全国過労死を考える家族の会

全国過労死を考える家族の会ニュース 第70号

【発 行】 全国過労死を考える家族の会  (2017.1.21発行)
【事務局】 東京駿河台法律事務所内  ℡ 03-3234-9143
東京都千代田区神田神保町2-3-1 岩波書店アネックス7階


命より大切な仕事はありません
心をひとつに 過労死ゼロをめざし歩みを進めましょう!

全国家族の会は、1991年結成以来毎年11月に国へ認定基準の緩和を求め被災者の早期救済と過労死予防の要請をおこなってきました。昨年は、労災と公災あわせて25名が個別要請し働く実態の過酷な状況を訴え、実態に沿った判断を訴えました。一昨年に続き「過労死等防止について考える議員連盟」の議員が同行していただいたことで国の対応改善を求め一歩前進の要請が実現しました。中には申請した案件が数年置き去りにされ地元で改善されなかったのが、要請した数日後、早急に着手するとの報告があり、四半世紀以上地道に続けてきた家族の会要請行動の効果が発揮されました。
また、昨年10月「白書」の公表と電通の過労死事件、政府の「働き方改革」が動き出したことについて、この三つがクローズアップされ、新聞各紙、各TV局、週刊誌、インターネット配信等々のメディアから海外メディアまで多くの取材が殺到しました。
一つ目の白書では、国の調査機関により働く人の調査研究から突出した労働時間が示され課題が浮き彫りになりました。次回の白書では一歩踏み込んだ過重労働に迫り過労死予防の具体策につなげることを強く望みます。
二つ目の電通事件は、大企業の横暴で若者の尊い命が奪われました。自分の命に代えてでも守りたかった親御さんの心中を想うと遣り切れません。電通はこれまでも1991年、2013年、2015年に、若者の過労死を繰り返しました。2000年に最高裁で出された「電通判決」は、同様の事件で必ずと言っていいほど引用されますが、電通では教訓が活かされなかったと言わざるを得ません。
働く人の安全管理を労使任せにしてきた日本の労働行政の在り方が根底から問われるものです。
三つめは「働き方改革」について、政府はやっと長時間労働の是正、36協定の見直しに着手することになりましたがポーズだけで終わらせてはならない問題です。労働時間だけ規制するのではなく過少申告や隠れ労働時間を防止する労働時間管理の客観的把握を省令ではなく法律に位置づけることが必要です。一方、最も注視すべきことは「働き方改革」に潜んでいる「高度プロフェッショナル制度」と「裁量労働制の拡大」いわゆる「残業代ゼロ法案」がセットになっていることです。これは私たちが推進する「過労死防止法」に逆行するもので容認できません。まさに正念場を迎えます。命より大切な仕事はありません。
今年こそ過労死をなくす方向転換へスタートさせ、心ひとつに過労死ゼロをめざして歩みを進めましょう!(寺西 笑子)

全国過労死を考える家族の会 総会

日時 11月10日(木)午前9~12時 場所 東京セントラルユースホステル 会議室
進行・中上裕章 世話人代表挨拶・寺西笑子 議長・中上裕章 書記・中原のり子
1 2015年度活動報告(寺西) ⑵ 2015年度決算報告・会計監査、遺児の会決算報告・監査(杉林)
(3) 2016年度活動計画案(寺西) ⑷ 2015年度予算案(杉林)
⑸ 2016年度世話人選出(寺西) 代表世話人:寺西笑子(京都)会計:杉林和子(名古屋)センター会計:吉村りよみ会計監査:伊佐間佳子・藤田睦美(名古屋)各地区代表:菊地悦子(北海道)前川珠子(宮城)中原のり子(東京)小池江利(大阪)猪又としみ(長野)保坂忠史(山梨)尾崎正典(静岡)鈴木美穂(名古屋)中嶌清美(京都)森川えみ(兵庫)中上裕章(岡山)三浦一雄(山陰)遺児の会世話人:渡辺しのぶ(東京)内野博子(名古屋)
⑹ 2016年度事務局選出(寺西) 寺西笑子(世話人会・総会資料・活動全般)鈴木美穂(厚労省要請担当・全国ニュース印刷発送・総会資料印刷)工藤祥子(地公災要請担当・全国ニュース編集・総会資料作成)杉林和子(会計業務)吉村りよみ(過労防全国センター会計担当・つどい、宿泊者参加者担当)渡辺しのぶ(遺児交流会担当)

