文化センターにて、神奈川のシンポジウムが行われました。当日は130人ほどの方々にご参加頂きました。

基調講演では過労死防止調査センターの久保智英先生より「疲れたら休む、休める、休ませる社会の実現に向けてのご講演を頂き、休むことの大切さと共に、休める職場環境の大切さも考えさせられました。

遺族発言では、神奈川の会員さんで教員のご遺族の方が「その仕事は命より大切かを、今一度考えて下さい」と、ご自身の経験から会場の皆さまに、とても重い問いを投げかけました。そして、神奈川の会員の安部さんご夫妻と山岡弁護士による、過労自死されたご子息の会社である東芝ソリューションズと被災後に様々な話し合いを重ね、会社が2度とこのようなことが起こらないようにと「再発防止」に取り組まれている内容などをお話頂きました。2度と大切な人は戻りませんが、企業が悲劇を真摯に受け止め、死を無駄にしないように再発防止に取り組むことは、遺族にとって大変勇気付けられました。大変貴重なお話で、このような取り組みが広がることを切に願います。

(神奈川家族の会 工藤幸子)

長野過労死等防止対策推進シンポジウム報告

長野会場は、11 月 8日(金)松本市のキッセイ文化ホールにて約80人の参加で開催されました。基調講演は「過労死の実情と求められる防止策」と題して、弁護士白神優理子先生よりお話を伺いました。実際に関わられた過労死事例ごとに原因と問題点をあげ、どうすれば防止することができたのかを述べられました。被災された方の悲惨な職場状況、遺族の悲痛な声が聞こえてくるようでした。今回は質疑応答の時間を長く取り、多くの質問に熱心にお答えいただきました。

遺族発言は高橋幸美さんより、大手広告代理店に勤務されていた娘さんの過労自死についてお聞きしました。違法な長時間労働とハラスメントの実態をラインのやり取りの画面でお聞きし、大手という名の下に人を人として見ていない会社なのだと憤りを覚えました。最後に「過労死・過労自殺を根絶し、誰もが健康でやりがいをもって働き、幸せに生きられる国になることを心から願います」と訴えられました。終了後、家族の会 11人といの健の皆さん7人で交流お茶会をしました。シンポジウムの感想や、久しぶりの再会があり、有意義な時間でした。

(長野家族会 吉田惠美子)

山梨過労死等防止対策推進シンポジウム報告

山梨では11月26日に開催されました。89人で、これまで最高の参加者でした。

山梨労働局労働基準部から挨拶をかねて、現状の報告がありました。

基調講演では、労働衛生コンサルタント・原島浩一氏から「長時間労働で脳・心臓疾患の発症リスクは3倍」「会社の衛生委員会へ問題点の抽出と積極的な意見や勧告」などでした。事業主にとって経営上の発展にも繋がる内容でした。企業からの事例紹介では「時間外労働の削減、企業としての取り組み」が報告され、信頼し合える職場環境づくりの実践を含め、従業員の満足度は企業発展の要だとありました。

長年、山梨家族会の助言者的立場で関わっていただいている社労士の冨永弘徳氏から「過労死遺族の労災請求」で具体的な状況の報告がありました。遺族年金申請の相談時に「労災になるのではないか」から始まり、特異な勤務状況、携帯電話の通話記録から時間外勤務超過が認められたということでした。

事業所の防止対策等に関連して企画されています。経営者や従業員、公務職場等の人事管理者が増えています。官民挙げて、取り組んでいきたいと感じました。

(山梨家族の会 深澤佳人)

静岡過労死等防止対策推進シンポジウム報告

静岡過労死等防止対策シンポジウムは11月6日浜松市中央区のプレスタワーで開催されました。参加者60名に実行委員10名参加しました。

静岡労働局より白書の説明があり過労死等防止のためのデータ解析が進んでいること、業者別拘束時間の平均値、納期に困難のある受注、価格転嫁できていない比率の実態の現状など多くの驚くべき資料を提示されました。労働災害の発生状況や対策実施状況などが説明されました。

