全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第87号

過労死を繰り返さないために
命と健康を守る労働環境の法整備を強く求めます

本年6月、令和3年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。昨年度より264件増加し、3,099件という過労死等の労災請求件数が増え続けています。内訳は、脳・心臓疾患に関する請求件数は753件(うち死亡は173件)、精神障害に関する請求件数は2,346件(うち自死は171件)で増加しています。脳・心臓疾患の支給決定件数で評価期間2~6ヵ月平均では、80時間~100時間未満が最も多く、精神疾患の支給決定件数の出来事では上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた件数が最も多い状況でした。

過労死等防止対策推進法は2014年11月に施行され8年を迎えます。この間に大綱の見直しが2回おこなわれ、過労死防止に関する調査研究や啓発の取組を進めてきたことで、過労死防止について人々の意識が徐々に変わり始めていることを実感します。

一方で、2019年4月から働き方改革関連法が施行され、時間外労働の上限規制(36協定の様式変更)で過労死ラインの働き方を合法化しました。また、適用除外や5年間適用猶予になっている業種(医師、建設事業、自動車運転業務など)もあり、現在進められている自動車運転業務の検討会のまとめでは、勤務間インターバルは9時間、年間の上限時間は960時間という長時間労働が可能になります。このような長時間労働を前提にした過労死ラインの合法化は、安全に働き続ける労働環境といえず懸念します。

さらに問題なのは、毎年、厚生労働省が公表する「長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果」です。令和3年度は32,025事業場の内34.3%の10,986事業場が違法な長時間労働があり、是正に向けた取組を積極的に行うとのことですが一向に減少しない実態になっています。

そんな中9月2日TV報道にて、過労死ラインが蔓延する企業風土で2019年に過労死された公共放送勤務の男性記者(40歳)の労災認定を受けた緊急会見がありました。くしくも2013年に同じ職場で女性記者Sさん(31歳)が過労死されています。労災認定後2017年から「働き方改革宣言」を出し、組織をあげて再発防止に取り組み長時間労働している職員へ産業医の面接指導を進めていたようですが、所管する労働基準監督署から受診率の低さを指摘されており、その後も過労死ラインを超える長時間労働を放置していたことで再び同じ職場で過労死を起こしました。男性記者のご遺族は、「職員の命を危険にさらすほどの勤務を認めてきた組織の風土から改めて見直し、今後は職員やその家族の人生や幸せを軽んじることのない団体に生まれ変わることを切に願っている」とコメントされました。

現行の過労死ライン80時間以上で働くと健康を害し命を危険にさらす、いつ斃れても不思議ではありません。私たちは過労死の悲劇を繰り返さないために、過労死ラインは65時間を上限にし、勤務間インターバルは11時間以上にすることなど、働く人の命と健康を守る労働環境の法整備を強く求めます。

(全国過労死を考える家族の会代表 寺西笑子)

全国過労死を考える家族の会世話人会 報告

日時:2022年4月23日(土)13:00~15:40
場所:WEB会議(zoom)
出席者:玉木 一成弁護士、事務局(重複者は省く):寺西、各地世話人:14名 計16名参加 (欠席: 宮城、岡山、四国)
進行:寺西代表

① 主な活動報告:2022年1月~4月23日までの報告(寺西代表より)

② 情勢について(玉木弁護士)

  • 20年前の認定基準改定時には、年間の認定が約3倍に増えたが、昨年の脳・心疾患の認定基準改定後は、認定件数が25%減った。
  • 労働時間について、厚労省は少なくする傾向。ひどい事例を、議員に追及してもらう。
  • スタートアップ企業について、時間外労働の上限規制を外すべきと言う提言には、反対意見を述べていく。
  • 精神疾患の専門検討会については、この1年間、家族会、弁護団が望むような結果が得られるように一緒に活動して行きたい。