定期総会報告

全国から新しい方も含め40名ほどの会員の参加がありました。例年に倣って議事内容を進めていきましたが、新しい「東九州過労死を考える家族の会」の誕生ご苦労話を披露して頂きまして、メールだけでは伝わらない感動を共有することが出来ました。公務災害・基金本部交渉や厚生労働省交渉には、国会議員さんも駆けつけて下さり、今後も当事者からの発言と国会議員さんからの見守りの重要性も再確認できました。厚生労働省交渉で以前は、個別要件は承りません!という主張から「今後は、きちんとした対応をしたい」と課長さんから前向きな発言もあり、今までの先輩方のご苦労の軌跡が法律制定に繋がって更に少しずつ幅が増えてきたという印象を持ちました。このような地道な活動が被災者救済への道となり、過労死防止の大きな一歩を踏み出しているという実感がありました。個々の痛みは深く耐えがたい苦痛を伴いますが、これからも会員同士の連携を密にして国・自治体への働きかけ以外でも、お互いの悲しみの共有や立ち直りのための支援体制の必要性を議論の中でも話し合われました。(東京・中原のり子)

厚生労働省への要請行動

長年、勤労感謝の前の金曜日、厚労省と基金本部への要請行動を続けて来ましたが、厚労省主催のシンポも絡んで来て、今年は11月9日(水)の要請行動になりました。全員が都合の良い日は無いのですが、長年守ってきたものがここ数年、崩れつつあります。仕事をされている方には、休みの取りにくい日程でした。
厚労省は、防止法の成立後、対応が変わり、大きな会議室が用意され、私達の参加者が少なくて、部屋の広さがより広く感じられました。29回目を数える要請行動に、寺西代表は、「働く職場が大変、認定基準に合わない働き方をさせられている。改善に結びつけて欲しい」と要請され、全国からの要請書の綴を手渡しました。
また、国会議員も山井、泉、大西の三名の先生方が同席していただき、皆さんの要請にお口添えを頂きました。厚労省からは、総務課の村山課長以下、8名が同席。
自己紹介も有りませんでしたので、玉木先生から出席者の名前と部署名を要求されました。大西議員が、「形式的でなく総合的に因果関係を判断して欲しい。労働時間の配慮、労働時間の把握、遺族や家族の立場にたった判断をして欲しい」と要請されました。厚労省は、「働く人の立場に立った対応や、しっかり取り組む、また被災の根絶を願う」等の回答がありました。狭い会議室で、椅子を分け合ったことや、立ち席での要請行動は昔の事に成りそうな行動でした。(厚労省要請担当 鈴木美穂)

地方公務員災害補償基金への要請行動

11月9日の午後からの中央シンポジウムに合わせて、午前中に基金本部へ要請行動を行いました。
今年より松丸正弁護士に担当して頂く事になり、大変心強くなりました。
毎年の事ですが、公務災害は被災者は多いのですが、申請そのもののハードルが高い為、申請者が少なく、今回の要請行動でも要請者を探すことがまず大変でした。
今回は解決者2名、係争中の方5名のうち、出席者3名(4名代読)支援者4名と弁護士の合計6名と途中から泉健太議員も加わって頂きました。基金側は2名と、事務局長の3人でした。要請者のうち5名は、もう10年以上基金に引き伸ばされている方で、基金がいかに時間を掛けて遺族を苦しめているのかが議論になりました。
また松丸弁護士より、公務災害も厚労省並みの認定基準、認定率にする事、聞き取りをする事、判例を重視して被災者の補償に勤める事、特に被災事案の多い教師について、別途認定基準の見直しや調査などをする旨などなど、多くの問題点を的確に指摘して頂き、基金側も回答に苦慮する場面もありましたが、基金側は例年通り形式的な回答に終始致しました。
またかたくなに過去の基準にとらわれ過ぎ、時代に即していない判断、基準を変えないという姿勢の基金に対し、泉議員から「時代は変化していて厚労省でも被災者支援は進んでいる。基金本部も状況に即して変わっていき、被災者を救済するべきである」と力強いお言葉を頂きました。基金本部要請行動で、国会議員の方が来て下さったことは初めてであり、基金本部にとってもプレッシャーだったと思います。今後も、基金本部の上に立つ総務省の方なども同席して、現実を見て頂けたらと思います。(公務災害要請担当 工藤祥子)

