全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第90号

全国家族の会伝統行事 第36回統一行動を行いました

2023年11月8日・9日に全国家族の会統一行動をおこないました。
一日目は、厚生労働省が主催する過労死等防止対策推進シンポジウム東京中央会場・イイノホールに参加し、過労死問題の現状と課題、防止対策等の進捗について学びました。

プログラム前半の最後に、過労死家族の会から5名のご遺族が体験を語られました。被災労働者の年齢と業種は、26歳の勤務医、34歳の機械設計、26歳の電力会社勤務でした。息子さんを亡くされた母親は生前の映像を背景にして、死に追い込まれた悲惨な働き方を訴えました。そして、42歳の教員、45歳の電機メーカー勤務だった夫を亡くされた妻は幼い子供を抱え、ひとり親で子育てされた辛い体験を語られました。

業種は違ってもその背景は長時間労働と重い責任を課せられ、ハラスメントによる過重労働が原因して尊い命が奪われました。遺族から、「息子は死をもって問題提起した」、「異常な働き方が日常でした」、「過労死は人災、人が命を奪う」など、まじめに働いた家族が過労死する理不尽な出来事を涙ながらに訴えられた言葉は、聴く人の心に奥深く響いたと思います。

休憩を挟んで、三会場に分散しました。A会場は「ハラスメントのない職場環境に向けて」、B会場は「企業、労働組合から取組事例紹介」、C会場は「精神障害の新しい労災認定基準について」講演がおこなわれました。(詳細は6・7頁に掲載)

講演後、各会場にて家族の会会員が閉会挨拶をして終了しました。

二日目午前は、第36回目の厚生労働省および地方公務員災害補償基金本部へ要請行動を行いました。
厚労省要請は、過労死弁護団全国連絡会議から玉木弁護士、梶山弁護士、過労死防止について考える議員連盟から泉議員にご参加いただき、地方公務員災害補償基金本部要請は、松丸弁護士、平本弁護士、青柳弁護士、上田弁護士、議員連盟から大西議員にご参加いただきました。いずれも過労死弁護団と全国家族の会の団体要請と個別案件の早期認定と過労死防止を求めて、約1時間要請しました。(詳細は2・3頁に掲載)

終了後、厚労省前にて街頭宣伝行動を行いました。まず、玉木先生から過労死問題をめぐる情勢と厚生労働省要請のご報告をいただきました。続いて、個別に要請した4名のご遺族から早期の認定を訴え、最後に寺西から救済と過労死防止を訴えて終了しました。

午後から、全国家族の会の定期総会をおこないました。各議案は承認採択されました。休憩後に参加者交流会をおこない17時に終了しました。(詳細は2頁に掲載)

この統一行動は、創成期から36年間受け継がれ、コロナ期にも絶やさず開催できた伝統行事です。今年度もご支援のおかげで開催することができました。

(代表世話人 寺西笑子)

2023年度 全国過労死を考える家族の会総会報告

日時:2023年11月9日(木)13:30~16:30
場所:日比谷図書文化館 スタジオプラス(小ホール)
参加者:36名(代議員25名、オブザーバー参加9名、顧問弁護士2名)

議事は、寺西代表世話人の挨拶で始まり、活動報告、会計報告、監査報告、予算案、2023年各世話人 代表・事務局の選出など、すべての議案は挙手をもって採択承認されました。

2023年度各世話人
代表世話人 寺西【京都】

各地の代表
【北海道】村山【宮城】大泉【山梨】深澤【長野】吉田【東京】渡辺【神奈川】工藤
【静岡】尾崎【名古屋】伊佐間【京都】中嶌【大阪】小池【兵庫】福永【岡山】中上
【山陰】高木【四国】久保【東四国】大島【福岡】安徳【東九州】桐木

事務局
寺西(活動全般・資料作成全般)
桐木(会計)
久保(会計監査)
伊佐間(会計監査・印刷)
小池(厚生労働省要請担当)
安德(地方公務員災害補償基金本部要請担当)
中上(全国ニュース編集・総会資料作成)
渡辺(遺児交流会)

その他 2023年1月14日付け代表世話人の提案文書(重複会員等について)が周知された。

(書記:高木、安徳)