③ 協議事項

  • 全国家族の会結成30周年記念誌準備進捗状況について、寺西代表より報告
  • 白書のコラム:「過労死家族の会の取組」執筆依頼について
    今年は、北海道(村山)、山梨(深澤)、大阪(西岡)、来年は、長野、名古屋、岡山の予定
  • (新)オンライン相談会―大綱の新たな取り組みについて
    運営員:家族の会委員:渡邉、三輪、寺西
    研修担当:佐藤 ひさこ(メントレサポート)、高橋 哲(神戸学院大学)
    目的:過労死で親を亡くした遺児の健全な成長をサポートするため
    ※遺児や保護者からの相談を受ける可能性のある各地世話人(代行も可)の研修会を企画
    【実施日】 1回目:5月21日(土) 2回目:7月23日(土)
  • (新)オンライン シンポジウム:厚労省とプロセスユニークが計画中。要請あれば協力する。
  • 総会会場について:昨年より広い会場を。世話人会MLで継続議論する。
  • 活動費について:寺西代表が、議員連盟や議員の報告会に参加した実費を本年度清算する。
    来年度予算案に、寺西代表の活動費の費目を設けることを承認。

④ その他

  • 次回世話人会9月3日(土)13:00~
  • 第87号全国家族の会ニュース発行 次回世話人会後、発行。
  • いのちと健康を守る全国センターより、精神疾患労災認定基準の見直し署名要請

(書記 東九州 桐木)

日時:2022年9月3日(土)13:00~15:00
会場:WEB会議(zoom)
出席:玉木 一成弁護士、事務局(重複者は除く):寺西、各地の世話人17名が参加

① 寺西代表の進行で出席確認と4月以降の活動報告および各議題が進められました。

② 玉木弁護士より過労死問題の情勢について報告がありました。

③ 全国家族の会総会について

日時:2022年11月10日(水)9:00~12:00
会場:主婦会館プラザエフ 3Fコスモス
【総会参加者の資格】
総会への参加は、次の参加者数の割り当てに応じて、選出された者に限る
【参加資格者 総数 31名】

  • 各地の会員数に応じた参加者数
    会員数の10名に1名の割合で割り振る
    10名未満は地域代表として1名を割り振る
    10名を越える場合は10名ごとに1名(10名~20名は4捨5入で定める)
  • 参加者資格数 1名の地区()内は、会員数
    福岡(11)兵庫(10)東九州(10)山梨(10)静岡(10)宮城(7)東四国(6)長野(5)山陰(5) 四国(3) 岡山(3)
  • 参加資格者数 2名の地区()内は、会員数
    名古屋(20)北海道(16)神奈川(15)京都(15)
  • 会員数20名以上の地区の参加資格数()内は、会員数
    5名 大阪(50) 7名 東京(70)
  • 各地家族の会は、割当数は遵守し、総会参加者名を事前に登録する

④ その他

  • 11月の全国統一行動について
  • 遺児交流会について 12月24日、25日 群馬開催

(書記 宮城 芳賀)

カンパのお願い

家族の会は皆様のカンパを主な活動原資として活動しています。
カンパのご協力をよろしくお願いします。

ゆうちょ銀行 店名 〇五八(ゼロゴハチ) 店番 058
預金種目 普通預金 口座番号 3713219
口座名義 全国家族の会(ゼンコク カゾクノカイ)

各地の報告

北海道過労死を考える家族の会 報告

娘が過労自死してから、12月でちょうど10年になります。生きていれば33歳になっています。仕事は看護師でした。大学を卒業し、夢であった看護師という職に就き、今頃は生き生きと後輩を育てる立場にあったはずでした。しかし、入職して8カ月でその夢は断たれました。

労働基準監督署に労災申請をしたが認められず、審査請求も再審査請求でも結局労災は認められませんでした。今でも耳に残る労働基準監督署の審査官の結果を伝える電話の言葉は「パーソナリティーの問題なので労災ではない」という冷酷な内容でした。それでも、国を相手に行政裁判という道を選びました。

娘が亡くなってから5年以上の闘いでした。異例ともいえる「自庁取消」という形で労災は認められました。この結果に至ったのも、弁護団の力と支援して頂いた沢山の方々の署名や励ましや、メディアが取り上げてくれた成果です。そして病院を相手にした民事訴訟では、裁判長からの和解案により、長い闘いは今年終わりました。今、医療従事者の方はもちろん、働く人々はとても苦しい状況で日々労働しています。どうか娘の様な思いをする事が無くなる世の中になってもらいたいと思っております。

(杉本千春)