遺児交流会 in 清里

今回の過労死遺児交流会は「過労死等防止対策推進法」による民間団体の活動の支援の一環として、国の委託事業という形で実施されました。開催前に、準備委員会が発足し、家族会の世話人、厚労省、企画会社の担当者の他に新潟大学の世取山洋介教授、神戸学院大学の高橋哲教授にメンバーに加わって頂きました。世取山先生は大学で教えるかたわら子どもの権利条約に携わっておられ、日本の子どもの現状をジュネーブで報告したり、報告書をつくる活動もされています。高橋先生は臨床心理の専門家として、阪神・淡路大震災の時、子どもの心のケアを担当されました。その後、東日本大震災の後、いち早く現場に入り子どもの心のケアの体制を整える活動をされています。子どもについてスペシャリストのお二人を加えて、何度も準備委員会がもたれました。その中で、過労死遺族の心理状態の特殊性やつらい死別体験を通して心に受けたダメージの大きさを理解して頂き、皆様のご理解とご協力のもと、細かいところにまで配慮したプログラムを作ることができました。また、ボランティアや企画会社など外部からの参加者に対しては、遺児たちの気持ちを考慮し、言葉遣いや態度などにも気をつけるようお願いしました。
開催場所は山梨県の清里にある清泉寮、ここで子どもたちはスキーなどの野外体験プログラムに参加することになりました。父親がいないとスキーに連れて行けない、母親だけではアウトドアの体験をさせてあげられない、といった会員さんの声をもとに考えられた活動内容です。また、親たちにはその間に心理や社会保障の専門家の講演や、参加者同士で語り合うピアサポート、専門家による個別相談といった充実したプログラムが用意されました。
今回は全国各地域の世話人さんにご協力頂き、参加対象の会員さんにはほとんど案内状をお送りすることができました。その結果、北海道から九州まで各地域から15家族、41人が参加して下さいました。中にはこの企画に参加するために家族会に入会したご家族も何組かいました。また、親だけの参加についてもお問い合わせを頂き、過労死を体験した子どもの心のケアについてニーズがあることを改めて感じました。
当日は全国から集まった会員さんと家族会関係者、ボランティアスタッフ、準備委員会や企画会社の人達など総勢60人余りで現地に向かいました。夕食時に初顔合わせの参加者は少し緊張した様子でしたが、食後に子どもたちが集まって遊びだし、それを見ながら親たちも徐々に話が弾んできました。露天風呂ではしゃいでいる子どもたちを見守りながらリラックスした皆さんは、1時間以上もお話をしていました。満天の星空に子ども達の歓声がいつまでも響いていました。
翌日はいよいよイベント開催日で、厚労省から過労死等防止対策推進室の佐藤企画官も駆けつけて下さり、オープニングセレモニーが行われました。その後は大人と子どもに分かれてそれぞれのプログラムに参加です。大人達はまず、心身ともにリラックスする方法を教えて頂きました。過労死遺族は背負っているものが大きく、重いので、たまには肩の力を抜き、心を解きほぐす時間が必要との先生のご配慮でした。心理テストなど皆で笑ってリラックスした後、自己紹介をかねて皆さんのお話を聞きました。この内容はここでしか話せないと言いながら、今まで一人で頑張ってきた思いを語り、それに対して「わかるわ」とか「つらかったね」というたくさんの励ましの言葉があり、思わず涙ぐむ場面もありました。過労死は他の死別体験と違い、大切な家族を亡くした後、「悲しい」「辛い」だけでは終わりません。悲しみを抱えた中で各種手続きや労災申請、裁判などに取り組まなければなりません。その上、子育ての責任も自分一人で抱えなければならい遺族の思いは、体験した人でないと、なかなかわかってもらえません。「地元でこんな体験をした人はいない、自分は孤独だった。ここに来てやっとわかってもらえた」という言葉から参加者の思いが伝わってきました。親たちが抱えていた辛さを分かち合っている間に子どもたちはそれぞれ楽しい体験をしていました。今回のスキーでは子どもたちが安全に楽しく活動できるようにスクールの先生とボランティアスタッフさんがついてくださいました。そのため、4才や6才の小さな子どもも親がついていなくても安心して楽しむことができました。また、清泉寮の野外体験プログラムでは、参加者の中学生以上の子どもたちが、小さな子どもたちの世話をするボランティアを快く引き受けて下さり、森の中でみんなで素敵な時間をすごしたようです。以下がお寄せいただいた参加者の声です。

森の学童コース
森の学童では子供達の秘密基地を作りたいという要望に応えてみんなで秘密基地作りをしました。木の実や枝、葉などたくさん拾い集めて子供達のイメージを基にした立派な基地が出来ました。4歳から6歳の女の子4人でたくさん話し合い「雪でパーティーをする」という斬新で可愛らしいアイディアも生まれました。秘密基地の中に入って、サポーターさんの持って来てくれた温かい紅茶でパーティーをしました。子供達は積極的で生き生きととても楽しそうでした。(陽彩奈)

アニマルトラッキングコース
アニマルトラッキングでは、レンジャーと僕たち6人で、森を探検しました。動物のフンや足跡を見つけながら、小川を渡り、獣道を通って自然を満喫しました。途中、小さな池に足を滑らせ、濡れてしまうハプニングもありましたが、笑顔のまま、池に張った氷を割って遊んでいました。最後には、二頭の野生のシカを発見できました!子供達も大喜びでした。僕も楽しい時間を過ごせました。(樹矢)