要請行動報告

厚生労働省への要請報告

2023年全国過労死を考える家族の会の厚生労働省要請行動は14件で、当日は要請者と代読者、各地域の世話人、弁護士2名に加え立憲民主党の泉健太代表がご参加下さいました。厚生労働省側の各部署の担当者12名に対し、泉代表は「この要請を聞いてなぜ過労死が起こってしまうのか、現場で何が起こっているのかしっかり受け止め、厚生労働省の職員一人一人が被害者をどう救済するのか考えて欲しい」と力強い発言をしてくださいました。

要請内容は精神疾患・過労自死の労災認定基準の改善について9件、脳・心臓疾患労災認定基準については2件、労働基準監督署等の問題などが3件でした。それぞれが自分の事案について訴えた後、それがどのような問題を含んでいるのか玉木先生が一つ一つの事案に補足説明をして下さり、参加者はとても心強い気持ちになりました。

今年も精神疾患の訴えが半数以上を占めましたが、その中でも、パワーハラスメントの立証についての難しさを訴える事案が多くみられ、ハラスメントが労災として認められることの困難さを厚労省に強く訴えました。

厚労省側からは「個々の事案についてはコメントできないが、労災は人災であるという言葉を重く受け止めました、人を大切にしない職場や社会はあるべきではない、今回の要請で実態を聞かせていただき感謝します」と感想がありました。最後に寺西代表世話人が「今回の訴えの中には行政裁判になっている事案も多いが、裁判中でも認定基準が変わったら再評価されるべきである。被災者側に立証責任があるといわれても、会社側の協力がなければそれは困難極まる、行政として会社の内部調査をもっと詳しく行い、認定されるようなデータが得られるようにして頂きたい」と強く要望しました。

(東京家族の会 渡辺しのぶ)

地方公務員災害補償基金本部要請行動

11月9日地方公務員災害補償基金へ家族の会から要請者(代読含む)4名 他参加者13名で要請しました。
基金側からは、総務課(調査調整担当)、補償課(調査役困難事案担当)、企画課(メンタルサポート推進次長)の3名の方が対応くださいました。また大西衆議院議員も来てくださり、基金本部側に向けて「公務員の過酷な労働を防ぐため労働時間管理と持ち帰り業務の把握、防止対策と救済への迅速な処理が必要だ。」と発言していただきました。

過労死に至った各要因は、保険局にお勤めだった方はコロナ対応による長時間労働。消防士であった方は長期間の過酷な訓練。児童センター職員の方は多くの困難事案対応と職場ハラスメントが重なったことでした。遺族からは長期間認定にいたらず心身のダメージが大きいことから適正な判断による早期救済をと求めました。松丸弁護士,平本弁護士より全体に関わる要請でも重ねて、各支部段階でストップしないように申請が上がった段階で速やかに調査するよう本部からも指導するようにと要請していただきました。

認定されたばかりの公立学校教員だった方の遺族からは部活動を含む教員の長時間労働の是正を求めました。また、基金側からは、過労死ライン80時間にならなくても、その他負荷要因を考慮して判断していることの説明がありました。

最後に、基金本部は地方公務員の災害について唯一全ての情報を持っている機関であることから、過労死等の防止のためには勤務時間の適正把握の重要性を啓発する記事をホームページで発信するとともに、過労死等の被災者・遺族の訴えも掲載するよう家族の会から強く要請しました。

(福岡家族会 安德晴美)

2023年遺児交流会 報告

2023年7月30日に琵琶湖で遺児交流会が行われました。午前中、大人は分かち合いの時間でした。初めての参加者は何を話したらいいか、色々を聞かれるのではないか、と不安を抱えている場合もあります。自分の話したいことを自分のペースで話し、それを聞いた人はたとえ意見が異なっても受け入れてあげる、そして質問はしない、ここは安心、安全な場である、と感じられるような雰囲気の中で自己紹介を兼ねて語り合いました。

子どもたちは小学生以下とそれ以上に分かれて活動をしました。小学生以下はストレスの感じ方やそれを発散する方法について、カウンセラーさんのリードのもと、遊んでいるような感覚で大騒ぎしながら活動を楽しんでいました。中学生以上は自分について知る、ということで簡単な絵をかき、それがどのような意味があるのか心理的な解説を聞きました。子どもが多様な生きづらさを抱える現代、過労死を体験した子どもたちはさらに辛い気持ちを抱えていることがあります。この会が過労死で困難を抱えた子供たちの居場所の一つになればと願っています。