宮城過労死を考える家族会 報告
家族の会総会が開かれました

2021年12月4日(土)、宮城県労連会館会議室で第3回総会が開かれました。昨年は、4名だけの総会で寂しかったのですが、今回は、新型コロナの感染状況が落ち着いてきた時期でもあり、8名の参加で開催されました。今回は、新会員の方が、山形県、福島県、宮城県から3名の参加がありました。

この2年間で、あってはならない喜べないことですが、奇しくも、今回の参加者は、全員がお子さんを過労自死で亡くした家族でした。親として、その日の朝まで元気だった子どもを突然に「自死」という形で別れることの耐えがたいつらさを重く受け止めました。新会員の方は、今は、弁護士さんの支えがあって、「公務災害」「労災」の申請に向けて立ち上がっている方と、申請に向けての途中で申請に必要な証拠や証言の協力が見つからないで、あきらめようかと悩んでいて、家族の会と出合って「あきらめない」「挫けない」皆様の支えでがんばろうと立ち上がろうという方もいます。今回は、それぞれの事情があって参加できなかった方からも、事前に欠席の連絡がありました。

家族の会のつながりを切らないように、新年にでも、交流会及び学習会を継続してやっていきたいと思っています。簡単ですが、総会の様子をお伝えします。

(芳賀直)

東京過労死を考える家族会 報告

東京家族の会では、全国各地域の会員さんの最高裁判所要請行動を支援しています。各地域の代表さんからご依頼があった場合、いの健センターと一緒に要請行動を行っています。4月には東四国家族会の寳田さんの最高裁要請行動に、東京家族会から7名の方々が同行しました。

当日は訴えの場に同席し、ご本人・ご主人が要請を行った後、東京家族会代表が要請書を読み上げ、その後、同席した方が口々に寳田さんの裁判について、また、介護現場の実態について、働き過ぎて心身を壊し、辞職せざるを得ない実態についてなど意見を述べました。そのあと5月、6月の要請行動にも同席に、寳田さんの支援を行いました。

また、6月には名古屋家族会の大迫さんの要請行動もあり、こちらも訴えの場に同席することで家族会で支援していることをアピールしました。残念ながら両方の裁判とも不受理という結果となりました。最高裁が短期間で結果を出したことに驚くとともに、労基署に申請し、長い時間大変な思いをしながら不当な結果を出され続け、最後の頼みとして最高裁に訴えたにもかかわらず、国が出したあまりにも無情な結果に憤りを感じました。ここまで闘い続けた遺族の思いを踏みにじるような対応が残念でなりません。

各地域で裁判をしている方が最高裁まで闘い続けることになってしまった場合、東京家族会は全国家族会と連携して会員さんの支援をしていきたいと思います。

(渡辺しのぶ)

神奈川過労死を考える家族の会 報告

5月27日、神奈川過労死等を考える家族の会の5周年の総会を石川町の労働プラザにて行いました。

当日は正会員9家族10人、 賛助会員の弁護士、労働団体の皆さま9人のご参加と、オンライン参加2人、合計21人での総会となりました。全2時間のうち、総会の議事進行1時間、そのあとは正会員、賛助会員皆さんが神奈川家族の会に対する想いを1時間以上お話しするという、大変想いの深い、温かい総会となりました。いつも思うことですが、ご遺族の皆さんの助け合いと、それを支えて頂いている弁護士、労働団体の皆さまの絆の深さが神奈川の特色でもあり、大変ありがたいことです。

神奈川の場所柄、総会後はすぐ近くの中華街にて2年ぶりに懇親会を行いました。コロナ禍ではありましたが個室で細心の注意を払いながら、交流を深めることが出来、また新たな年度も支え合いながらみんなで進んでいきたいと思います。

8月の交流会は相変わらずコロナの増加と重なってしまい、オンラインにての開催となりました。総会には体調が悪くご参加できなかった方や、また新たに被災された方も参加されたりなど、気持ちを深く分かち合えた交流会となりました。

(工藤祥子)

長野過労死を考える家族の会 報告

長野家族の会は、6月26日に2年ぶりの総会を初めてオンラインで行い9人の方が参加され新たに世話人2人が決まり新体制となりました。2019年4月20日に38歳で過労死自死された西尾克俊さんは、会社側が安全配慮義務違反を認め、2022年3月和解が成立いたしました。