スキーコース
スキーグループは好天に恵まれ、初心者は現地の指導員にレッスンしていただき、ゲレンデデビューしました。また、自由に滑りたいグループは、リフトに参加者同士が色々な組み合わせで一緒に乗り、到着までのわずかな時間を利用し友達の輪を広げ、滑走中に転んだ子を周りで支え、先に進んだ子は皆の到着まで待ち、一体となってスキーを楽しむことができました。楽しげな様子を見守るボランティアスタッフとも積極的にコミュニケーションを取り、参加者から「また来たい」と言ってもらい、とても楽しい経験になりました。中原秀之 ボランティア・スタッフ代表」

親が一人になると、どうしても多忙になり親子で過ごす余暇の時間が少なくなってしまいます。そこで、今回は親子そろって楽しい時間を過ごそうという企画もあり、厚労省と企画会社のお骨折りでさかなクンを呼んで頂きました。親と子のそれぞれのプログラムの後はいよいよさかなクン登場です。さかなクンの講演は水の循環の話から、清里の近くの諏訪湖の魚についての話になり、クイズがあったり、その場で書くイラストがあったりと大いに盛り上がり、最後は環境保護についても学べてしまうという盛りだくさんな内容でみんな大喜びでした。さなかクンは遺児交流会のためにイラストを描いて下さり、それを囲んでみんなで写真を撮りました。みんなで楽しく過ごした一日のあと、子どもたちはさらに仲良くなり、夕食後は大トランプ大会をしていました。小さな子達は皆で塗り絵をしたり、走り回ったり、どこにこんなエネルギーが残っていたのかと思うほど元気いっぱいでした。子どもたちから、4泊が良かった(せっかく仲良くなったと思ったらお別れだから)とか、また、会えるの?とか、また、ここに来たい、スキー楽しかった、お姉ちゃんと仲良くなれて楽しかった、などの声が上がっていました。以下は大人からの感想の抜粋です。
※皆様、本当にどうもありがとうございました。とても楽しく過ごすことができました。また、たくさんの方のお話を聞き学ぶことも多くありました。また皆様にお会いできるのを楽しみに待っています。
※皆さん、ありがとうございました。幼い娘も近い年頃のお友達、素敵なお姉さん達に遊んでもらって大喜びでした。私も皆さんとのお話で力をもらえました。また、次の機会でもよろしくお願いします。
※子どもたち「清里楽しかった~」と電車に乗りました。また、来年も楽しみにしています。お世話になりました。私は、あの「絶望の底に突き落とされた日」誓いました!子どもたちの「楽しかった~」のために頑張る!その言葉が聞きたくて、大変な事もやってのけている毎日でした。でも、今は皆さんに繋がれてこんなに楽しい時間を共に出来て、一人で頑張らなくても良いんだと思うと心底嬉しいです。
※今回はありがとうございました!楽しかったです!来年も参加したいです。一人で悩まずいいこと、心強くなりました!いろいろな話聞かせて頂きありがとうございました。
※今回初めて参加して、ほんとに良かったです。みなさんに励まされました。一人じゃないってこれからは思えるんじゃないかと思います。それから子どもたち、みなさんに本当にお世話になりました。とてもありがたかったです。また来年もいきたいです。

翌日はなんと大雨で、野外活動はとてもできない天候でした。また、開催日前、北海道は大雪で交通機関がストップしており、1日前だったら北海道からは来られない状況でした。毎年遺児交流会を行っていると、この子達は大きな力に守られていると感じることがあります。これまでもぎりぎりのところでOKだった出来事がたくさんあります。この子達のことを心配しながら、逝かれなければならなかった人の想いがあります。それに加えて、今回はさらに多くの人に関わって頂きご協力を得ました。辛い体験をした子どもたちには心のケアが必要です。大きな災害の後は、心の専門家が派遣される体制がようやく整いつつあります。過労死遺児も働くことで親が亡くなるという、とうてい納得できない体験をしています。このような子どもたちにも心のケアが必要である、と家族の会の皆様のご支援で続けてきた活動ですが、今回初めて厚労省から公的な支援がありました。これも、寺西さんを初めとした家族会の皆様の活動のおかげです。皆様のご協力で辛い経験の中で、頑張っている子どもや親たちがとても楽しい時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。今後とも過労死遺児のためにご支援よろしくお願いいたします。
(遺児交流会担当 渡辺しのぶ)