お昼には琵琶湖湖畔の開放的な施設で湖からの風に吹かれながらバーベキューを楽しみ、焚火でマシュマロを焼きました。午後には子ども達はカヌー・クラフト・トレッキングに分かれて出発し、それぞれの活動を満喫していました。お母さんたちは、一人親子育てについてグループで意見を交わし、最後に皆さんで共有する時間を持ちました。最後に子どもたちに感想を述べてもらいましたが、小学校一年生が自分なりの感想を一生懸命お話してくれて、聞いていた皆さんの心がほんわりしました。夜は大騒ぎの花火とスイカ割という、夏休み定番行事で大いに盛り上がり、参加した皆さんは楽しい夏の思い出をいっぱいつくってイベントは終了しました。

最後に参加者からの感想です。「交流会では、子どもたちはマシュマロ焼きが楽しかったと話しておりました。皆同じように仕事の関係でお父さんが無くなっている方たちと伝えると驚いておりました。心理の先生から『雑談、日常会話を大切にしてください』とアドバイスを頂き、意識して子どもと向き合い、子どもから話してくれた時はとりあえず全肯定で聞くようにしました。子どもとの時間をより大切に過ごせるきっかけを頂きありがとうございました。」

(遺児交流会担当 渡辺しのぶ)

世話人会報告

日時:2024年1月20日(土)13:00~15:00 zoom会議
出席:玉木弁護士、松丸弁護士、事務局:寺西(重複省く)
各地:北海道、東京、神奈川、長野、山梨、静岡、名古屋、大阪、兵庫、山陰、四国、福岡、東九州
欠席:宮城、岡山、東四国、京都
書記:北海道(村山)
進行:寺西

議題1.活動報告

議題2.情勢について

「メリット制の在り方を再考するシンポジウム」について(玉木弁護士)

この訴訟は、A財団に勤務していた男性が精神疾患になり再審査請求で労災認定された。
事業主は労災保険のメリット制によって、支給決定になると労災保険料が上ることで損害を被るとし、事業主は支給決定を取り消す訴訟ができることを争った。一審の東京地裁は棄却されたが、一昨年11月末、二審の東京高裁は事業主に争う資格があるとし、支給決定を取り消す訴訟ができるとの不当判決を下したことで現在、最高裁へ上告し8か月継続されている。昨年、家族の会から43名の上申書(陳述書)を提出した。きちっと審議されているもよう、弁護団も頑張って行きたい。
下記の緊急集会参加を呼びかけられた。

1/30『労災保険「メリット制」今後について考える緊急集会』連合会館+youtube配信
主催:日本労働弁護団、過労死弁護団全国連絡会議
・基調講演:山岡弁護士、嶋﨑弁護士
・パネラー:安全センター、全労働省労働組合、過労死弁護団(玉木弁護士)過労死家族の会(寺西代表)

「2024年問題」について(松丸弁護士)

2024年は、医師(勤務医)、運輸、建設業は、三六協定の猶予が終了することの長時間労働について。4月から一般の36協定ではなく業種ごとになる。医師の場合、年間1860時間の時間外労働・月155時間が可能になる。過労死ラインの2倍が限度時間。健康確保措置をしたうえになっているが、産業医面接など受ける時間がない、これが過少申告の原因になっている。

建設労働者について、一般労働者の36協定は、年間720時間・月60時間だが、法定労働は別になるため、休日労働10時間を月2回すれば、毎月過労死ライン80時間になる。また、災害復興の場合は超えてもよいことになっている。家族の会としても問題提起する必要がある。

トラックの限度時間について、低賃金問題があり期待は持てない。これからも継続して取り組む必要がある。36協定を守っているか否かの問題ではなく、使用者が労働時間を適正に把握しているかが問題。実際は100時間なのに自己申告で50時間しか把握してなかったら、50時間になってしまう。根本的に適正把握があって、その上にたって36協定がある。

議題3.全国家族の会統一行動の報告

1日目:中央シンポジウム(全国家族の会は、遺族発言と閉会挨拶担当)
・遺族発言5名:大阪(高島)、長野(吉田)、名古屋(吉田)、神奈川(匿名)、大阪(匿名)
・閉会挨拶:A会場(寺西)、B会場(工藤)、C会場(渡辺)

2日目:要請行動、厚労省前宣伝行動、総会・交流会
・厚労省要請:要請者(代読含む)14件。参加者21名+3名(玉木先生、梶山先生、泉議員)
・基金要請 :要請者(代読含む)4件。参加者8名+5名(松丸先生、平本先生、青柳先生、上田先生、大西議員)
・総会参加:代議員:36名(代議員25名、オブザーバー参加9名、顧問弁護士2名)
書記(高木、安徳)、司会(久保)、議長(伊佐間)、交流会進行(桐木)