現在、飯田労基署に労災申請中の「吉田午郎さん」の経過について、母親の吉田惠美さんに報告をしていただきました。「皆さまのご協力で、8月末に署名5回目を提出し累計で18,228筆となりました。本当に感謝しております。ありがとうございます。労災申請から1年5ヶ月過ぎました。労基署への訪問も10回となりました。

調査進行状況は、まとめに時間がかかっているそうです。そこで、特に申請以降の私達や弁護団の取り組み・労基署の状況について10月15日午後、中間報告会を飯田市にて開催予定です。私達は自死原因を過重業務負担5項目として上げてきましたが、すべての根底は会社の仕事のやり方が個人依存である事です。専門外の業務でもすべて担当者任せでした。人脈が重要な職場環境です。一番の原因はトラブルを解決する方策や体制が会社組織として欠落していた事です。午郎の担当は社内でも特殊な開発品で、専門的な知識や技術を持つ人がいませんでした。私達は調査する項目を都度考え、積み重ねて業務の過重性を立証しました。

長時間労働という客観的な物差しがない中、同僚等の証言や午郎のノートの記述はとても重要です。労基署が提出資料を認定基準に当てはめ、多くの署名による皆さんの声をくみ取ることで是非とも労災認定されることを強く願います。」

(小池宣子)

山梨過労死を考える家族の会 報告

ここ数年内、山梨の家族会が取り組んだことやその成果を報告させていただきます。
地方公務員災害補償基金(以下「基金」)が高裁判決により公務災害と認定された事件が2つありました。1つ目は高裁で逆転(2017年)、2つ目は地裁で認定となりましたが、控訴(2018年)して来ました。

基金は2件とも敗訴「公務災害認定」となりました。2つ目に関係して、所属長の不法行為を明らかにするため自治体へ損害賠償請求裁判を起こしました。自治体は敗訴、380万円の賠償金を支払いました。これの判決理由に「故意または過失があった」ということから「自治体は、所属長(退職)に損害を『求償』せよ」の住民監査請求や住民訴訟(2021年)が起こされました。

この動きに自治体は、法定利息5%を付与し損害金(423万円)を所属長から回収しました。「求償権行使」です。(厚労省『カスタマーハラスメント対策 企業マニュアル』p.17を参照)さらに基金は、被災者に医療費3割分を返還したものの、健康保険組合に7割分を返還していませんでした。組合側も診療報酬明細を通常のものと同様に捉え、破棄してしまっていました。当会の指摘と協力で今年3月、正常となりました。

(深澤佳人)

静岡過労死を考える家族の会 報告

令和4年度の静岡でのシンポジウムは11月1日1時30分より、静岡市民文化会館大会議室で行われることになりました。今年のシンポジウムの大きなテーマは「メンタルヘルスの不調に見舞われた人を何とか助けられないだろうか、復職を支援できないだろうか」という大きな命題を掲げて計画をしてきております。多くの過労死と労働との因果関係を公私ともども目の当たりにしてきた中で一番の私たちの願いは、被災した、メンタルな不調を抱えた人を助けることはできないのであろうか。一度被災している人を助けられないかという命題を掲げて、各方面から講演をしていただきます。

産業医の立場から足立氏に依る 「職場におけるメンタルヘルス不調者の復職支援の取り組みについて」職業カウンセラー浅井氏による「職場復帰支援の実際について」家族の会の報告も尾崎から事例を説明することと「被災者に対する厳格な復職補助規格の必要性の模索」です。このように過労による災害に合い被災している人に対する取り組みを行おうと計画しております。

(尾崎正典)

名古屋過労死を考える家族の会 報告

9月14日(水)に十六銀行に勤務されていたご子息が過重労働やパワハラによって自死された事件の労災認定裁判控訴審の判決が出ました。奇しくもこの日は10年前に証拠保全を行った日だったそうです。しかし残念ながら労災は認めて頂けませんでした。お父様はとても落胆されていましたが、今年の4月に民事裁判を提訴しているので再度頑張りたいとおっしゃっていました。この事件も上司からの暴言によるパワハラと新人行員にも関わらず大変な業務を強いられた挙句、過労自死に至ってしまったケースでしたが、裁判所は上司のパワハラや過大な業務については重きを置いてくれませんでした。