各地のニュース
~シンポジウム特集~

北海道

11月23日(勤労感謝の日)、札幌市教育文化会館で「過労死防止シンポジウム」が140名の参加で行われました。
北海道労働局から労働基準監督課長新田稔氏の挨拶後、「ワタミ事案から過労死防止を考える」と題して玉木一成弁護士が基調講演をされ、新人社員が入社2か月で過労自死に至った経過や和解までを報告しました。
その後、被災者遺族2名が体験を話しました。
2010年3月、Sさんは食品製造販売会社の支店長だった夫(当時55歳)を、過労自死で喪い労災が認められず行政裁判で勝訴するまでの思いを話しました。
また2012年4月、KKR札幌医療センターへ新卒看護師で入職したSさんの長女(当時23歳)は、5月には90時間以上の時間外労働がありながら長時間労働は改善されず「うつ病」を発症し12月に過労自死をしました。
Sさんは労災認定されなかった悔しさや苦しい思いを話しました。
この病院はSさんの労災申請で未払い残業代が発覚し、労基署から是正勧告を受け約700人の職員に未払い残業代7億5千万円を支払っています。
後日、Sさんは業務外認定取り消しを求めて札幌地裁に提訴しました。
「北海道過労死を考える会」からは、結成して4年が過ぎ7家族から18家族になったことや、12月26日に山梨県で行われる「遺児交流会」の交流会へ2家族が北海道から初めて参加できることなどを報告しました。
皆川弁護士の閉会挨拶で終了し、玉木弁護士を囲み懇親会が行われました。
(菊地悦子)

東北

過労死等防止対策推進シンポジウム in みやぎ 2016
11月26日エルパーク仙台スタジオホールにて「過労死等防止対策推進シンポジウム in みやぎ 2016」を開催しました。
今年の宮城会場のテーマは「過労死防止事例に学ぶ」。
臨床心理士、小林智・三道なぎさ両先生の、過労死寸前で生還した三名の労働問題当事者の事例報告とともに、当事者の皆さんに声の出演をお願いし、死を思う瞬間、そこで何が起きていたのか。について詳しいお話を伺いました。
まだ被災から日が浅い状況で、ご自身の体験を語るのは、勇気のいる事だったことでしょう。しかし、この問題の本当の当事者は、亡くなっている場合は「被災者本人」であり、生きている場合は、労働問題当事者ご自身。更に突き詰めると、いま社会で働くすべての皆さんです。遺族の悲しみは、それがいかに残酷であろうと、二次災害に過ぎません。
今回のシンポジウムは、過重労働や、その結果として起こるメンタル障害が、「何」を引き起こすことで、死につながっていくのか。それにはどのような段階があり、段階ごとにどんな介入が可能なのか。を、会場全体で考えるすばらしい機会となりました。社会で働く全員に共通する、深刻だけれども改善可能な課題としてこの問題を提起する事ができたこと。113名の参加者に恵まれ、一体感のあるシンポジウムとなりましたことを心から感謝しております。今年も、がんばりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
(前川珠子)

東京

11月9日霞が関イイノホールにて過労死防止シンポジウムが行われました。会場500席ほぼ満席で、多くの方の関心の高さがうかがえました。
過労死防止センターの報告として、川人弁護士より4件の過労死のケースの認定に至った経緯など詳しく説明がありました。特に広告代理店社員のケースではタイムカードの写しがあり余りにも酷い長時間労働に絶句してしまいました。人間として扱われていないと憤りを感じました。
ストレス対策の講演を北里大学の堤先生よりありました。長時間労働が虚血性心疾患や脳血管疾患になるリスクが上昇するというデータをもとに説明がありました。労働者本人、会社側も長時間労働が死に直結するということを意識して欲しいと思いました。
働き方と過労死問題の公演を金沢大学の伍賀先生よりありました。正規雇用と非正規雇用の現状を聞き、増加する非正規労働者に正規労働者の責任や業務の負担が増える等の問題点も詳しく説明がありました。
過労死遺族の体験談では宮城の前川さん、電通社員の娘さんを亡くされた高橋さん、茨城の岩田さん、和歌山の小池さんが登壇し遺された家族のつらく苦しい思いや過労死のない社会になって欲しいと訴えかけました。会場からはすすり泣く声も聞こえてきました。
11月18日は八王子にてシンポジウムがあり、88名の参加がありました。地元尾林弁護士より講演があり、過労死の定義や尾林弁護士が関わった17のケースの詳しい経緯を説明してくれました。今回、「過労死日本の働き方を変える」という題で家族の会東京代表の中原のり子さんにも講演していただきました。会場の参加者は最後まで真剣に聞き入っていました。
(小林明美)