総会関係会計報告:宿泊人数:26名、宿泊費、交通費、会議室費など。

議題4.次回の統一行動について、①案、②案、を各地で議論し、次回の世話人会で決める。

① 1日目:要請行動、厚労省前宣伝行動、中央シンポジウム。 2日目午前:総会・交流会
② 1日目:中央シンポ。 2日目:要請行動、厚労省前宣伝行動、総会・交流会
③ 総会代議員制について
(欠席者が多いため各地で議論し、次回の世話人会で確認する。)
④ 規約について
(代議員、委任状、定足数など採用すると規約改正が必要になる。)
(事務局会議で案を出す。)
⑤ 事務局会議
2月23日(金・祭日) 13:00~15:00  ※規約改正について
3月16日(土)    14:00~16:00  ※統一行動について
⑥ 全国世話人会
4月17日(日)    13:00~15:00

(事務局 寺西笑子)

過労死等防止対策推進シンポジウム報告

東京中央会場報告
A会場報告

2023年11月8日14時~17時、厚生労働省主催、東京・中央シンポジウムに参加しました。(約230名参加)。冒頭に、武見敬三厚労大臣の挨拶(審議官代読)があり、続いて「過労死等防止について考える議員連盟の田村憲久会長から「なんとしても過労死をなくしていく」と力強い挨拶をいただきました。

次に、厚労省の黒澤課長から白書の説明があり、勤務間インターバル制度の導入をお願いされました。次に、過労死防止全国センター代表幹事の川人博弁護士から、8件の過労死事件報告があり、労働時間の把握は使用者側の問題と指摘され、労働時間の過少算定を問題提起されました。前半の最後は、過労死家族の会の5名が遺族の体験を語りました。(詳細は1頁に掲載)

休憩後、A会場の基調講演は、企業団体の教育や研修など実施しているアトリエエム(株)三木啓子氏に「ハラスメントのない職場環境に向けて」と題して、12項目のハラスメント事例や防止の5か条および使用者責任やハラスメント規制法など説かれ長時間労働とパワハラは表裏一体、パワハラの「過大な要求」にあたることが腑に落ちました。最後に当方から、過労死防止を訴える閉会挨拶をして終了しました。

(代表世話人 寺西笑子)

B会場報告

東京中央シンポジウムのB会場では、「企業、労働組合から取り組み事例紹介」として、(株)荏原精密、特別養護老人ホーム「あんきの家細畑」、UAゼンセンより取り組みの報告がありました。それぞれの取り組みによって、職場の働き方が非常に改善され、働きやすくなっており、労働組合の取り組みの大切さを再確認しました。また、どの取り組みもそれぞれの業界において汎用性があり、他の企業でも取り組みを取り入れることができるのではと感じるものでした。働く人が主体となって、職場の改善を社内から行い、働きやすい職場に改善していく可能性を知る、良い機会となりました。

(神奈川家族会 工藤祥子)

C会場報告

C会場は『精神障害の新しい労災認定基準について』という講演で厚生労働省労働基準局補償課の西川氏と岩井弁護士がお話されました。厚労省の説明では今回の見直しで「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した場合」と「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた場合」が加わったそうです。その後、岩井弁護士が、パワーハラスメントが「強」である場合の具体例を新しい認定基準をもとにお話しされました。また、特別な出来事がなくとも、強い心理的負荷が認められる場合には、悪化した部分について業務起因性が認められるようになりました。最後にパワーハラスメントの防止についてや、「中」の出来事もその他の出来事との関係で「強」になる事などを注意点として上げられました。

(東京家族会 渡辺しのぶ)

北海道過労死等防止対策推進シンポジウム報告

北海道シンポジウムは、2023年11月15日(水)午後から、初めての試みで北海学園大学を会場にして開催しました。2023年度は公務員の働き方に焦点をあて基調講演を三多摩法律事務所 弁護士 山口真美先生に遠方より来道頂きました。

山口先生より、「長時間労働を蔓延させる地方公務員の勤務時間制度」のご講演をいただき、その後パネルデスカッションを行いました。コーディネーターは、北海学園川村雅則先生、パネラーは、山口先生、弁護士長野先生、自治労の方、そして、家族会からは、釧路在住の地方公務員だった息子さんを過重労働で亡くされたご遺族の方と以前釧路市で公務員をされていて過重労働によりメンタルを病まれた被災者のご家族のお二方にパネルデスカッションに参加してもらいました。