他の会員の方の裁判でもそうでしたが、亡くなった方の知人が証言をしても裁判所はその証言を認めてくれません。一体誰が証言をすれば上司の暴言を認めてくれるのでしょうか?裁判所で判決を聞くたび疑問が沸いてきます。 法律が出来ても防止対策が出来てもハラスメントは一向に無くなりません。会員の方の裁判を傍聴するたび胸が痛くなります。国も裁判所もハラスメントは人の命を奪ってしまう行為だと1日も早く理解して欲しいと思います。

(伊佐間佳子)

京都労災被災者家族の会 報告

5月に2年ぶりに京都家族会の総会を開催しました。議事を終わり、参加者の話を聞きました。

新会員の支援学校教員のAさんの話を初めて聞きました。Aさんは精神疾患の治療中です。Aさんは起こしていない学校内の事件について、校長などから強く責められ精神疾患を発症しました。Aさんは、公務災害を申請しましたが、約2年後、公務災害は認められませんでした。裁決はAさんが理解できないような、事実と異なる理由でした。それがまたAさんを苦しめていました。学校で、Aさんがどんどん責められていく様子、苦しくて怒りのこもった話に、みんなは驚くばかりです。学校現場でこのようなことが起きているのは信じられません。後日、Aさんは支部審査会に請求することを決意しました。Aさんを府立高教組が支援しています。

9月23日には、「被災者を励ます集い」が京都職対連の主催で開催されます。集会にAさんも参加予定です。京都家族の会でも応援していきます。

同日の午後は過労死防止京都連絡会の総会が開催されました。労働局から新しい精神障害の認定基準を話してもらい学習しました。当事者としては納得できない改定ですが、闘いの武器になるよう運動を進めていきたいと思いました。

(中嶌清美)

大阪過労死を考える家族の会 報告

8月11日にZoomによる定期総会を開催しました。第一部の基調報告では、松丸正弁護士より「過労死等の救済の道を拓くために〜担当した労災認定と損害賠償事件から〜」と題して①脳内出血の後遺症が残ったとして新認定基準の改正により自庁取消され労災が認められた居酒屋店員の事案②労基署の持ち帰り残業時間否定の不当性と会社との和解③奈良県職員過労自殺の損害賠償事件判決④府立高校現職教員の適応障害発病についての損害賠償事件判決の4件の事案をご報告いただきました。

続いて、岩城穣弁護士より「北村仁さんと過労死家族の会」と題して、世間に広く過労死遺族や被災者の悲惨さを訴え、過労死家族の会活動に寄与された北村さんについて、当時を思い返しながらご講和いただきました。

特別講演では、全国家族の会寺西笑子代表より「遺族となった日からの心の内側の変化~突き動かしてきたものとは何か〜」と題して、ご主人様を過労死で喪った日から民事訴訟が解決するまでの10年9ヶ月間、心を奮い立たせ、ご主人様の名誉回復に努めてこられた心境について語っていただきました。

第二部の交流会では、参加者の近況報告をうかがい、互いに共感しながら有意義な時間を過ごすことが出来ました。

(西岡佳恵)

兵庫過労死を考える家族の会 報告

夫は、2013年4月川崎重工業(株)(川重)から、中国合弁企業(CKE)へ出向後、過重な業務及び単身での海外赴任のストレスに押しつぶされ、僅か3か月余りの7月に赴任先のマンションから飛び降り自死しました。私と幼い娘2人を残し、享年35歳でした。

夫は、セメントプラント装置の設計をしていました。専門分野以外のほとんど知識のない装置のトラブルにより、川重とCKEとの板挟みになって苦悩し、かつ、本来業務の滞留によって業務を大量に抱え込むこととなり、うつ病を発症し自死に至りました。

2016年3月労災認定となりました。労災認定がなされた後もなお事件と向き合うことなく、川重は安全配慮義務違反がなかったとして責任を認めていません。川重の責任を問うべく、反省と謝罪を求め2022年5月に提訴に至りました。人の命より会社の業務や利益を優先させ夫は自死にまで追いこまれました。川重にとっては、夫は3万人以上いる中の1人かもしれませんが、私達にとっては大切な夫であり父親です。川重は、夫の過労死に真摯に向き合っていただきたいです。どうか皆様、私達親子のご支援をお願い致します。

(兵庫K)