山梨

2016年11月27日(日)過労死防止対策推進シンポジウムが山梨県地場産業センター(かいてらす)で開催され60人が参加しました。まず開会の挨拶を山梨労働局の中井正和監督課長が述べた後、川人博弁護士が「山梨県での過労死第1号の労災認定と長時間過密労働の現状と実態」と題して講演。明治時代の悲惨な製紙労働者の時代から電通過労自殺にも触れ、「2000年の最高裁判決」にふれて「過労死を発生させる会社は、社内に不正問題がありがち、会社自身が病んでいる。」と強く指摘、労働組合の役割とともに、労働者に連続11時間のインターバル時間を保障することなど、法的規制の実現を主張しました。
パネルディスカッションでは、産婦人科の看護師、高校教諭、過労死家族の会から実態報告があり、家族の会の深澤佳人さんから会の記念誌を使って多角的に述べました。弁護士からの適切な助言もあって、中身の濃い討論ができました。
最後に、働くもののいのちと健康を守る山梨県センターの佐藤理事長から「安部政権の進める残業料ゼロ法案は危険、生きがいをもって働ける職場づくりにがんばろう」と呼びかけました。
世話役のプロセスユニオンからまとめが出されると聞いています。今から楽しみです。
(深澤佳人)

長野

”長野シンポジュウム”は、11月26日(土)「長野県教育会館」において85名のご参加をいただき、「長野労働局労働基準部長」の”「働き方改革」を推し進め、過労死をなくしていきたい!”という開会挨拶を受け、基調講演の前半を「森岡孝二先生」から、過労死の定義及び歴史と現状、過労死防止法制定の経緯や大綱の説明、今後の問題点と取り組みの必要点等々分かり易くお話しして下さいました。後半は、「西垣迪世さん」が、過酷な勤務状況の中で、息子さんが被災していった経過を、親として辛く悲しい思いとともに切々と語られ、会場内涙に包まれる中、労災認定の取り組みや過労死防止法制定に向けての生々しい経過についても、皆さん終始熱心に聞き入っていました。
長野家族の会からは、31歳の息子さんを昨年亡くされ、労基署からの裁定通知を待っている「小池宣子さん」が、苦しい思いを頑張って話して下さいました。再び会場は涙に包まれ「なぜ仕事をしながら若者が亡くならなくてはいけないのか?」との問いかけに、若者使い捨て社会への憤りと、過労死はあってはならないという思いを、参加者一同強くするものとなりました。
会場発言として松村弁護士が、「労災が認められない人が多すぎる」と改めて指摘して下さいました。
(猪又としみ)
(「猪又労災裁判」は最高裁に上告)

愛知

名古屋から
東京でのシンポを終えたら、12日は岐阜、17日は三重、23日は愛知でした。
12月に判決を控えた、遺族の伊藤佐紀子さんの発言は、とても力強いものでした。12月22日、岐阜地裁は「公務と精神疾患には因果関係が認められる」と、労災を認めました。提訴以来8年、丁寧に資料を見ていただいた裁判長に感謝。長かった一審のここで、終結させてあげたいです。
三重のシンポは夜開催になりました。会場も四日市から津に代わり、会社帰りや地元大学の学生さんら、若い参加者が多く、労働局長、連合会長、労連議長の挨拶後、兵庫から西垣さんが遠路お越しいただいて基調講演。防止法の正立過程から今後の取り組み、またビデオやラジオ録音等を織り込んだ話は90分では足りない内容でした。参加して下さった10名位の学生さんと交流できました。労働法の講義を受講されている学生さん達で、大阪、京都、三重とシンポに参加され、出身地の九州に家族会が出来る事を喜んで下さいました。遺族の話は、お兄さんを亡くされた妹さんの話で、認定させたい内容です。
愛知のシンポは230名の参加。今年はパワーハラスメントの造語を創られた岡田康子さんが「パワーハラスメントを防止するために」と題して基調講演。報告もパワハラに関して。遺族の報告も職場のいじめによる自死家族からの報告。担当する弁護士さんも「職場いじめはなぜおこる?」と題して講演。三件とも自死の事件をふまえたシンポに悲しくなりました。
(鈴木美穂)

京都

京都のシンポジウムは、11月16日夜、池坊短大で開催されました。櫻井純理(立命館大学教授)氏の講演と京都家族の会から3名が発言しました。
櫻井先生は、ご自身が働いていた企業で、なぜ長時間労働をする人がいるのかと考えてこられたこと、過労死白書のデータから、長時間労働や過労死の現状と、その問題点を指摘されました。大学の授業の中での、過労死問題に対する学生の意見を詳細に分析されました。真剣に取り組んでいる学生の姿があり、とても興味深く聞きました。わかりやすい内容で心に落ちる講演でした。
家族の発言で、Aさんは、証拠集めの苦しさ、また労災認定されても、小さな子どもに大きな心の負担があり、親子で苦しんでいることを話されました。Bさんは幼い子どもを残して夫が過労死して、苦しんで、死んだ方が楽だと思うほどの苦しさがありました。現在は裁判中であることを話されました。Cさんは、息子さんの事件では労災認定されなかったこと、裁判で友人の証言が認められなかった事、その理不尽さを話されました。懸命に働いて命を落とした家族のこと、過労死のない社会をと、苦しい思いを話してくださったことは、本当に尊いと思いました。もっともっと多くの方々に話を聞いてほしいと思いました。
過労死防止京都連絡会では、広く労働組合に働きかけていくこと、今後の活動として過労死白書の学習や、Bさんの裁判闘争に全力を傾けることが討議されています。
(中嶌清美)