地元企業の過労死防止対策の取り組みをヤマハ(株)産業医の山本様に紹介していただきました。80時間以上の時間外労働者は全員産業医より面接指導が義務化されていて80時間以上の超過者が激減していること、逆に利益は増加していること。休業後の回復も87%にもなるとの報告でした。講師の東海林様の講演は非正規、人材雇用による本質的労働条件の劣化、過酷な労働実態への警鐘を痛烈に批判していただきました。涙の流れる講演内容でした。

家族の会では4件の事案の報告の中で6か月間の中で4日だけの休日取得の食品会社の管理職の事案が涙を誘いました。「労働により家族が幸せになるのが大切で、わずか半年で大切な人生を壊してしまった過重労働をとめなければならない。」との奥様の悲痛な願いを紹介しました。

(静岡家族の会 尾崎正典)

愛知過労死等防止対策推進シンポジウム報告

愛知会場は、2024年11月12日に名古屋市中小企業振興会館にて行われました。

基調講演は、津野香奈美先生より「パワハラの発生は予防できるのか?過労死のない社会を目指して」というテーマでお話しいただきました。「ネガティブなフィードバックはポジティブな結果をもたらさない」仕事中に怒ることはNGでも、叱ることは成長させるために必要なことと考える人もいるかもしれませんが、仕事の生産性を上げるには、ポジティブなフィードバックが必要。叱ることによる利益を得るのは叱る側。仕事をするうえで過度なプレッシャーや人格否定は必要ないとのことでした。パワハラの原因となる怒りは自分自身の価値観から生成されるもので、相手の事情や立場にたって考えることが重要ですし、過重な労働環境がパワハラを誘発するため、職場環境を整えることも重要だということも改めて認識させられました。

その後の遺族発言では、まさにパワハラの悪い例との言えるような遺族の無念の思いを聞き、胸を打たれました。こうした思いをする人をなくすためにも、働く人皆に津野先生の講演内容が浸透し、過重労働も「パワハラ」という言葉も無くなってほしいと強く感じました。

(名古屋家族の会 M)

大阪過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月18日、過労死等防止対策推進シンポジウム大阪会場が、JR大阪駅直結のグランフロント大阪で行われました。参加者は、181名でした。開会挨拶後、「大阪労働局の取組」が報告されました。

岩城穣弁護士からは、「過労死防止大綱2024年改定のポイントと活用方法」をご説明いただきました。
基調講演は、関西大学社会学部 池内裕美教授から「カスタマーハラスメントの現状と課題:企業が取るべき対策とは」について、具体的なカスハラの分類、それに適した対応などご講演いただきました。苦情の社内対応ルールやマニュアルを作成することが重要であると話され、従業員の孤立を防ぐためには、横のつながりの維持・強化が大切で、“カスハラに関する語りの場、相互理解の場”を設け、定期的な開催が有効的であることと、ハラスメントへの意識を喚起するために研修の実施も提案されました。

遺族発言は、それぞれに息子さんを亡くされた遺族2名の訴えでした。2事例とも長時間労働と大きなストレスを伴った仕事内容で、理不尽な働き方により子どもさんを亡くした無念な気持ちが伝わりました。その後、松丸正弁護士の閉会挨拶で終了しました。

(大阪家族の会 小池江利)

兵庫過労死等防止対策推進シンポジウム報告

兵庫県のシンポジウムは、11月22日(金)、神戸市産業振興センターのハーバーホールにて開催されました。参加者は約250名、2019年以来5年ぶりに200名を超えました。

基調講演は、高橋正也氏(労働安全衛生総合研究所 過労死等防止調査研究センター長)の「健康に働くには何が必要か」でした。「健康の源は働かない時間(睡眠時間と自分時間)だが、日本人は睡眠時間が世界で一番短い。勤務間インターバルが重要」「長時間労働やパワハラを放置している企業は、社会的責任を取っていると言えるのか」とのお話に、本当にそうだとうなずきながらお聞きしました。