会場には、公務災害について弁護士へ相談中のご遺族が参加されており、家族会とも繋がることができました。シンポジウム開催について事前周知活動をいろいろと行ったのですが、学生の参加は振るわず、参加人数は例年とほぼ変わらず97名でした。

「過労死根絶」の為には、過労死等防止啓発事業の周知活動を家族会で今後も課題として取り組みます。

(北海道家族会 村山百合子)

東京過労死等防止対策推進シンポジウム報告

東京シンポジウムは11月21日に荻窪で開催されました。今年度は例年と異なり都心寄りの会場で行いましたが、約130人もの参加者があり、開催場所を変えたことによる参加のしやすさや関心の高さが現れていました。

講演はクオレ・シー・キューブの岡田さんで、職場のハラスメントをなくすためにはどのように改善したらよいのか、企業努力で良い職場をつくっていこうとする内容でした。

遺族発言は4名の方がご自身の体験を述べました。夫を亡くされた方、子どもを亡くされた方、それぞれの立場から、大切な家族がどのようにして過労死に至ったかお話をされました。家族が長時間労働を心配し、過労死が頭をかすめながらも、まさか実際に自分の家族が亡くなる日がくるとは予想できなかったと語ったご遺族、こんなにもひどいことがなぜ自分の子どもにおこったのか、何度考えても答えが出ないという辛さを訴えられたご遺族、働きすぎるということは、ブラックホールに引き寄せられるのと同じで、近づくとそこから逃れられなくなって、すいこまれてしまう、と表現した遺族もいらっしゃいました。涙を流しながら聞いている参加者も見受けられました。平日の午後という時間設定だったためか、女性の参加も目立ちました。

「本日おうちに帰ったら、この内容を是非ご家族と話し合い、過労死をなくすために皆さんで考えて頂きたい」と閉会の挨拶で締めくくられました。

(東京家族会 渡辺しのぶ)

神奈川過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月2日、神奈川過労死等防止対策推進シンポジウムが開催され、当日は150人近い方々にご参加頂きました。シンポジウムに向けて、神奈川労働局にて、家族の会、過労死対策弁護団、労働組合の皆さんと、4月より計画をたてて会議を重ねてきました。

今回は、パワハラ問題を中心に、職場でも何かできることはないかということで、(株)クオレ・シー・キューブの稲生さんより「パワハラを防ぐ為のコミュニケーション〜アサーションという在り方〜」のご講演を頂きました。「私も大切・あなたも大切」という歩み寄り、人を大切にする職場内のコミュニケーションは、自分の周りからできることでもあります。また笠置祐亮弁護士から「精神障害の労災認定改訂」について、被災者の体験談では、精神疾患で労災認定を受け、その後数年かけて職場復帰を果たした体験をお話し頂きました。

神奈川シンポジウムでは、昨年度より神奈川労働局と話し合い、プラチナくるみんに認定された企業さんに、事例発表をして頂いています。今年も自社にて働きやすい職場づくりを行なってきた報告を発表され、変わろうと思えば働き方を変える事はできると、励みとなりました。

(神奈川家族会 工藤祥子)

長野過労死等防止対策推進シンポジウム報告

長野会場は、11月1日(水)JA長野県ビルにて73人の参加で開催されました。
基調講演は「労働と健康―17万件のメール相談から学ぶー」と題して、(独法)労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義先生のお話を伺いました。「メンタル不調予防はセルフケアによるストレス対策が大切」、メール相談窓口を活用してほしいと述べられました。

㈱システックス様の取組事例報告の後、長野家族の会の西尾直子さんより、過労自死遺族となった経験とお子さんの様子、現在の思いをお聞きしました。「同じような苦しい思いをする人が増えないでほしい、過労死・過労自死は誰にでも起こりうることを忘れないでほしい」と訴えられました。

終了後、家族の会6人といの健理事の皆さん4人で交流お茶会をしました。シンポジウムの感想やいかに多くの人に過労死防止に関心を持ってもらうかなど、さまざまな意見交換ができ、有意義な時間でした。

(長野家族会 吉田恵美子)