大阪

大阪過労死防止啓発シンポが行われました
11月11日JR大阪駅北隣のグランフロント、コングレコンベンションセンターにおいて、大阪過労死等防止対策啓発シンポジウムが行われました。参加者は486名で、そのうち企業の参加者が約8割ありました。
大阪労働局労働基準部長の開会挨拶、大阪府社会福祉労務士会副会長の来賓挨拶から始まりました。
報告1は、「過労死防止に向けた大阪労働局の取り組み」と題し大阪労働局労働基準部監督課課長が、報告2は、「過労死防止施行から2年」と題し過労死防止全国センター事務局長岩城 穣弁護士から報告していただきました。
基調講演は、代々木病院精神科医師 天笠 崇氏が「職場のメンタルヘルスの現状と、改善への方策について」をご講演くださいました。
講演後、過労死をテーマにした桂 福車さんの「エンマの願い」が演じられました。福車さんご自身が涙ながらで、参加者からもすすり泣く声が聞こえていました。
過労死遺族からの報告は家族の会から5名の遺族が発言しました。「仕事により大切な家族を亡くした悲しみは一生癒えることはない。疲弊した働き方を強いられるのではなく生き生きと働くことの出来る社会にしてもらいたい」と切々と訴えました。その後、松丸 正弁護士の閉会挨拶で終了しました。
(小池江利)

兵庫

自治体を含む広範な団体とともに地域の過労死防止活動を進めよう!
過労死防止法施行3年目の11月22日、兵庫県民会館において第3回兵庫シンポジウムが360人を超える参加で開催され、過労死防止を願う熱い思いに包まれた。主催は厚労省、後援は兵庫県・神戸市・姫路市・西宮市・尼崎市。協力は県社労士会・県弁護士会・県ひょうご仕事と生活センター・過労死防止兵庫センター等。労働局長・県副知事・神戸副市長のご挨拶。メインは、川人博弁護士の基調講演「働く者の健康と健全な経営」と、桂福車さんによる息子がモデルの過労死落語「えんまの願い」。兵庫センター活動報告、学生のメッセージ、遺族発言。労働局による県労働現場の詳しい実態報告は翌朝新聞の一面記事になり、企業による労働時間管理の改善発表も画期的であった。今回シンポの打ち合わせは、労働局会議室にて、労働局・県・神戸市・社労士会と兵庫センターで行われ、企画・役所窓口や団体によるチラシ配布や広報誌による広報・参加要請等さまざまな取り組みが行われた。JR駅ホームのポスター掲示、神戸市担当者と兵庫センターによる街頭でのティッシュとチラシ配布等。もちろん、労働団体にも協力を仰いだ。まさに、地域ぐるみで取り組んだシンポジウムであった。兵庫県下に広く過労死防止を発信したいという私たちの目標が地域のご協力で進みつつあることに感謝したい。
(西垣迪世)

岡山

岡山での過労死等防止対策推進シンポジウムの報告
11月12日(土)に岡山労働福祉事業会館において過労死等防止対策推進シンポジウムが行われました。参加者はマスコミ関係者を含めて57名でした。先ず,岡山労働局労働基準部長佐々木英一氏の挨拶から始まり,その後関西大学名誉教授森岡孝二先生の「長時間労働の現状と過労死防止法の課題」の基調講演が行われ,電通の女性新入社員のケースなど,過労を理由とした自殺者が後を絶たない現状を紹介され,疲労の蓄積は心身を壊し,過労死・過労自殺の最大の要因は長時間労働にあると述べられました。また,企業が残業の削減を掲げながら業務量を減らさなかった場合には,持ち帰り残業が発生することも指摘されました。更に,行政による企業への監督を強化するなど,より実効的な取り組みが必要だと訴えられました。次に,落語家の桂福車氏による過労死問題をテーマにした落語「エンマの願い」を披露され,マクラから笑いが起こり,本題では過労死遺族の事例を落語に取り入れ,過労死が如何に被災者本人や遺族が悲惨な状況に追い込まれるかを語られました。落ちはどうだったのかはよく覚えてはいませんが,面白いながらもシリアスな噺でした。今回のシンポジウムは昨年と比べ,過労死・過労自殺問題が非常に分かり易かったように思えました。
(中上裕章)