また、労働局の報告、笹尾智隆氏(兵庫産業保健総合支援センター メンタルヘルス対策促進員)の講演「職場におけるハラスメント対策」、企業の事例発表、医師の息子さんを亡くされたご遺族の発言、いずれも貴重なお話でした。

兵庫家族会は、過労死等防止対策推進兵庫センター、労働局、兵庫県、神戸市、労働団体と共に、準備会、シンポジウム前の記者会見、街頭宣伝に参加しています。今後もより良いシンポジウムとなるように、皆で協力したいと思います。

(兵庫家族の会 福永)

岡山過労死等防止対策推進シンポジウム報告

岡山では、11月19日にイオンモール岡山内のおかやま未来ホールにおいてシンポジウムが行われました。

先ず、岡山労働基準監督署長の犬塚浩司様より挨拶が行われ、基調講演は労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センターセンター長の高橋正也様より「健康に働くには何が必要か」と題して講演が行われ、物理的・化学的・生物学的・人間工学的・心理社会的な環境を調整し、リスクを減らすことによって健康に働けることができることを説明され、特に、十分な睡眠時間の確保が重要であることを訴えられました。

次に過労死問題をテーマにした落語「エンマの願い」を笑福亭松枝様による噺があり、重いテーマではあるものの、笑いを誘う話をして頂きました。以前の鬼籍に入られた桂福車様と二度目になります。

最後に、兵庫過労死を考える家族の会の金谷一美様より「過労死遺族の声」として過労死の無い社会と過労死を無くすための教育が大事であることの訴えを聞かせて頂きました。

私はこのシンポジウムの6日前に松山でのシンポジウムに2024問題のパネリストとして参加しましたが、テーマを一つに絞って、基調講演とそれに関するパネルディスカッションをし、参加者を巻き込んで討論するのも有意義と実感しましたので、次回の岡山シンポでは参考にしようと思いました。

(岡山家族の会 中上裕章)

島根過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月21日(木)浜田ワシントンホテルプラザに於いて、過労死等防止対策推進シンポジウムを開催しました。今回は私の地元開催ということで、気合いを入れて3月上旬から企画立案。『基調講演には、久保直純四国過労死等を考える家族の会代表にお願いしよう!』と決め込んでいました。

久保代表は「ある新人公務員の過労死 過労死を無くすためには~」をテーマに基調講演され、ご子息を過労自死で突然失われた失望感、M市役所に対する勤務実態と人事当局の説明に強い怒りをこめて壇上から訴えられました。『自分が死んででも、息子を生き返らせたい気持ちでいっぱい。この世から過労死という言葉が無くなれば、喜んで家内と一緒に息子のところに逝きます。』とお話しされた時には、会場内の至るところから涙を拭う参加者の姿を確認しました。

参加者は146名でした。やっぱり、シンポジウムに参加して良かった。過労死問題を理解した。H市役所でも過去にパワハラ自死事件があったが、遺族の皆様の感情を思うと私も辛いです。近年のシンポジウムのなかでは、過労死シンポが一番良かったです。等々のお話を受けました。

(山陰家族の会 三浦一雄)

愛媛過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月13日(水)に松山市道後にある愛媛県民文化会館において愛媛でのシンポジウムを行いました。

先ず、愛媛労働局からの厚生労働省の愛媛での過労死防止対策の現状を報告され、基調講演としてフリーライターの橋本愛喜氏による「物流の2024問題」の本質と真の解決策を求めてと題してトラック運転手の労働の実情と問題点などを講演され、その後、橋本氏と共に愛媛大学名誉教授の長井偉訓先生・愛媛トラック協会会長西岡斉氏・愛媛交運労協議長西田和則氏と私(中上)の5名で「物流の2024問題とトラック・ドライバーの過労死問題を考える」と題してパネルディスカッションを行いました。

今回のシンポジウムはトラック・ドライバーの2024問題にテーマを絞って基調講演とパネルディスカッションを行ったので、トラック・ドライバーの給料や労働条件が如何に過酷であるかを知ってもらうことができたので、内容としては十分面白いシンポジウムであったと思います。