岡山過労死を考える家族の会 報告

岡山ではここ最近は新しい入会者もなく,コロナ禍の影響で真面な会の運営が出来ておりません。しかし,年に一度の過労死防止対策シンポジウムについてだけは何とか協力できている状況です。

11月11日(金)にイオンモール岡山内にある,おかやま未来ホールにて今回は岡山もシンポジウムを行うこととなりました。「生きること,働くことを,過労死問題を通じて考える」をテーマにびわこリハビリテーション専門職大学教授の垰田和志先生に,そして,「ハラスメントのない職場環境に向けて」をテーマに産業カウンセラーの三木啓子氏に講師となって頂き2部構成で講演を行ってもらう予定です。遺族の訴えは,四国過労死を考える家族の会の久保直純氏にお越しいただきます。

労働局側は何故かカスタマーハラスメントに強いこだわりがあるようで,今回,このように2部構成となりました。今まで以上に広い会場を用意してしまったので,参加者が少なかった時の不安が付きまとっております。

(中上裕章)

山陰過労死を考える家族の会 報告

突然の我が子との別れ、過労自死そして誹謗中傷、出雲労働基準監督署での信じられない言葉対応、何としても息子の名誉のためにと闘った13年無我夢中でした。そして、行政裁判・民事裁判とも完全勝訴となる結果に。長い裁判でしたが、これまで沢山の皆様に支えて頂き寄り添ってくださったから勝ち取った勝訴です。決して忘れません。忘れられません。そして、これからの労働社会が、健康で明るい社会に、若者達が希望を持って働ける社会になりますよう願っています。

全国過労死を考える家族の会の皆様、力強い心のこもったご支援に感謝とお礼を申し上げます。現在、13年間闘った経過を製本化するために役員と一緒に奮闘中です。
皆様、誠にありがとうございました。

(高木栄子)

四国過労死を考える家族の会 報告

9月17日今年度初の啓発授業が高知大にて行われました。高知大の中川先生の集中講義の2コマを頂き、まず、遺族発言として高橋幸美さんが50分、久保が40分、その後休憩をはさみ愛媛大学の長井先生による講義が60分その後、受講者からの質疑応答に30分というスケジュールでした。

高橋さんは、一人の母親として娘を失った心情を一言一言かみしめながら受講者に向けて、話されていて、時間が経つのを忘れるくらいの素晴らしいものでした。正直、その後の久保は、どのような内容にするべきかと非常に悩みました。と言いつつ40分という時間を使い、一人の父親、配偶者の心情を話させて頂きました。

長井先生は、最新の情報を取り入れられて、若者の過労死の現状・要因・政策について、受講者にわかりやすい内容の講義でした。質疑応答も活発で、60名参加の対面授業ならではではないかと思いました。昨今、WEBが多く取り入れられていますがやはり、我々遺族の発言は生でこそ、最も効力を発揮するのではないかと、その後の夕食会でも、歓談しました。

(久保直純)

福岡過労死を考える家族の会 報告

7月2日に福岡遺族交流会(Zinniaの会)を実施しました。感染症対策のため今回もオンラインでの会になりましたが、遠方からの参加も含め、8の方にご参加いただきました。その中には、福岡家族会設立初期にご参加いただいていたものの、その後他県に転居され、お目にかかれずにいたSさんご夫婦にもいらっしゃいました。これまで何のサポートもできず気になっていたため、このような形でご参加いただけたことに、世話人として嬉しく思いました。

遺児交流会についても話題に上がりました。親ひとりではなかなか子どもに体験させてあげられていないこと、例えばスキーやキャンプといったアウトドアでの活動も支援が受けられるのであればチャレンジさせてみたい、自然が豊かな九州にもぜひ来ていただきたい、といった意見もありました。

仕事について、子育てについて、日々感じる様々なことについて。泣いたり笑ったり怒ったりしながらも、お互いが想いを共有しあえる。そのような場を少しずつでも作っていけたら、と思っています。

(堀香)

東九州過労死を考える家族の会 報告

東九州過労死を考える家族の会は、大分、宮崎、長崎、熊本の4県に遺族会員がおられ、全員集まっての交流はなかなかできませんが、11月の過労死防止月間に行われるシンポジウムに、私が参加させていただくことで、現地の会員さんと交流する機会を持ちたいと考えています。また、会員さんが、他県のシンポジウムにも参加できるよう、交通費と宿泊費を賛助する取り組みも行っています。各地で講演して下さる先生方や遺族の情報をお知らせして、ぜひ、九州内のシンポジウムにも興味を持って参加していただけたらと思っています。