山梨過労死等防止対策推進シンポジウム報告

山梨会場は、11月30日、18時30分から77名の参加を得て甲府市内で開催されました。
山梨労働局から挨拶があり、続いて「過労死の実情と求められる防止策」として、弁護士の白神優理子先生(八王子合同事務所)の基調講演がありました。過重労働やハラスメントによる事件を起こすと、企業や自治体も含めて取り返しの付かない大変な事態になってしまうこと、法律や制度改訂の解説、人権意識の醸成と防止対策を講義されました。

休憩を挟んで、地元企業「三栄精工株式会社」の斉藤 氏から「時間外労働の削減」への実践報告、山梨家族会から清水文美氏の「名ばかり店長の実態と過労対策」がありました。「過労死等防止対策」に向けて、官民あげて取り組むべきこと、喫緊に講ずべき具体例が提示されました。

(山梨家族会 深澤佳人)

愛知過労死等防止対策推進シンポジウム報告

愛知では11月28日に名古屋中小企業振興会館で開催されました。第一部は、労働局からの報告、企業の取り組み事例発表の後、「日本の職場における過重労働・ハラスメントの構造と課題」をテーマにNPO法人POSSE代表・今野晴貴氏の基調講演がありました。

過労死遺族として、労働者がおかれた過酷な状況に触れる機会が多かったのですが、今野さんのお話はさらに衝撃でした。多数の労働相談を受けた事例をもとに過労死がいかに引き起こされるかをお聞きし、私達一人一人が意識して過労死対策をする必要性を改めて感じました。そして遺族として過労死の実情をより多くの人に知ってもらう役割があると思いました。

第二部では、高校生制作の映像ドキュメンタリー「過労自殺」の上映。その後、ドキュメンタリー制作の主なモデルとなった娘さんを過労自殺で亡くした伊佐間さんのお話がありました。映像を視聴したあとの遺族の生の声を聞き、より過労死をリアルに感じる事が出来たのではないかと思います。
今回のシンポジウムではそれぞれの立場から過労死問題を考えるとても良い機会だったのではないでしょうか。

(名古屋家族会 藤田睦美)

京都過労死等防止対策推進シンポジウム報告

11月24日午後、池坊短期大学のこころホールで開催されました。(参加者は88人)
京都労働局の開会挨拶に続いて、過労死防止京都連絡会の中嶌清美会長(京都家族の会世話人代表)が挨拶し、労働局監督課長から「2022年度の日本における過労死等の概要及び過労死等の防止のために講じた施策の状況」を報告されました。

遺族の体験談は、自動車マット製造販売を行っている会社で過労死された会社員の奥さまが行い「過労死家族をこれ以上増やさないで」と訴えられました。基調講演は、神奈川県立保健福祉大学大学院の津野香奈美准教授から「パワハラを起こす企業と起こさない企業は何が違うのか」と題して、予防活動と再発防止対策、業務改善と評価改善により構造的なパワハラを生み出さないようにすることが大事だと強調されました。最後に過労死防止京都連絡会事務局長の古川弁護士が閉会挨拶をしました。

(訃報)
京都家族の会世話人代表の中嶌清美さんが、令和6年1月26日の夜、脳出血により享年73歳で逝去されました。
1月30日に御子息から、すでに家族葬で執り行われた知らせがありました。
ご冥福をお祈りすると共に、生前のご厚誼を深謝し謹んでご連絡申し上げます。

(代表世話人 寺西笑子)

大阪過労死等防止対策推進シンポジウム報告

大阪会場は、11月6日(月)、大阪駅近くのグランフロント大阪で行い、参加者は、181名でした。
大阪労働局労働基準部長樋口雄一氏が開会挨拶、労働基準監督課課長宮本靖大氏から大阪の取り組みを報告。基調講演は、久保智英氏から「働く人々における巧みな休み方・オフの量と質の確保の重要性」と題しご講演いただきました。「企業からの取り組み事例発表」として、第一稀元素化学工業株式会社管理本部サステナビリティー推進室熊野裕二氏からお話しいただきました。

遺族発言は、大阪家族の会から2名の報告がありました。医師の母親からは、仕事に忙殺され追い込まれていく息子さんの働き方、もう1名は、会社員の妻から懸命に仕事をした夫の姿や会社の果たすべき役割を発言されました。二人の遺族は、ともに「どうして命を助けてあげることができなかったのか」と、今も自分を責めています。過労死・過労自死遺族の人生に与える影響は大きく深刻であることが伝わってきました。

その後、松丸正弁護士の閉会挨拶で終了しました。
シンポジウムを通じて、真面目で優秀な人材が過労死・過労自死する悲惨な現実を認識していただき、働き方の改善に繋がることを願います。