山陰

島根シンポジウムIN浜田開催(報告)
私達は、第3回過労死等防止対策推進シンポジウムIN島根を開催するにあたり、今回から島根県内8市段階を一巡することにしたのです。初回・2回目を松江市で開催していましたが、過労死問題等を広く島根県民に認識を深めていただきたく、県内を東西に分けて3回目の今回は私の地元、浜田市で開催いたしました。浜田市開催の背景には、この10年間で2名の男性係長が自死されており、『市長はじめ、全職員が猛省すべきことに目覚めてほしい』という願いを込めての開催でした。
私が一番心配したのが、基調講演の講師選出でした。1回目は寺西笑子全国家族の会代表、2回目は岩城穣弁護士にお願いした経過から、講師選出がとてもプレッシャーとなり考え込んでしまいました。
ふと思い出したのが、自死遺族であり、自死遺族支援弁護団として過労死裁判を積極的に取り組まれている、広島弁護士会所属の「佃祐世弁護士」に懇願し実現しました。今年も基調講演が参加者にとって、過労死等防止対策に繋がったと思います。会場内では、佃弁護士の講演に涙する方々が目立ちました。
もう一つの心配事は、参加者数でした。浜田市は松江市と比較して人口は三分の一(約6万人弱)、シンポジウム会場定数は120名、本当に集まるだろうかと毎日毎日、出会う人には必ず声掛けしてPR活動に徹しました。浜田市長・経営者・勤労者・市職員・一般含め160名を超える参加者に、テーブルなしの椅子席だけにしたため苦情をいっぱいいただきましたが、無事に終えてホッとしております。
(三浦一雄)

東九州

東九州過労死を考える家族の会」からのご報告
「東九州過労死を考える家族の会」は、平成28年11月22日、大分シンポジウム開催に合わせて、正式に発足いたしました。
大分、宮崎の過労死遺族を中心に、両県の弁護士がそれぞれ事務局を設け、活動しています。
九州初の家族会ができたことで、大分、宮崎のメディアはもとより、九州全県に報道され、その反響の大きさに驚いているところです。
11月22日に行われた大分シンポジウムは、労働局、労基署が率先して、企業の関係者に参加要請してくれたとのことで、124名の参加がありました。さらに「労働局の取り組み」と題して、過労死防止のために行政側から行っていることを労働局の監督官自ら講演していただき、大分の労働行政が、積極的なのが印象的でした。
宮崎シンポジウムは、3回目を迎える取り組みとして、それまで平日の夕方から行っていたシンポジウムを、幅広く参加者を募るために11月26日の土曜日の午後に設定しましたが、前回と同様約100名の参加者となり、企業関係者の参加が少なかったことを次回の課題にしたいと思います。
内容的には、宮崎で起った2件の過労自死事件について、弁護士が遺族にインタビューするという形で、被災者がどれだけ過酷な労働を強いられ、自死に至ったかを明らかにし、残された遺族が、悲しみをこらえながらお話して下さったことで、その悲嘆を参加者全員が共有することができ、過労死を無くすにはどうすればいいのか、パネリストと共に考えることができ、今までとは違った形のシンポジウムとなりました。
(桐木弘子)

≪主な活動報告≫

10月11日 第69号全国家族の会ニュース発行:全国家族の会事務局
10月19日 厚生労働省対策推進室会議:東京・厚生労働省会議室
10月25日 過労死等防止対策推進協議会会議:東京・厚生労働省会議室
11月 1日~30日 第3回過労死等防止月間開催
11月 5日 日弁連・第27回「司法シンポジウム」:弁護士会館・講堂「クレオ」
11月 9日 全国家族の会統一行動・(要請行動・啓発シンポジウム):東京・霞が関
11月10日 全国家族の会総会:東京・飯田橋ユースホステル会議室
11月22日 「東九州家族の会」結成:ホルトホール大分(大分県+宮崎県)
12月 9日 いのちと健康を守る全国センター総会:東京・平和と労働センター
12月25日~27日 遺児交流会:山梨県北杜市清里

≪主な活動予定≫

1月21日 全国家族の会世話人会:中央大学駿河台記念館
1月21日 過労死防止全国センター幹事会:中央大学駿河台記念館
1月21日 過労死防止学会幹事会:中央大学駿河台記念館
2月 1日 いのちと健康を守る全国センター理事会:東京・平和と労働センター

編集後記

今回は、シンポジウム特集も兼ねまして、4ページ増えて12ページの特大号となりました。
盛大に行われた遺児交流会の報告あり、各地での活発なシンポジウムの報告ありと、大変盛り沢山の内容で、編集にも力が入りました。
今年も沢山の活動があると思いますが、皆様健康に十分お気を付けて、本年もよい年になります様お祈り申し上げます。
(ニュース編集担当 工藤祥子)

次回予定

全国ニュース発行   4月(予定)
全国世話人会 開催
2017年9月2日(予定)