現在、東九州家族会で係争中の案件は1件だけです。長崎のご遺族で、2017年にご子息をパワハラと過重労働で亡くされ、民事裁判を闘っておられます。宮崎と長崎は地理的に遠く、裁判傍聴などの支援はなかなかできませんが、精神面や経験者としての助言など、可能な限りの支援をしていきたいと考えています。

(桐木弘子)

毎年11月は、「過労死等防止啓発月間」 です!
過労死等防止対策推進シンポジウムは
47都道府県48会場(東京は2会場)で開催
申し込み> https://www.p-unique.co.jp/karoushiboushisympo/

2022年度全国過労死を考える家族の会の統一行動タイムスケジュール

1日目日程:11月9日(水)
要請行動~中央シンポジウム
9:50  集合、打ち合わせ会場:東京弁護士会館 5階
10:00~ 地方公務員災害補償基金本部へ移動
10:10~ 厚生労働省へ移動
10:30~ 厚生労働省・地方公務員災害補償基金本部要請 開始
11:40~ 厚生労働省前へ移動
11:45~ 宣伝行動:厚生労働省前
12:10~ 厚生労働省前~イイノホールへ徒歩移動→昼食は各自でとる
13:00~ 東京中央会場・啓発シンポジウム開会(12:30開場)
16:00   終了
※夕食は各自でとる。

2日目日程:11月10日(木)
全国家族の会総会・交流会
総会 : 9:30~10:20
交流会:10:30~12:00
※参加者は各地の代表へ申し込んで下さい。

会場:主婦会館プラザエフ 3F コスモス会議室
〒102-0085 東京都千代田区六番町15
電話: 03-3265-8111
JR四ツ谷駅 麹町口から徒歩約2分

全国過労死を考える家族の活動

【主な活動報告】

3月30日 全国過労死を考える家族の会ニュース第86号発行:全国家族の会
4月2日 過労死弁護団全国連絡会議拡大幹事会:東京丸の内&オンライン
4月8日 第1回遺児交流会準備会:WEB会議(zoom)
4月23日 全国過労死を考える家族の会世話人会:WEB会議(zoom)
5月14日 第12回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
5月21日 第1回オンライン研修会:WEB会議(zoom)
5月23日 第2回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
5月25日 第1回過労死防止啓発周知広報検討会:WEB会議(zoom)
5月30日 過労死防止対策推進協議会事前会議:WEB会議(zoom)
6月2日 第22回過労死等防止対策推進協議会:TKP新橋カンファレンスセンター
6月10日 第2回遺児交流会準備会および第2回オンライン相談会準備会:WEB会議(zoom)
6月11日 第13回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
7月1日 第3回遺児交流会準備会および第3回オンライン相談会準備会:WEB会議(zoom)
7月9日 第14回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
7月16日 過労死防止全国センター総会:WEB会議(zoom)
7月23日 第2回・オンライン研修会:WEB会議(zoom)
7月26日 (故)岡村親宣先生追悼出版記念シンポジウム:連合会館ホール
7月29日 第3回中央シンポジウム準備会:WEB会議(zoom)
8月13日 全国家族の会事務局会議:WEB会議(zoom)
8月20日 第15回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
8月26日 日本労働組合総連合会幹部と面談:連合会館
8月31日 第4回交流会準備委員会:WEB会議(zoom)
9月1日 いのちと健康を守る全国センター 労働行政検討会:WEB会議(zoom)
9月3日 全国家族の会世話人会:WEB会議(zoom)
9月10日 過労死防止学会第8回大会(分科会・共同シンポジウム・会員総会)
9月11日      〃      (分科会・共通論題):(京都)龍谷大学 響都ホール+オンライン
9月18日 第16回全国家族の会30周年記念誌準備会:WEB会議(zoom)
9月24日 第3回オンライン研修会:WEB会議(zoom)


 

【発行】全国過労死を考える家族の会(2022.9.26発行)
【事務局】東京駿河台法律事務所内 TEL. 03-3234-9143
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