(大阪家族会 小池江利)

兵庫過労死等防止対策推進シンポジウム報告

兵庫県でのシンポジウムは、11月22日(水)18時から神戸市産業振興センターのハーバーホールにて開催されました。参加者は192名でした。基調講演は、森崎雅好氏(高野山大学教授)による「労いと働き-心配り(ケア)の観点から」でした。

臨床心理士、公認心理師としての自死遺族会や自殺防止の取り組みを基に、人生や心など今までのシンポジウムとは違う切り口の内容でした。「人は情のある生き物で、他者からの励ましや労いが必要。しかし、労働市場ではただの労働者、替えがきくとの認識になっている」「命とは時間であり限りがある。その貴重な時間をどう生きるかという観点から労働について考えることが必要」とのお話は、就職活動を控えた子をもつ親として、たいへん印象に残りました。

また、長時間労働が原因で精神障害を発症し訴訟中の方からのメッセージを、担当弁護士が代読されました。拘束時間が20時間に及ぶなど過酷な状況、訴訟を起こした理由、生き生きと働ける社会になって欲しいという願いでした。当事者は心身の不調を抱えながら勤務先とたたかわねばならず、遺族とはまた別の困難があると痛感しました。

(兵庫家族会 福永)

岡山過労死等防止対策推進シンポジウム報告

岡山では11月7日にイオンモール岡山おかやまみらいホールでシンポジウムが開催されました。参加者は約130名でした。遺族の訴えは、神戸市の洋菓子メーカーで勤めていた二十歳の息子さんを上司のパワハラと長時間過重労働によって亡くされた前田和美さんが「救えたかもと悔やまれるが、もう息子は帰ってこない。」と悔しさを訴えられました。

最初の基調講演では、大室産業医事務所代表の大室正氏による「産業医から見る過労自殺企業の内側」と題して、睡眠の大切さと、職場でのコミュニケーションは「阿吽の呼吸」はダメで、「言語化」が重要になっていることを説かれました。

二つ目の基調講演では、神奈川県立保健福祉大准教授の津野香奈美氏による「パワハラを起こす企業と起こさない企業は何が違うのか-パワハラ上司を生み出さないためにできること-」と題して、パワハラには個人的パワハラと構造パワハラがあり、構造パワハラを引き起こす企業の特徴として、①要求度やプレッシャーが高い②役割の矛盾・曖昧さがある③社員に「タフさ」を求める④冗談やからかいを容認していることがあり、ハラスメントの発生には、組織の構造や組織風土が大きく影響し、日本は競争原理の中で、弱者への思いやりよりも、業績・成功・地位を重視する傾向があり、仕事量の適正化、個々人の多様性の尊重、仕事の役割の明瞭化、冗談やからかいをしない心理社会的安全風土の醸成が重要だと説かれました。

(岡山家族会 中上裕章)

東四国過労死等防止対策推進シンポジウム報告

徳島会場報告

日時:11月16日(木)13:00~15:10
会場:徳島大学(けやきホール)/参加者239名
「基調講演」「日本の職場における過重労働・ハラスメントの構造と課題」:今野晴貴氏
「過労死遺族の声」 安徳晴美氏

香川会場報告

日時:11月10日(金)14:00~16:30
会場:香川国際会議場/参加者71名
「基調講演」「取材から見えてきた過労死の実態」:牧内昇平氏
「企業からの取り組み事例発表」
「働きやすい職場づくりの取り組み」:協同食品株式会社 管理部 部長 三谷 友哉氏
「過労死遺族の声」:中原のり子氏

(東四国家族会 大島照代)

愛媛過労死等防止対策推進シンポジウム報告

2023年11月20日 愛媛大学にて開催 18時~20時30分

2023年度のシンポにおいては、教員の労働問題をテーマにし、清山茨城大学教授に「学校教員基の過労死・過労自死等の現状と今求められる働き方改革」と題して基調講演を頂きました。(40分)その後、パネルディスカッション(90分)として「学校教員の働き方(改革)を考える」について、コーディネーターには、長井愛媛大学名誉教授、パネラーには、神奈川家族の会工藤代表、地元の現役教員に加わって頂き、愛媛としては、新しい形式で討論が出来ました。始まる前に、公務員の過労死の実体験者として久保も一言述べさせて頂きました。