当日はシンポジウムの参加予約をせずに飛び入りの参加者も多く見受けられましたが、皆興味深そうに話を聞いてくれ、会場に聞きに来られた方にもディスカッションに参加していただけ、参加者を巻き込んで皆で考え議論するという、大変有意義で今まで以上に面白いシンポジウムでした。

(岡山家族の会 中上裕章)

福岡過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月1日神田東クリニック院長 高野友樹様より「職場復帰に支援に関する最近の話題」についてお話しいただきました。職場復帰支援のゴールは復帰ではなく安定就労と健康保持であること。復帰にあたっては、医学的判断と合わせて職場側の受け入れ態勢の準備、環境整備が不可欠であると話され、職場の理解の大切さがわかりました。

誰でもゲートキーパー機能を果たせるというお話しでは病気に詳しくなくともゲートキーパーになれるということ。気づき→傾聴→繋ぐ→見守りで過労死から守れるとのことでした。

最後に病になったとしても受け入れ側の支援、理解により健康になれるのだと締めくくられました。佐賀にお住まいのご遺族からの体験談発言では、長時間労働による突然の心臓疾患で旦那様を亡くされた方でした。過労死で突然大切な人が亡くなると、目の前の景色から色がすべて無くなるほどのショックを受けそれは長期間続いた。出来ていたことが出来なくなった。というお話しを聞き、同じ経験をしている過労死遺族は多く共感いたしました。このような悲劇は終わりにして欲しいという遺族の気持ちは会場の方の胸に届いたと思います。

(福岡家族の会 安徳晴美)

東九州過労死等防止対策推進シンポジウム報告

大分シンポジウムは、精神科医の天笠崇先生が、嘱託産業医として、職員の面接や衛生委員会への参加などの経験を通して、メンタルヘルスチェックの重要性や、アンガーマネジメントの方法についてなど、ご自身の研究について講演して下さいました。初めて聞く内容もあり、たいへん勉強になりました。

遺族発言は、私の体験をお話しさせていただきました。私の息子の行政裁判で、天笠先生に書いていただいた医学的意見書のおかげで、息子の精神疾患が認められ、当時の私がどれだけ救われたかという内容から、天笠先生と私が、質問にお答えするというコーナーも設けていただきました。

宮崎シンポジウムでは、新聞記者の牧内昇平氏が、「取材から見えてきた過労死の実態」について講演して下さいました。50人以上の過労死遺族の取材をとおして見えてきた過労死の実態や、ハラスメント対策について、明確なご提言をお聞きすることができました。

遺族発言は、宮崎県在住のご子息を亡くされたご遺族が、被告会社に労働改善状況の報告を、5年間にわたって求めた結果について、報告して下さいました。

(東九州家族の会 桐木弘子)

全国過労死を考える家族の活動

【2024年】

  • 11月11日  全国家族の会30周年記念誌発行
  • 11月16・7日 全国家族の会・統一行動:東京・霞が関周辺
  • 11月14日  第29回過労死等防止対策推進協議会:厚生労働省会議室&web
  • 12月14日  いのちと健康を守る全国センター理事会:zoom
  • 12月19日  過労死防止全国センター3役会議:zoom
  • 12月13日  いのちと健康を守る全国センター総会:全労連会館&web
  • 12月14日  全国家族の会事務局会議:zoom
  • 12月27日  遺児交流会準備会議:zoom

【2025年】

  • 1月16日  連合新年交歓会:東京アートホテル日暮里
  • 1月17日  過労死防止全国センター3役会議:zoom
  • 1月24日  全国家族の会ニュース第92号発行
  • 1月26日  全国家族の会世話人会議:zoom

カンパのお願い

家族の会は皆様のカンパを主な活動原資として活動しています。
カンパのご協力をよろしくお願いします。

ゆうちょ銀行 店名 〇五八(ゼロゴハチ) 店番 058
預金種目 普通預金 口座番号 3713219
口座名義 全国家族の会(ゼンコク カゾクノカイ)

【発行】全国過労死を考える家族の会(2025.1.24発行)
【事務局】東京駿河台法律事務所内 TEL. 03-3234-9143
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