質疑応答も活発に行われ有意義であったと思います。ただ、一つ残念な事は、シンポのテーマを決める打ち合わせの中で、「自分達の管轄外である、教員の労働問題は、テーマとしてふさわしくない」との発言があり、紛糾しました。過労死問題は職種に関係なく幅広に考えるべきであるにも関わらず、このような考えを持っていることは、非常に残念でした。

(四国家族会 久保直純)

福岡過労死等防止対策推進シンポジウム報告

2023年11月2日、過労死等防止対策シンポジウム福岡が開催されました。NPO法人POSSE代表今野晴貴氏による基調講演では過労死・自死・鬱を誘発する労務管理についてのご指摘がありました。本来、企業側が支払うべきコストの代わりに、長時間労働によって労働者側が心身の健康を、ときには命までをも害するという形で支払っている、という言葉がとても印象に残りました。

ご遺族のKさんからは最愛の息子さんが入社3年で亡くなるまでの経緯が語られました。他社との競争のために顧客を過剰に優遇する企業方針、そこから派生する長時間労働・人手不足のために、退職を申し出ても引き止められ続ける職場環境。「皆も遅くまで仕事をしているから」と頑張り続けた息子さんとその意思を尊重しようとした母が過労死というあまりにもむごい現実に巻き込まれていく様子に胸が痛みました。

働く人が自身の命と健康を守るというごく当たり前のことが実現できるように、私たち一人ひとりが何をすべきかを真剣に考えた2時間でした。

(福岡家族会 H)

東九州過労死等防止対策推進シンポジウム報告

宮崎会場報告

宮崎シンポジウムは、10月25日に開催され、講師として津野香奈美先生を迎えました。
津野先生は、医学、経済学、法学など多岐に渡る分野の論文からパワハラを研究され、たくさんのデータから「どうすれば、パワハラを無くせるのか」、科学的に考察された大変貴重なお話しをして下さいました。

講演後に、津野香奈美先生への質問コーナーを設け、医療従事者から、「ミスが許されない緊張感を伴う医療現場で、指導かパワハラかの境界について悩むことが度々ある」、との質問がありました。
先生からは、「人格否定があるかどうか、みせしめになっていないか」等、具体的なお答えをいただき、納得できる内容の濃いシンポジウムになりました。

大分会場報告

大分シンポジウムは、11月14日に開催され、福岡の弁護士が取り組んできた過労死事案について、大分の弁護士との対談形式で報告がありました。体験談は、会員の方ではありませんでしたが、ご主人が亡くなられてからの子育ての悩みをお話しされたところ、同じ立場の大分の会員さんがお声掛けして、連絡を取り合うようになられたそうです。家族会ともご縁ができればと考えています。

(東九州家族会 桐木弘子)

全国過労死を考える家族の会の活動

【2023年】

11月6日  過労死防止協議会事前会議:zoom
11月8・9日 全国家族の会統一行動:東京・霞が関周辺
11月14日 第25回過労死防止協議会:東京新橋カンファレンスセンター&オンライン
12月6日 いの健全国センター総会:全労連会館&オンライン
12月21日 いの健全国センター労働基準行政検討会:zoom
12月26日 遺児交流会準備会:zoom会議

【2024年】

1月5日 連合新年交歓会:東京・アートホテル日暮里ラングウッド
1月12日 過労死防止全国センター2役会議:zoom
1月18日 過労死等防止対策推進協議会事前会議 / いの健全国センター労働基準行政検討会:zoom
1月20日 全国家族の会世話人会:zoom
1月23日 第26回過労死等防止対策推進協議会:厚生労働省会議室&オンライン
1月27日 過労死防止全国センター拡大幹事会:zoom
1月30日 労災保険「メリット制」の今後について考える緊急集会:連合会館+YouTube配信
2月4日 第27回全国家族の会30周年記念誌準備会:zoom
2月7日 過労死等防止対策推進協議会当事者委員会議:zoom
2月13日 過労死等防止対策推進協議会当事者委員会議:zoom
2月15日 いの健全国センター労働基準行政検討会:zoom
2月20日 過労死等防止対策推進協議会当事者委員会議:zoom
2月23日 全国家族の会事務局会議:zoom
2月29日 いの健全国センター理事会:zoom / 全国家族の会ニュース第90号発行

 

カンパのお願い

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預金種目 普通預金 口座番号 3713219
口座名義 全国家族の会(ゼンコク カゾクノカイ)

 

【発行】全国過労死を考える家族の会(2024.2.29発行)
【事務局】東京駿河台法律事務所内 TEL. 03-3234-9143
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